出雲大社向かって右手側、熊野(よしの)川を渡った先に鎮座する北島国造館を皆様はご存知でしょうか?
「出雲教」の文字を見て、「なんか怪しい宗教団体じゃないの~?」と入るのをためらう方もいらっしゃるでしょうが、それはとんでもない間違い! 地元出雲では『何かあったら北島さん』という言葉があるように、昔から出雲大社と共に親しまれる神社の一つなのです。
ちなみに、日本一の大注連縄のある出雲大社神楽殿は「出雲大社教」。出雲大社は「出雲教」と「出雲大社教」に挟まれた聖地。故に出雲大社と神楽殿は御朱印が違うんですよ。
国造しか通ってはならなかった門
出雲大社側から北島国造館へと向かい、右手側には北島家四脚門という立派な門があります。この門は、嘗て出雲大社国造を北島家と千家家が毎年交代で務めていた頃、国造しか通ってはならぬと言われた由緒ある門なのです。
国造といえば戦前までは生き神様。そんな生き神様しか通れなかった門を今は自由に誰でも通る事が出来るというのは、素晴らしいとは思いませんか?
私はここを通る度に「おお~!」と胸が熱くなります。
少名毘古那神を祀る天神社と亀の尾滝
北島さん(地元の方は皆愛情をこめてそう呼ぶ)の名所の一つは、亀山から流れ落ちる亀の尾滝と池に浮かぶ小島に鎮座する天神社です。
この風景をゆっくりと眺められるように、北島さんにはベンチが所々に置いてあります。滝と天神社を眺めながらのんびり出来るなんてこれまた贅沢!神社好きにはありがたい心遣いなのではないでしょうか。こうしたちょっとしたお持て成しに、出雲人の心の広さと温かさを感じるのです。
重陽の節句祭
さて、9月3日に北島さんで行われた重陽の節句祭へとご縁がありまして、参加をさせていただきました。
午前10時より行われた祭りは、拝殿にて参加者の皆様のお名前を読み上げられ、健康と美容祈願をしていただき、独特の音程の唱え言葉を全員で奏上し、祀られている七柱の神々より御加護を受けました。
特に御加護をいただいたのは、言わずと知れた大国主大神、そして、美と健康を司る神皇産霊神です。
御加護を授かった皆様の首の付け根あたりに、金色に輝く菊の紋がすーっと入っていく様は、ここより魔も病魔も入るのを阻止し、人を護るとの神様の意思と深い愛情をを強く感じ感動を覚えました。
小さな黄色い菊を入れた白い盃で御神酒をいただき、重陽の節句祭のお守りを授かりました。
中には黄色い菊の花弁と出雲大神のお守りが入っています。これで益々美人になれるかも!?
などと、内心ニヤニヤとしていたのが大国主大神と神皇産霊神にバレたのか、
拝殿を出て見上げた空にはニッコリと笑うかの様に日暈が出ていました。
神人一体と成る神戸川太鼓
拝殿から亀山会館へと移動し、神戸川太鼓の演奏を観る機会にも恵まれました。
その力強い太鼓の音に、身体だけではなく魂も揺さぶられ、終始涙が止まりません。リアルに魂を揺さぶられ、その一音一音毎に全ての細胞を北島さんの御神氣と入れ替えていただいた様に思います。
「なんて小さなことに拘り、悩んでいたのだろう。私は私でしかないし、この素晴らしい今ここでしか体験できない事を神様は体験させてくださっているのに、何をそんなに憂う必要だあるのだろうか……。」
と、思い、ただ溢れる涙は感涙へと変わっていきました。
眠ったままの魂の目的を呼び起こさせ、そして全身を震わせ余計な思考を振る落とす、そんな太鼓のエネルギーだったのです。
イベントで観ただけならそこまで感動は覚えなかったことでしょう。
私が子供時分から慣れ親しんだ石見神楽もそうですが、神社の境内で行われるというのは、もうそれだけで神様が許し、神様の降りる依代、『座』と成れるという事。人の熱く滾る想いが、神様の風を呼び起こし、神と人とが一体と成り、素晴らしい音や舞となってさらに観る者を魅了し、その魅了した心は神への糧とな……。
神人一体とはこういう事かと改めて感じた神戸川太鼓の演奏でした。
食から開運☆重陽の節句弁当
感動してもお腹は減る。そして、楽しみの一つ重陽の節句弁当も帰りにはいただきましたよ。
添えられた美しい菊の花の絵が印刷された紙には、
『栗ご飯:菊の節句では収穫祭も兼ねて古来より栗ご飯を食べる習わしがありました。栗にはビタミンCやビタミンB1など美容や健康にいい栄養素がたくさん詰まってます!
菊の花のお浸し:食用菊には血行をよくして肩こりや冷え性を改善する効果があるそうです。
菊花蕪:おめでたい象徴でもある菊の花の形をした蕪の酢の物。長寿を願う縁起物です。』
と、書かれていました。
これは是非とも9月9日の重陽の節句に作ってまた食べたい!
旬の物には旬の運氣が宿る。
邪氣を祓い長寿をもたらすとされる重陽の節句、是非皆様も北島さんの弁当のメニューを真似て、夜には菊花を浮かべたお酒を呑んで、これからの美と健康を願い祝ってくださいね。
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