伽座守珊瑚の開運『狼語り狐語り』第8話~先輩眷族から後輩眷族へのアドバイス

所は現代の東京。下町の片隅を舞台に、狼眷族『グラウ』と狐眷族の『甚六』が織り成す、面白おかしな物語……。今回のお話しは、何やら『甚六』が、『グラウ』と知恵比べの様子……?

 

狐語り……先輩眷族『甚六』の能力とは

「あのう。丁度今朝『不運は借りてる部屋の家相や建物の作りが悪いと言われた。引っ越さないで改善するように助けてください』と若い会社員に拝まれたんですが。」

川辺の祠から来ていた痩せた狐が質問をした。ここでいう川は隅田川と神田川だ。

「依頼人は古い建物の5階を借りているそうです。家主の職場兼住宅の狭い敷地を30年位前にビルにしたもので1階が家主の仕事場、2階が事務所、3階から7階は1フロアに1DKが4つ入っている長屋を縦にしたような作り、8・9階と屋上が家主の住居で建物の中心に階段とエレベーターがあります。」

隅田川

 

甚六は質問をしてきた狐を介しその依頼人の心に映る部屋の間取りを探ると即答する。今は周囲に集った眷族にも勉強になるよう魂の言葉で伝える。

「依頼人のように集合住宅に住む場合、間取りの使い勝手が悪いとか、鬼門に水周りとか人間の言う家相の悪い作りが殆どだ。それにそこの辺りは駅に近くて町並みがビルになるのが昭和の中期と早かった。まだその頃では、長屋が縦になっただけみたいな狭いマンションはコンクリートとアルミサッシで通気性が悪く作られた。階段もエレベーターも建物の中心にあるのは昔だから建築許可されたんだろう。どこか火事でも出したら全階蒸し焼きで逃げ道がない。
間取りや建物の中心が『空』な所にすむと無駄な物を貯める・整理整頓が下手・稼いだだけ金が出る・太る。『空』とは廊下、階段、エレベーター、物置、押入れ、トイレや風呂みたいな人が常に居るわけでは無い空間だ。
開運対策は、間取りにたいしては『空』な場所に『空』を打ち消す宝物を置くか飾る。間取りの真ん中が廊下や階段ならば賞状とか住む者にとっての大切な物を側壁に貼ればいい。間取りよりも生まれ星の影響で依頼人には建物の『空』の影響が大きいが、借りている立場では何も仕様が無い。近所に『気』の良い神社や寺院、繁盛している店が有るなら日常はそこに『気』を浴びに行けば良い。家主は1Fの仕事場に鎮守様をお祀りしているから家主も建物も入居者も守られている。依頼人が泥棒や火事に遭わずに過ごせている日々を感謝する気持ちを持てるように気付かせて、気の良い場所を通勤の通り道として歩かせると良い。神社の前の道とか。」

甚六は依頼主が金をかける事なく、運気を改善する方法を伝えたつもりだ。

「はい。駅に向かう路地に第六天神を祀る神社があります。そこで良いでしょうか?」

痩せた狐の質問に、別の若い狐が

「天神? 学問の神様の天神様? 第6があるなら第1から第5があるの?」と、無邪気な質問を重ねてきた。眷族達は集まると派生して次々質問を本題から飛ばす傾向がある。

「菅原道真さまを祀る天神じゃ無いんだ。第1も第2も無い、『第六天』の神を意味する。人が後の世に仏教の知識を得て恐ろしい魔を示す第六天神=他化自在天を呼び名にした。元々は何か恐ろしいものを抑える《恐ろしいモノよりもっと怖い魔物》さ。」

答えたのはグラウだった。そのまま痩せた狐への答えを甚六に代わって言う。

魔神_191624789

 

「そこは第六天榊神社だね。元々は日本武尊(ヤマトタケルノミコト)さまが建てたと言われているよ。明治維新に神仏分離で日本神話の神世6世目のオモダル・アヤカシコネの両神様に祀り変えられているが、神社は質素で気が良いよ。そこでいい。」

痩せた狐が2匹に「ありがとうございます。」と礼を伝えると今度は甚六がグラウに質問してきた。

「第六天が仏教の用語なのはわたしも知るところだが、日本武尊さまは仏教が日本に伝わるかなり前の時代に第六天神を祀ったことになる。これは変ではないか。」

こういう真面目なやりとりになると甚六は言葉も丁寧にする。グラウが静かに答える。

「仏教の天部の神様とかは、広い大陸の色々な土着の神様を配下に取り込んだ存在だ。人間の学者や僧が聞いたら怒るだろうが、神世の時代の文化は大陸をはるか西から渡って来たさまざまな知恵が取り込まれていた。おそらく大陸由来の最高位の魔神を祀る事で魔を持って魔を制した。仏教伝来以前からある『第六天神社』の呼称は元はちがうもので、平安時代に仏教が正式に入った後に天台・真言・修験を合わせた神仏混淆の立場から魔性の頂上、すなわち第六天の魔王が謎の祭神の正体だとみなしたのだろう。」

 

「いいの?1800年も魔を封じていた魔王を明治の廃仏棄釈で追い出してちがう神様に変えたんでしょう?」

「魔王で抑えていた恐ろしいモノってどうなったの?」

観衆の狐たちは恐怖ではなくて面白いモノに食いつく感覚で各々質問を投げかけた。

この質問の回答はまた次回に……

 

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