息に秘められた数々の情報が健康を示す

【息に秘められた人間の情報】

古来から、人間の息にはその人自身がもつ「なんらかの情報が含まれている」と考えられていました。その風習は現在でも残っており、神社などで穢れを祓うときに、人の形に切った紙を使うことがあります。この紙を自分の身代わりとするために、名前を書くだけでなく「息を吹きかける必要がある」のです。息によって、「自分の内側にあった霊的な部分の一部が紙にうつる」というわけです。

【神の息は穢れを祓う】

また、「神様が吹く息は穢れを祓う」とも考えられてきました。神道でよく使われる「大祓詞」は罪や穢れを祓うために唱えられるものですが、こちらには「祓戸の神」という存在が登場します。四柱のこの神々によって、罪や穢れが祓われていく様子が描写されるのですが、その中に「気吹戸主（いぶきどぬし）」という神様がいます。この神様は、文字通り「気」を吐く、すなわち「息」を吐くことで、穢れを吹き払ってしまうのです。

【肉体や気を操作するための呼吸法】

この気吹、「いぶき」という言葉は、「呼吸法」でも使われます。この場合は「息吹」と表記されることが多く、空手では気力を高め、集中力を増すだけでなく、呼吸によって身体の防御力を高めるなどを目的として使われたりもしますし、呼吸と動きをあわせることで、「体内の穢れを放出し、生命力を高める行法」として使われることもあります。

呼吸によって生命力を増したり、気を取り入れたり、精神を集中するというのは、古今東西様々な「神秘的な技法の基本」ともいえるものです。ヨガや仙道、気功法、魔術、瞑想などなど、呼吸法をおろそかにしている行法はないといっても過言ではありません。

【口臭で健康状態がわかる】

このように、スピリチュアルな世界で非常に重要視されてきた息ですが、科学的な見地からも、肉体に関する多くの情報が含まれていることがわかっています。「口臭」によって、その人の健康状態がある程度把握できるというのは、比較的有名です。

口臭の原因は虫歯や歯周病といったものが一般的ですが、他にも「胃や肝臓、腎臓といった臓器に不具合がでた場合」にも、独特の口臭が発生します。また、糖尿病などの生活習慣病の場合にも口臭が出てくることから、しっかりと虫歯を治療したにもかかわらず、口臭があるという場合には、なんらかの「身体の不具合を疑ってみる必要」があるのです。

【手軽に息から健康を調べる時代へ】

臭いが発生するということは、何らかのガスや微量な物質が発生していることに他なりません。そこで、その物質を分析することが可能になれば、「吐いた息を調べるだけで病気を発見することが可能」になります。海外ではイスラエル工科大学で、スマートフォンと組み合わせることで、様々な病気を検知することのできるアイテムが開発中です。

「The SNIFFPHONE」と呼ばれるこのアイテムは、呼気に含まれている分子を分析し、その結果をスマートフォンに送ることで、様々な「病気を手軽に安価に診断することができる」とされ、去年発表されてすぐに、「数百億円」という投資を獲得し、現在、製品化に向けての作業が進んでいるものです。こちらは、前述したような疾患だけでなく、「癌」の早期発見にも利用できるのではないかと期待されています。

【癌と臭いの関係】

フィンランドのタンペレ大学では、臭いによる癌の発見について研究が進んでいます。癌患者に特徴的な臭いがあるというのは、以前からいわれており、犬が持つ鋭い嗅覚を利用して癌を探知するという、「癌探知犬」の研究も進んでいます。日本医科大学千葉北総病院では、訓練を積んだ犬によって、肺がん、子宮癌、乳がん、大腸癌などは探知できるだけでなく、見分けることもできるという成果がでているのです。