ポロ~西洋ではスポーツ、日本では邪気を払う儀式

日本にもポロとほとんど同じ競技が、1000年以上前に存在していました。ポロの起源ははっきりとしていませんが、中央アジア付近で生まれたものが、西へと伝わり「ポロ」となり、東に伝わったものは「打毬」と呼ばれるようになったのです。

【ポロって知っていますか?】

「ポロ」というスポーツがあります。馬に乗って「マレット」と呼ばれるスティックで球を打ち、相手チームの陣地まで球を運べば得点できるというものであり、イギリスで行われるものが有名です。

日本では「ポロシャツ」の語源になったものというぐらいの理解しかないのがほとんどでしょう。

 

【1000年以上前からあったポロ】

しかしながら、日本にもポロとほとんど同じ競技が、1000年以上前に存在していました。ポロの起源ははっきりとしていませんが、中央アジア付近で生まれたものが、西へと伝わり「ポロ」となり、東に伝わったものは「打毬」と呼ばれるようになったのです。この中国に伝わったものが朝鮮半島を経由して日本にも入ってきました。

西洋ではスポーツ化されましたが、日本では「宮中行事」として行われ、5月5日の端午の節句にあわせて、打毬が行われていたのだそうです。その後、江戸時代に入ってから、八代将軍吉宗が「乗馬の訓練に最適」だとして、推奨したことから一時期スポーツ的なものとなりました。しかし、結局のところ、近代まで伝わることはありませんでした。

現代まで残っているのは、江戸時代のものをベースにしており、宮内庁の「主馬班」が伝承しているとのことです。

 

【打毬はスピリチュアル】

宮中行事だったことからもわかるように、打毬には儀式的な意味合い、すなわちスピリチュアルな要素が存在していました。球を打つときにつかわれた、西洋で言うところの「マレット」を、日本では「毬杖(ぎっちょう)」と呼んでいました。こちらは、木製の槌がついた杖状のものだったのですが、こちらには「祝棒」としての機能もあったのです。

祝棒とは、小正月の儀式などで使われるものなのですが、「呪力のこもった木の棒によって、生命力や霊力を活性化させる」という意味合いをもつものでした。これで、女性のお尻を叩くと子宝が授かり、地面を叩くと豊作になるといわれていたのです。

 

【毬杖は魔除けになる】

そんな祝棒である毬杖は、その後集められて燃やされるのですが、この炎によって「悪魔を払い、豊作を呼び込むこと」ができるとされていたのです。

現在でも「左義長」といって同様の儀式が残っていますが、これは本来は魔除けとして使った3本の「毬杖」を燃やした、「三毬杖」から来ているという説もあります。

 

【意外なところにあった東西の共通点】

元は同じものが、西洋と東洋で「スポーツと儀式」に分かれてしまうというのは非常に興味深いのですが、祝棒の材質には、共通点がみられます

祝棒の素材である木として「ニワトコ」が使われることが多いのですが、ケルト人はニワトコを「死と再生」の象徴であるとしていました。つまり、冬に地面をうつことで、霊力を呼び起こすという祝棒の儀式に、まさにうってつけの素材ということになります。

イギリスと日本という、遠く離れた二つの島国ですが、今回のようなエピソードに触れると、「人類共通の叡智」のようなものが、私たちの根底には流れているのではないか。と感じさせてくれますが、皆さんはいかがだったでしょうか?

 

Sport and ritual.
Different from the common point of east and west.