パワースポットを作り出し、不老不死をもたらす辰砂

辰砂を砕いたものは、単なる顔料だけではなく、「不老不死の霊薬」だと考えられていました。

【魔を避ける神聖な色】

今から1万年以上前、縄文時代には「赤は魔を避ける神聖な色」とされていました。この思想はかなり長く続くことになります。戦国時代には、赤い色をまとうことで、自らを護り武運をもたらすという風習がありましたし、神社の鳥居が赤いことにも関連しているといわれています。

 

【有機顔料と無機顔料】

現在使われている赤を産み出す顔料は、「有機顔料」と呼ばれるものが一般的です。これらは、「化学合成によって産み出されたもの」であり、古代から使われていた「無機顔料」が「人体に悪影響を与える可能性が高かった」ために、有害物質を含まず、安全でなおかつ安価なものが開発されたのです。

これらの有機顔料の発達により、私たちはさまざまな色を自由に使うことが可能となりましたが、「無機顔料が持つ有毒性こそが、色が持つ力を定義していた」とも考えられます。前述したように赤は魔除けとされていましたが、これは赤い色を産み出す無機顔料の「毒性が強かったために、虫などが寄りつかず、防腐効果に優れていたから」なのです。つまり、死者に赤い色を纏わせたり、墓所を赤くすることで腐敗が防がれたことから、「死者を穢す存在が近寄らない」と考えられたわけです。

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【不老不死の霊薬とされた顔料】

そんな赤い色を産み出した無機顔料として、赤鉄鉱を砕いて作られる「鉄丹」や辰砂を砕いて作る「朱」などが有名です。特に辰砂を砕いたものは、単なる顔料だけではなく、「不老不死の霊薬」だと考えられていました。

辰砂とは、中国の辰州で多く産出することからその名前がつけられた鉱物。その主要な成分は「硫化水銀」であり、精錬することで「水銀」を産み出すことが可能になります。この水銀は、中国の錬丹術は「丹薬」、西洋の錬金術では「賢者の石」などと呼ばれて、これを服用することで「不老不死をもたらす」とされたのです。