ユネスコ無形文化遺産に提案された日本の来訪神とは?

すでに登録されている「トシドン」を含めて、「男鹿のなまはげ」「能登のアマメハギ」「吉浜のスネカ」「遊佐のアマハゲ」「米川の水かぶり」「見島のカセドリ」「宮古島のパーントゥ」の8件をまとめて「来訪神 仮面・仮装の神々」というくくりで提案する形になったのです。

【年に一度訪れる神様】

日本には多くの神様が存在していますが、神社などに祀られている神様とはちょっと違った性質を持つのが「来訪神」。この神様は文字通り、1ヶ所に定住しておらず、「ある一定の時期に現れて、豊穣などをもたらしてくれる存在」なのです。

 

【ユネスコ無形文化遺産へ来訪神を提案】

今回、そんな来訪神が「ユネスコ無形文化遺産に提案される」ことがニュースとなりました。神様を文化遺産というのは、ちょっと不思議な気がしますが、厳密にいうと「来訪神に関係した祭礼行事」が提案されているのです。無形文化遺産というのは、世界遺産のように建物や風景などではなく、伝統的な工芸技術や宗教的儀式、祭礼などが対象となっています。

ちなみに、すでに来訪神である「トシドン」が2009年に登録済みとなっています。こちらは、鹿児島県甑島に伝わる祭礼行事であり、大晦日に「角と大きな鼻、牙と言った恐ろしい鬼」のような顔をした「トシドン」という神様が子供の家を訪れます。普段は天界で子供の様子をみている存在であり、大晦日だけは下界に降りて、いい子には歳をひとつ増やし「幸運をもたらす歳餅」を与え、「悪い子にはお仕置きをする」という神様です。怖い姿ではありますが、大晦日に訪れるとされている「年神」の一形態といえるでしょう。

 

【なまはげも来訪神】

鬼のような怖い顔をしていて、大晦日に子供を脅しに来る存在といえば、全国的に知名度があるのが「なまはげ」。こちらは、秋田県の男鹿半島を中心に行われる祭礼行事で、「怠け者はいねが。泣く子はいねが」といいながら、包丁を持った鬼のような存在がくるというもの。最近は自動車のCMにも起用されるなど、かなりメジャーな行事です。にもかかわらず、「トシドン」との違いが明確ではないということで、「なまはげ」はユネスコ無形文化遺産への登録が却下されてしまいました。

そこで今回、すでに登録されている「トシドン」を含めて、「男鹿のなまはげ」「能登のアマメハギ」「吉浜のスネカ」「遊佐のアマハゲ」「米川の水かぶり」「見島のカセドリ」「宮古島のパーントゥ」の8件をまとめて「来訪神 仮面・仮装の神々」というくくりで提案する形になったのです。

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【衰退するなまはげと、観光客であふれるパーントゥ】

全国的な知名度をもつわりに、「なまはげは存続の危機」がここ数年でささやかれています。なまはげ役をする若者がおらず、地区によっては70代の老人しかなまはげを出来ないことから、交付金や補助金までだして存続を図ろうとしていますが、それでも若者の確保は難しいのが現状です。

少子高齢化による地方の過疎化や、宗教的儀式への若者が参加しにくい状況ということもあり、来訪神という文化を残すためにユネスコ無形文化遺産への登録を目指すというのは、よくわかりますが、権威づけだけでなく、その「意義とスピリチュアルな意味合いをより周知していく」ことも忘れずに行って欲しいものです。

今回の8件に入っている、「パーントゥ」ですが、衰退していくなまはげとは異なり、近年も集落をあげて行われるだけでなく、観光客も多く訪れるものです。こちらは鬼をイメージさせる来訪神ではなく、体中に泥を塗りたくり、葉っぱをまといエキゾチックな南国風の仮面をつけた姿で、人や子供を追いかけまして泥を塗りたくるというもの。その珍しいお祭りを、一目見ようという観光客が押し寄せて、祭礼が困難になったために、近年では開催日を直前に告知するようになったほどの人気があります。

どちらも決して都会とはいえない地方で行われている儀式にもかかわらず、このような違いが出てくるというのは、沖縄というスピリチュアルなものが日常的に息づいている土地のなせる技なのかもしれません。

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【目には見えない存在への畏敬を伝えていく】

今回のユネスコ無形文化遺産への登録がうまくいくかどうかはわかりませんが、子供達に普段は「目には見えない、神や精霊の存在を体感して貰う」という機会が、今後とも日本から失われないように、その文化を伝えていきたいものです。

It aims to register with the UNESCO Intangible Cultural Heritage “visit God”.
Presence invisible to learn from visiting God.

 

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