くしゃみや咳をした時、大笑いをした時にもれてしまう。尿意を感じてすぐトイレに向かっても、我慢できずにもれてしまう。
このように自分の意志とは関係なく起こる尿もれは、成人女性の約3割が経験者であると言われています。尿もれの原因には脊髄損傷等の外的要因もありますが、今回はおなかに力を入れたときに起きる腹圧性尿失禁や過活動膀胱についてお話します。

■尿もれは骨盤の状態と関係がある

骨盤の底には骨盤底筋という筋肉があり、子宮や膀胱など骨盤の中の臓器が下がらないように支えています。尿もれの患者さんの多くは、骨盤がお辞儀をする時のように前に傾いていて、本来骨盤底筋で支えられるべき膀胱が恥骨の方に押しつけられていることが多いのです。そうすると膀胱が圧迫されるため、頻尿の原因にもなります。患者さんを触診してみると、多くの方の骨盤底筋がかなり硬くなっています。緩んでしまって内蔵を支えきれないというよりも、硬くなってしまったためにうまく働いていないことの方が多いと思います。

■骨盤前傾は尿がもれやすい

トイレで用を足す時の姿勢を考えてみてください。椅子の背にもたれるような姿勢ではなく、少し下腹部を突き出すような感じで骨盤を前傾させているはずです。試しに、わざとお腹を引っ込めて腰を丸めるようにしてみてください。かなり排尿しにくいか、できないはずです。尿がある程度の量膀胱に貯まるまで、膀胱括約筋が収縮することによって尿道を閉め、尿がもれないようにしています。膀胱括約筋は、コックのような役割をするもので、排尿の際は括約筋を緩めます。要するにそのコックの角度が真下に近くなると、より括約筋が開きやすい=出やすいということになるので、排尿の時は骨盤を前傾させるわけです。つまり、骨盤の前傾は、それだけで尿が出やすい姿勢なのです。

■骨盤前傾は骨盤底筋の働きを妨げる

骨盤が前傾してしまうと、尿道がしっかり閉じなくなります。その状態でくしゃみや咳などで腹圧が高まると、尿がもれてしまう可能性が大きくなります。そうならないように骨盤底筋で抑えるわけですが、膀胱が肝心の骨盤底筋で支えられていないので、骨盤底筋がうまく働かずもれてしまうのです。骨盤底筋が硬くなる理由はいくつか考えられますが、一番の原因は疲れでしょう。昼間の活動により骨盤底筋は少なからず使われていて、夜には疲労が溜まっています。昼間の疲れは夜の睡眠で回復させなければならないのですが、骨盤が前傾していると寝た時に骨盤周辺の力がうまく抜けません。力が抜けていないという事は、血の巡りやリンパの流れなども悪くなります。睡眠時間は十分とったはずなのに、朝起きても疲れが残っている……そういう状態が長く続けば、筋肉は本来の柔軟性を失い次第に硬くなってきます。筋肉というのは伸び縮みすることによって機能を発揮します。例えば、腕を曲げたり伸ばしたりできるのは、腕の筋肉が伸びたり縮んだりするからです。それは骨盤底筋も同じです。硬くなっているということは、伸縮がうまくできていないことになります。骨盤底筋の役割の一つである、尿漏れを防ぐという役割も同じことが言えます。

■解決策

硬めの布団や床などにあおむけに寝てみて、腰と床の間に隙間が出来るかどうか確かめてみてください。隙間が出来れば、骨盤が前傾しているということになります。骨盤が前傾する原因はいくつかありますが、一番の原因はイスに座っている時に起こると思います。始めは普通にまっすぐ座っていられても、長い時間同じ姿勢で座っていると疲れてきます。そうなると、姿勢を崩して座り続ける場合が多いです。大体脚を前に投げ出して浅く座るか、深く座ってお腹を突き出すような感じになります。その時、脚を組んだりする場合もあります。そのような悪い姿勢で座り続けていると、イスから立ち上がる時に座る前よりも腰が反ってしまっていると思います。そうです。悪い座り方が骨盤の前傾を作り出す大きな原因になっているのです。ですからそれを防ぐためには、長い時間座り続けて疲れて姿勢が崩れはじめてしまったら、そのまま座り続けるのではなく、一度立ち上がり、少し歩いてみたり、その場で脚の屈伸をしてみるなりします。それからまた座りなおすと、わりと楽になります。簡単ですね。まず日常生活で誰でも簡単に出来る事からやってみて、体の負担を減らしてみてください。それほどひどくない場合は、この程度で解消するはずです。

文 トーエ治療院 院長 東江英行 http://www.cityfujisawa.ne.jp/~toue/

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