灯籠~神聖な炎を守り導く灯籠

お寺や神社の石灯籠の多くは、基本的にこういった「献灯によって成り立つもの」であり、神仏にたいして炎を捧げるだけでなく、それを守るための灯籠もセットで捧げていたということになります。

【あの世へと導く火】

お盆で「灯籠流し」などに参加したという方も多いかも知れません。お盆の最終日に紙で出来た「灯籠に火を灯したものを、川や海に流す」というこの行事は、一時的に現世へと戻ってきていたご先祖様が、無事にあの世へと戻ることが出来るようにという想いが込められています。

仏教では儀式の中で「」というものを非常に大切にしてきました。今でも寺院を訪ねると無数のロウソクが灯されているという光景を見ることができますし、「ロウソクを献灯したことがある」という方も多いかも知れません。

また、密教などでは「護摩」といって、強い炎を使う儀式も存在しています。

 

【神聖な炎を守るもの】

このようなことから、炎を守るための作られたのが「灯籠」であり、日本に伝来したのも仏教とほぼ同時だといわれています。

名前の通り、明かりを籠で囲むことで、風などから守るためのものですが、一般的にお寺にあるものは「石製のもの」がほとんどです。時代がたつにつれて、屋内で使われるものは「行灯」、折りたたみ式のものは「提灯」と使用法によって名前が変わっていき、屋外にあるものだけが灯籠と呼ばれているのが現状です。

奈良県の「當麻寺」にあるものが日本最古の灯籠とされています。これは今から「1300年以上前に作られたもの」であるにも関わらず、しっかりと現存しています。

その理由は、お寺にある灯籠が「石」で作られているからです。いわゆる「石灯籠」ですが、雨風に強く、長年の風化に耐えることのできる石は、「神聖な炎を守るためにぴったり」だったのでしょう。

 

【神社にも取り入れられた灯籠】

灯籠は、当初は「お寺だけで使われていたものが、平安時代頃からは神社にも取り入れられる」ようになりました。今では、むしろ神社の方が灯籠をよく見かける機会があるぐらいですが、本来は仏教のものだったわけです。

灯籠で有名な神社といえば、奈良県にある「春日大社」

「2000基以上の石灯籠」があり、お盆には「中元万灯籠」といって、これらの石灯籠のすべてと、「1000基の釣灯籠」のすべてに火が入れられて、幻想的な雰囲気が境内を包み込みます。この無数の灯籠は「献灯」といって、多くの人々によって寄進されたものとなっています。

お寺や神社の石灯籠の多くは、基本的にこういった「献灯によって成り立つもの」であり、神仏にたいして炎を捧げるだけでなく、それを守るための灯籠もセットで捧げていたということになります。

 

【灯籠が持つスピリチュアルな要素】

灯籠には、炎を守るという意味合い以外にも「スピリチュアルな部分が隠されています」。

それは、灯籠に施された彫刻に秘められていました。石灯籠の代表的な形に「春日型」があります。これは春日大社にあるものと同タイプで、春日大社の「神使である鹿や、霊山である春日山の姿」が刻まれています。

このような彫刻は「職人がその信仰にあわせて決めることができる」とされており、古い石灯籠などをみてみると、その神社やお寺に関係のあるような独自の絵柄が刻まれていたりするのです。

単なる風よけとしてではなく、仏様や神様に神聖な「炎」を届け、そしてそれを捧げた人の想い、さらには作った職人の信仰までもが込められた灯籠。

お寺や神社を訪れた時には、どんな模様が刻まれているのか、チェックしてみることをオススメします。

 

Tools to protect the sacred flame.
Various thoughts have been put in the “lanterns”.