Out with the old, in with the new.Part 7 〜東日本大震災より考える、絵を描くこと〜

悲しみや苦しみの世界に入って苦しんでいる人にとって、その世界から自力で外に出るのはとても難しいのです。誰かが外の世界から引っ張ってあげないと、その人の外の世界、『絵の外』には出られないのです。

震災などでもたらされる多くの苦しみと悲しみを救うには?

先日、連続テレビ小説「あまちゃん」で有名になった岩手県の三陸海岸に行って三陸鉄道に乗ってきました。

列車から見る海は、天気が曇っているせいで水平線が見えません。空と海の区切りが無くてどこまでも繋がっているようで、その景色を見ていると、自分がどこの世界に居るのか分からなくなってしまうような神秘的な雰囲気でした。

この穏やかな海が大地震があった時には30メートル以上の津波となって高い鉄橋をも流してしまい、線路を飴のように曲げてしまったと説明されても想像するのが難しい程でした。

震災からすでに数年という年月が経っていて、海岸沿いの風景は少しずつ変化していて、復興が進んでいるように見えました。海岸沿いでは重機が土埃を舞い上げながら防波堤の工事をしています。

しかし街外れにあった多くの仮設住宅を見ると、まだまだ以前のような状態になるには時間がかかるのだろうなと感じました。
きっと数年という時間が経って生活が落ち着いてきたとしても、心の中には解決出来ない傷が残っていて、その傷を癒すのには物理的な復興をする以上にもっと時間がかかるのだろうと思われました。

宿泊した宿の女将さんが言うには、津波やその後の心労で自分以外の家族全員を無くしてしまった青年がいるとお聞きしました。
その人の苦しみや悲しみを思うと、何をどう言って励まして良いのか解らないと言います。

きっとその人の抱えている思いというのは、誰にも理解出来ないほど深い悲しみと苦しみで、周囲の人からの励ましの言葉が虚しく聞こえるのかも知れません。

「どうしたら良いと思います?」
そう聞かれて、頭の中で答えを捜そうとしますが、悲しみを抱えている人が一瞬で元気になるような魔法の言葉はなかなか思いつきません。そこで一般的に言われている事柄を話し始めました。

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クライアントの方の状況をワンシーンでイメージする

『カウンセラーは、クライアントの方の話を聞いて泣いてはいけない』と言われていますが、それはクライアントの気持ちに同調してしまって同じ世界に入ってしまうと、その人にとっても自分にとっても良くないからです。

困っている人には苦しみや悲しみが満ち溢れていて、話を聞く人は気がつかない内にその人の世界の中に入ってしまい、同じような苦しみや悲しみを感じてしまい苦しんでしまうのです。

そういう状態になってしまうのを避ける為、僕は『絵を描く』という行為をするのです。
『絵を描く』というのは、クライアントの方の置かれている状態を、映画のワンシーンのようにイメージする事です。
その人の状態を、頭の中でイメージして絵を描くように思い浮かべるのです。

するとその人の置かれている状態が、外の世界から客観的に見えるようになります。
良い処も、悪い処も、長所も短所も客観的に見えてきます。
『そしてどのように進んだら良いのか』という方向性も見えてくるのです。

それらイメージした事柄を、素直な気持ちで言葉にして伝えれば、その人も自分の世界を何と無く客観的に感じれるようになります。
全ての事柄を解決に導く言葉にはなら無いかも知れませんが、何と無く他にも選ぶべき道があって、自分が思う以外にも行き着ける世界があるかも知れないと思えるようになるのです。