赤ちゃんを守る「妹の力」。宝物である赤ちゃんが健やかに育つために考えられた様々な風習とは?

出生率は下がっているものの、前述したように赤ちゃんの生存率は飛躍的にあがっていますので、妹の力に頼る必要はすでにないのかもしれませんが、1000年以上昔から続いてきた赤ちゃんを大切に守ろうとする想いは、なんらかの形で残したいものです。

【赤ちゃんは人類の宝】

赤ちゃんは「人類の宝」。これは遙か古代から人類にとって基本となる原則ですが、「超少子高齢化」という問題を抱えている日本にとっては、再度強く認識する必要があるでしょう。

私たち人間は、生まれ落ちてから「自分一人で生活できるまでに膨大な時間」がかかります。二足歩行をするだけでも1年以上かかるわけですが、生まれてすぐに立って歩き始めることもある動物に比べると、「格段に成長が遅い」わけです。また、生まれるまでにも10ヶ月以上かかり、1回の出産で生まれる子供は1人というのが最も多いケースです。

 

【7歳までは神のうち】

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このようにか弱い上に、時間も手間もかかる赤ちゃんを守るために、古来から様々な風習が存在していました。日本には「7歳までは神のうち」という言葉があります。これは、「7歳になるまでの子供は、まだ神様のものである」という意味合いです。スピリチュアルな観点からすると、「直感力に優れている、自然や宇宙と繋がっている」という見方も出来ますが、より現実的な観点からすると、「7歳まではいつ死んでもおかしくないので、いつでも神へと返す覚悟をしておく」という意味がありました。

現在でも行われている「七五三」で、7歳だけが唯一男女ともに祝うのは、7歳まで育ったならば、それからは病気などで死ぬ確率が下がるために、ようやく一安心して「家族に迎えられる」ということなのです。

現在では医療技術が格段に進んだことで、「乳幼児の死亡率は激減」していますが、栄養に乏しく、さらに薬なども発達していなかった時代は、なんとかして子供の命を守ろうとしていました。

 

【失われつつある風習 あやつこ】

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七五三と同じように現代まで残っている風習としては、「お宮参り」があります。これは地方によって若干の差はありますが、基本的には「生後1ヶ月たったときに、地元の神社を訪れる」というものです。昔は自分が氏子となっている神社に行くものだったのですが、近年では氏子という風習自体がなくなってきているので、好みの神社を訪れる人も増えているようです。

お宮参り自体は現在でも続いていますが、このとき行われていた「あやつこ」という風習は、あまり行われなくなっています。これは、赤ちゃんのおでこに「犬」「大」「×」などといった「文字を書く」というもの。非常に古くから行われていたもので、基本的には「魔除けの意味」をもっています。

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このとき、台所の炭を使って書く場合は、炭自体に家を守護する「荒神」の力が宿っているので、それによって魔を避けるというものや、朱で書く場合は「赤」に魔除けの力があるともされました。また文字に意味をもたせ「犬」とすることで、この子は人間ではないですよ、大切ではないですよとしたりしました。「×」も同じようにいらないものに見せかけたわけです。

 

【妹の力で赤ちゃんを守る】

このような見立てを使った防御というのは、赤ちゃんに対して、色々と行われました。古い時代では、成人すると名前が変わるということが行われていましたが、このとき幼名に捨て子を意味する「捨」や「拾」、または汚い文字などを入れて、あえて「いらない存在」とすることで、魔から目をそらしたりもしました。また、幼年期は女性の方が生命力が強いことから女装をさせるという風習もあります。

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この女装させるというのは、単に女性の方が生命力が高かったというだけでなく、「妹の力(いものちから)」と呼ばれる、「女性が持っていた霊力」を借りて、なんとしてでも赤ちゃんを守ろうとした可能性もあります。この概念は『古事記』などでよく見られますが、男尊女卑の思想が入ってくるにしたがってあまり重要視されなくなってきました。とはいっても、男尊女卑思想が今よりも強かった戦時中にも、女性から「髪などを貰ってお守りにしたり、縫い物をお守りにした」というケースがありますので、日本の文化には女性が持つ霊力への信頼が、脈々と流れているということなのでしょう。

出生率は下がっているものの、前述したように赤ちゃんの生存率は飛躍的にあがっていますので、妹の力に頼る必要はすでにないのかもしれませんが、1000年以上昔から続いてきた赤ちゃんを大切に守ろうとする想いは、なんらかの形で残したいものです。

Mankind treasure is baby.
The power of women to protect the baby.

 

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