前回に続き、鬼神神社のご紹介です。
もう一つの五十猛ファンにはたまらないスポット、それは五十猛神の御陵地が鬼神神社にはあるのです!
五十猛神の御陵がある船燈山
本殿向かって左手より山道を300メートル進んだ先に五十猛神の御陵地はありますが、たかが300メートル、されど300メートル、山道はなかなか過酷です。
300メートルといえば、車社会の島根県では車で移動する距離なのに、歩いてるわ、私!
ええ、島根県民は自転車感覚で車を乗るのですわ。
って、どうでもいい島根あるある情報ですね。失礼しました。
鳥居が見えてきます。
御陵へと誘う道標といえば聞こえは良いのですが、この時の私は長靴を履いてこなかった事を非常に後悔していました。
だって蛇出そうじゃないですか! ただのシマヘビや青大将ならいいですが、マムシだったら噛まれたら死んでしまいます……。
ビクビクオドオドしながら、草むらを長靴をはかなかった時の蛇要注意な歩き方で進みます。
前をろくに見なかったので、思いっきり蜘蛛の巣に顔ツッコみましたけどね……。
鳥居周辺にはトラップがいっぱい仕掛けてあるあたり、きっと財宝が眠っているにちがいない!
……ただ人が滅多に通らない場所なだけでトラップなんぞないのですが、そうやって気分を盛り上げて進んだのですよ。ただひたすら、Trinity web記事ネタ探しの為に!!
「山道の横に生えているのは杉かしら?
杉といえば素戔嗚神が抜いた髭が元だよなぁ。眉毛は樟、胸毛は檜、尻毛は槇……。
杉と樟は船に適していて、檜は宮を造るのに、槇は現世の国民の寝棺に……。
人は皆、素戔嗚神の体毛にお世話になって生活を営み、そして尻毛に抱かれてあの世に旅立つんだわぁ……。」
などと、木々を見ながら想像していたのをここで白状しましょう。
ええ、以前素戔嗚神の体毛について触れましたが、ググってない方の為に詳しく書いておきました。
「木の国って言うけど、あれって素戔嗚様の体毛の国って意味やよなぁ。和歌山は素戔嗚様の体毛の国やねん。」
と、大阪の友人が言っていた事も添えて。
お葬式で槇の寝棺を見ても、けして、けっして、素戔嗚神の尻毛を連想してはなりません! 連想すれば涙は直ぐに大爆笑へと変わって、参列者から白い目で見られること間違いなしなのですから……。
300メートル先の神の国
色々な想像は妄想へと変貌し、その妄想が暴走しないように気をつけながら、五十猛御陵地へと到着です。妄想は孤独と心が折れそうな時の良き隣人なのですわ。
総面積2267平方メートル、築土高さ10メートル、御陵型長円墳の御陵です。
あんなに様々なお笑い系妄想をして上がってきたのに、ここに辿り着き、石碑を一周回ると、ポロリと涙が零れました。
『満足だ。』
そう優しげに深い音となって頭に響いた声は五十猛神だったのか、はたまた別の誰かだったのか……。
きっと五十猛神は晩年もいい意味での放任主義で、亡くなってこの地に埋葬されてからもやっぱりいい意味での放任主義なのでしょう。
そして、この地より、奥出雲を、出雲を視護ってくださっているのでしょう。
下り、改めて先程の鳥居への戻ると、そこは明確な人の世界と神の世界を隔てる結界に見えました。人の目には見えないけれど、鳥居を中心に透明な壁があり、空間が時折揺らぎます。
同じに見えて違う空間、日常の当たり前の風景の中に異世界が在る。それを隔てるのは鳥居。
たった300メートル先には神の国がある、そう感じ、深々と頭を垂れてこの地を後にしたのでした。
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