衣服に秘められたスピリチュアルな役割

衣服に使用される麻といえば、スピリチュアルな世界ではエコな植物として近年見直され、麻で作った衣類も増えてきていますが、エコなだけでなく、「浄化の力を持った神聖な植物」でもあります。

【なぜ私たちは衣服を身につけるのか?】

私たち人間は衣服を着用しています。当然のことであり、裸で外出しようものならば、日本ならば「わいせつ物陳列罪ですぐに逮捕されてしまう」でしょう。つまり、生活していく上で必須のものとなっていますが、人間以外の生物で、自らの皮膚を別の素材で覆うという行為をする存在はほとんど居ません。なぜ、私たち人間は衣服を身につけるようになったのでしょうか?

 

【衣服と麻の関係】

衣服の歴史はとても古く、日本の場合、「縄文時代にすでに衣服を身につけていた」ことがわかっています。当然ながら、現代のように洗練されたものではないのですが、織物を行い、ズボンのようなものを着用していたようです。狩猟が中心だったことや、衣服の技術が寒暖差の激しい地方から伝わったことから、動きやすいものとなっていました。

一方、農作と共に渡来してきた人たちが中心となった「弥生時代」には「貫頭衣」と呼ばれる、大きな布の中央に穴をあけて、そこに頭を突っ込むだけというシンプルな衣服を着ていたようです。時代が新しくなったにもかかわらず、技術的には退化しているように思えるかもしれませんが、これは、衣服の技術が伝わった地域が違うことや、「生活習慣や文化が違う」ことが関係しています。

ただし、素材として比較的加工しやすい「麻」を多く使っていたというのは、両者で共通しています。麻といえば、スピリチュアルな世界ではエコな植物として近年見直され、麻で作った衣類も増えてきていますが、エコなだけでなく、「浄化の力を持った神聖な植物」でもあります。

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【麻を身に纏い魔を退ける】

神道では、「神様は麻をつたって天から地上に降りてきた」という言い伝えも残っていますし、「邪気を祓い、ネガティブな存在を寄せ付けない力がある」とされ、お祓いなどで盛んに使われていました。麻は成長が早く、加工が容易だったことから、衣服に使われたというのが定説ですが、自らの内側にネガティブなものを呼び込まないための、「結界として衣服に使われた」とも考えられます。

そもそも、衣服というのは、「魔を退けるもの」だったといわれています。古い時代には、「魔」というのは、「人に侵入して不幸や病気をもたらすもの」だと考えられていましたので、侵入されないために、「神聖な模様を刺青として肌に記したり」、パワーストーンなどで作ったアクセサリーを身につけていたわけです。衣服も同じような役割を果たしており、麻のように素材自体が魔除けの力を持ったものを使ったり、魔除けの力を持つ色を染めた布で作ったりしていたのです。また、「衣服の装飾にも意味がありました」。

日本では、着物の背中にある縫い目が魔除けの力を持つとされており、目の届かない部分である背中から、魔物が侵入することを防ぐとされていました。子供用の着物にには、この縫い目が存在しないことから、「背守り」と呼ばれる神聖な図形を刺繍する風習も存在していたのです。

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【魔を避けたい気持ちは世界共通】

このような「目の届かない場所から、魔が侵入する」という発想は、洋の東西を問わずに存在していたようで、日本と同じように刺繍をしたり、輝きをもったビーズをつけるなどして防御したりしていました。「本当にそんなことしていたの?」と現在の、ファッション性や機能性を重視した衣服しか知らない私たちは思ってしまいますが、世界各国の民族衣装を見ていくと、そのような思想がはっきりと残っていることがわかります。

2月17日まで新宿にある「文化学園服飾博物館」で開催されている「魔除け 〜身にまとう祈るこころ〜」という展示は、まさにこのような衣服が持つ、「魔除けとしての役割」に注目したものとなっており、多くの民族衣装を展示するだけでなく、それらに施された模様や装飾がどのような意味をもっているかも紹介していますので、興味を持たれた方は、足を運んでみることをオススメします。

 

Why do people wear clothes?
Relationship between the clothes and the talisman.