日本伝統色に秘められた神秘

伝統色は「植物や花の色」をモチーフにすることが多かったのですが、その中で、幻といわれ、「天皇しか身に纏うことを許されなかった」という色が存在しています。つまり、日本でただ一人しか使うことができない、「絶対禁色」だったのです。

【復活しつつある日本伝統色】

「赤、青、緑」など色には名前がついています。しかしながら、古来の日本人は現代よりもずっと「多くの色を様々な言葉で表現」していました。それらの色合いのことを「日本伝統色」「和色」などと呼んでいます。これらは、ほとんど失われていましたが、多くの色が溢れる時代にありながら、色彩を表現する言葉が少なくなっているために、「1978年」に「DICグラフィックス株式会社」が、復活させたものが元になっています。

 

【趣のある名称】

伝統色は、それぞれ趣のある名前がついています。たとえば「秘色(ひそく)」という色があります。名前だけ聞いて、どのような色が思い浮かぶでしょうか? こちらは現代の色でいうと「灰色がかった青」「薄い青緑」といったような感じになります。なぜ、このような名称になったかというと、焼き物の「青磁がもつ神秘的な美しさ」がベースになっているのです。

ちょっと変わったものとしては、「人の名前がつけられた色」も存在しています。「二人静(ふたりしずか)」という色は、「小豆色と紫の中間」のような色をしていますが、こちらは室町幕府の将軍であった「足利義政」が『二人静』という能楽の演目を舞ったときに着ていた「衣装の色」だったとされています。二人静は、源義経の愛妾である「静御前」をモチーフにした演目であることから、美しいだけでなく、落ち着いた紫が静御前にふさわしいという意味合いもあったようです。

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【日本でただ一人しか使うことの出来なかった絶対禁色】

伝統色は「植物や花の色」をモチーフにすることが多かったのですが、その中で、幻といわれ、「天皇しか身に纏うことを許されなかった」という色が存在しています。つまり、日本でただ一人しか使うことができない、「絶対禁色」だったのです。

その色の名前は「黄櫨染(こうろぜん)」。現在の色でいうと、「濃くて暗めのオレンジ色」「赤みを帯びた黄色」などという感じになります。このように説明すると神秘的なイメージはないかもしれませんが、実は天皇だけしか身につけることが出来ないということには、きちんとした理由があるのです。

 

【世界的に珍重されていた貝紫の力】

黄櫨染について詳しく紹介する前に、世界的に高貴な色として用いられてきた「紫」について少し紹介しましょう。スピリチュアルな世界でも、「最も高次のチャクラである第七チャクラに対応する色」として紫が用いられることからも、かなり多くの文化に共通しているものです。その中でも「貝紫」は英語では「ロイヤルパープル」、日本語では「帝王紫」などと呼ばれて珍重されました。文字通り巻き貝から採取されるこの色は「紀元前」から使われており、貝紫で染められたものには「力が宿る」という信仰も存在していたのです。この貝紫が持つ効果については、単なる迷信ではなく、「色彩心理学的」に紫がもたらす「精神やホルモンを安定させる効果」を、もっとも強くもたらす紫色が貝紫で染色したものだということがわかっているのです。

 

【なぜ日本は紫から黄櫨染へと変わったのか?】

色や効果からいっても、高貴な人が身につけるにふさわしい紫ですが、日本だけが途中で色を変えたのは、その「文化的な特性」が関係しています。一般人は目にすることすら出来なかった「黄櫨染」が、その本質を表すのは「太陽の光に照らされたとき」でした。通常は、前述したようなオレンジっぽい色なのですが、太陽光があたると、「真っ赤な色」に変わります。すなわち、この色で染められた着物を纏うというのは、「太陽をその身に宿す」ことだったのです。

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【太陽のエネルギーを身につける】

日本で太陽を象徴する存在といえば「天照大神」、「皇室の祖神」です。日本の国旗を例にあげるまでもなく、太陽というのをとても大切にしていた天皇家にとって、太陽を宿らせてくれる黄櫨染は、紫よりもふさわしい色でした。当時は、その製法も秘密とされていたものですが、1990年代に研究が開始され、現在では太陽光によって神秘的な変化を味わうことのできる黄櫨染を再現したものが完成しています。

自らに太陽のエネルギーを宿すことのできる高貴な色である黄櫨染。「一度は身につけてみたい」と思いませんか?

Japan traditional color of the secret.
Why Japanese threw purple?
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