物を動かす燃える石”硫黄”は、荒ぶる女神か、地獄の悪魔か?

実際に硫黄には「殺菌効果」があります。このために硫黄が含有された「硫黄泉は皮膚病や外傷などに効果的」であり、ニキビの元になる「アクネ菌」を倒すために、現在でも硫黄ベースの薬が使われたりもしているのです。

【医師であり魔術師でもあったパラケルスス】

中世の医師であり、科学者、さらに魔術師でもあった「パラケルスス」という人物がいます。偉大な医学者であり、神秘思想家として知られる彼は、神が自然を産み出したと考え、「第一資料」というものを定義しました。こちらは、世界を生み出した「根源的な物質」であり、万物を産み出すほどの「無限の可能性とエネルギーが秘められている」と考えたのです。その第一資料とは「硫黄」「水銀」「塩」であり、これらが組み合わさることで「地水火風」の四大元素が産まれ、そこから万物が生成されるというのです。

 

【金を産み出すためにも必要だった3つの材料】

このような考え方は、錬金術の思想であり、錬金術では金を作り出すために絶対に必要な材料としてパラケルススの「第一資料」があげられています。水銀は「水」の要素であり、硫黄は「火」の要素ということもあり、それを塩が結びつけて「陰陽が合体する」というような思想は、東洋でも同じようなものが存在しているのです。

 

【燃える石 硫黄】

今回注目するのは、第一資料の中でも「硫黄」。英語では「Sulphur」ですが、こちらはラテン語の「燃える石」が語源となっています。中世に知られていたのはもちろんですが、その存在は「太古」から知られていました。パラケルススが能動的である火の要素と考えたことからもわかるように、「黒色火薬」の重要な原料であり、また現在でも医薬品や農薬などで硫黄は使用されています。

 

【生贄の臭いを嗅ぐ神とは?】

硫黄は鉱物でありながら、火をつけると通常とは違った「青い炎をあげる」ために古代の人にとっては神秘的な存在だったのでしょう。また、燃えたときに独特の臭い、私たち日本人にとっては温泉でお馴染みの臭いがすることから、古代ギリシアでは「生贄の臭いを嗅ぐ神」を語源とした名称がつけられました。このことから、女神の暗黒面、怒り狂う女神である「ブリーモー」と同一視され、「Brimstone」とも呼ばれていました。

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【パワフルな女神の力で全てを浄め祓う】

女神というと優しく癒しを与えてくれるかもしれませんが、インドの女神である「カーリー」や、それを元にした日本の「鬼子母神」など、元々は人を食べる残酷な存在だった女神も存在しています。彼女たちは時として「男性の神すら凌駕する力」を持っていたことから、そのような「荒ぶる女神を象徴した硫黄」も、「悪魔や病魔、罪を祓い浄める力がある」と考えられ、浄化の為に使われていたのです。

ちなみに、実際に硫黄には「殺菌効果」があります。このために硫黄が含有された「硫黄泉は皮膚病や外傷などに効果的」であり、ニキビの元になる「アクネ菌」を倒すために、現在でも硫黄ベースの薬が使われたりもしているのです。

 

【女神から悪魔の象徴へと変えられた硫黄】

このように万物の根源であり、女神の力の現れとして考えられていた硫黄ですが、キリスト教においては、「悪魔の象徴」とされました。キリスト教では地獄には「炎と硫黄が満ちている」とされており、そのために、地獄の存在である悪魔は硫黄と共に現れるというのです。異教を認めないキリスト教においては、硫黄は堕天使である「ルシファーを象徴し、光と対立する、罪と罰の象徴」となってしまいました。

本来は浄化の力で罪すら祓い浄めるものだったのが、いつしかまったく反対になってしまったわけですが、スピリチュアルな観点からすると、キリスト教的な解釈は間違っているといえます。

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【硫黄に秘められたスピリチュアルなパワー】

硫黄というのは「エネルギーを動かす強い力」を持っています。その力は強すぎるために、時としてネガティブな印象すら与えますが、どんな邪悪なものでも退けてくれます。熱に弱いために、パワーストーンとして用いられることはあまりありませんが、その意味合いとしては「悩みの解消」「ストレスや精神的な混乱の沈静」などがあるとされています。あまり持ち歩くようなものではありませんが、鉱石の硫黄からは独特の臭いは発生しませんので、原石を購入して飾っておくと、「力強い女神のエネルギーが得られる」ことでしょう。