生きとし生けるもの同士の愛情物語〜動物も植物も「意識と愛情」を持った私たちと同じ存在

動物の身体を利用したり、植物を抜いたり切ったり、人間は様々に彼らを利用します。モノとして扱うのではなく、意識を持った命として、敬う心を忘れずにいてほしいと心から思います。

しばらくして、キッチンであれこれしていると、窓の外のベランダの手すりに見たことのない鳥がやってきて、私を呼び始めたのです。
ただ、鳴いているのではなく、本当に呼んでいたのです。

というのは、キッチンからベランダが見える窓が幾つか並んでいるのですが、私が動くのに合わせて、その鳥は手すりを横に移動しながら私の姿を追っていたのです。
それに、私の視線を捉えようと必死で目を合わせてくるのです。
最初は人懐っこい鳥だなあと思って微笑ましく見ていたのですが、
その鳥に意識を合わせてみたら、私に助けを求めているのが分かりました。

ベランダに行くと、その鳥は私に近づいてきて、さらに私の目を合わせ、必死で何かを訴えています。
何だろうと鳥の声に耳を澄ましてみました。
「助けてください」とその鳥は言っています。

するとどこからか明らかにヒナ鳥と思わせる鳴き声が聞こえてきました。
親鳥に「ヒナはどこにいるの?」と尋ねると、私の家の中だと言うのです。

もちろん、言ったわけではないのですが、その鳥が家の中に目を向けて家の中に入ってこようとしていたからです。

わかった! 探してみる!! と、その鳥に答えてから、家の中で耳をすますと、
まるで赤ちゃんのような小さな鳴き声がします。いったいどこにいるのか? あちこち探し回ると、小さな毛のかたまりのような子供がパティオの上の木の棒にいました。今朝、私がベランダに出た時にちょうど入り込んだようです。

おそらく、この子は今朝初めて空を飛んだに違いません。
その子は2m弱の高さのところで固まって震えていました。

家の中から椅子を運んで、椅子の上に立ち上がり、どこに触ったら良いのかわからないような小さな毛のかたまりを両手でそっと包み込むと、
母鳥が、その私の両手の前までやってきて、空中で飛びながら止まっています。
私がそっと両手を開くと、親鳥と子供の会話がありました。

空中で飛びながら止まっている母鳥は「ああ、良かった〜〜もう大丈夫よ」
子供は「怖かったよ〜〜」と。二羽とも目に涙を光らせていました。
本当にこの小さな毛のかたまりが飛べるのかと思いましたが、
私の手の中で会話をした後、子供はふわっと私の両手の中から浮かび上がり、
母鳥の顔に近づいてピッタリ自分の顔をくっつけてから、
二羽は横に並んで、私の目の前まで上昇し、そのままぴったり寄り添って並んだままゆっくり飛んで行ったのです。

本当に、本当に、可愛い素敵な光景でした。
ありえないような、まるでアニメに出てきそうな光景なのに、これが目の前で本当に起きていることだなんて。信じられないほど美しい光景でした。

どんな小さな命も大切だとしみじみ思う出来事でした。
あの母鳥の必死さ、本気で心配し、人間にここまで近づいての命がけの救出劇。

手のひらの中で少しだけ震えていた、あの小さな命のかたまりの感触を今も思い出します。あんなにも小さな命が、一人で飛んで、これから母鳥を離れて一人で生きていくなんて。愛おしくて仕方がありませんでした。
手のひらが今もあの命の感触を覚えています。

翌年春、あの母鳥の姿とそっくりの鳥がベランダにやってきました。
大人になった姿を見せに来てくれたのかなと勝手に思っています。

この季節になると、ベランダが気になってきます。
この時の映像があったなら、全世界を感動の涙で潤わせたと思います。

 

《高見澤 幸子さんの記事一覧はコチラ》
https://www.el-aura.com/writer/takamizawa-sachiko/?c=96423