【神とはこの地に存在するすべてもの=森羅万象に魂が宿る】
神の怒りが生んだ大いなる水 イグアスの滝
南米大陸、アルゼンチンとブラジルにまたがる世界最大のイグアスの滝。
高さ約70mから水しぶきをあげて落下する、大小275の滝で形成されている。その昔神がみそめた美しい娘が、婚姻の日にその恋人と小船で逃亡。腹を立てた神が、大きな滝をつくり二人を引き裂いたという先住民の民話が残っている。滝に落ちた娘は岩に、その恋人は滝の周りを生い茂る樹となったという。先住民が「大いなる水」と呼んだように、その流れ落ちる大量の水が生み出す光景はまさに神秘的。季節や天候により姿や色を変え、世界中から訪れる人々を圧倒している。大地にとどろく神の怒りが、生涯手を触れ合うことなく寄り添いあう恋人を思い起こさせ、悲しくも壮大な美しさをもって人々を魅了しているのだ。
ペルー最後の秘境 カラヒアの空中墳墓
古代インカの人々は、命を持って自然や神々と交信をしてきた。そして死してなお、その肉体に魂を宿し続けるミイラ信仰。カラヒアの遺跡は、そんなインカの人々が最後にその身を投じる場所。到底、容易には登れない高さに姿を現す。できるだけ天に近い場所へ。どうか、天国へ。見上げる墓標には、死と生々しく関わってきた人だからこそそこに込めた、神への願いを感じてならない。南米ペルー、最後の秘境・チャチャポヤス。第2のマチュピチュと名高い“クエラップ要塞”近くに、カラヒアの遺跡がある。断崖絶壁を見上げると、モアイのような土偶の姿。人々は死を迎えると、この土偶によって天界へ運ばれると信じていた。
原住の魂を守る要塞 クエラップ遺跡
「マチュピチュみたいな大きな遺跡が山の上に見つかったらしいよ」。
数年前、クスコでそんな情報をもらったことがある。ペルー、アマソナス県、北のマチュピチュとも呼ばれるクエラップ遺跡。別名「雲の上の人々が住む地」。現地の人でさえ、知っている人の少ないこの遺跡は標高2900メートルという山の上にそびえ立つ、チャチャポヤス族の要塞だ。15世紀末にインカに征服されるこの地だが、断崖に積み上げられた石と石の隙間から時々人間の骨がチラリと見える。埋葬されている先祖たちも、この地を守ってくれているのだろう。近くには、崖面に突
然現れるモアイ像が有名なカラヒアの空中憤墓も。要塞へは、細い隙間から入る。何年も閉ざされていた「雲の上の巨人の世界への門」は、不思議な世界への門のように思えた。
TRINITY 44号(P62-63,66-68,73)より
special thanks:Tetsuya Nomura