伽座守珊瑚の開運『狼語り狐語り』第4話〜『狐眷族』名刑事(?)甚六の事件簿〜

所は現代の東京。下町の片隅を舞台に、狼眷族『グラウ』と狐眷族の『甚六』が織り成す、面白おかしな物語……。今回のお話しは、下町界隈に《ぬいぐるみが行方不明になる》という奇怪な事件発生でございます!

狐語り……名刑事『狐眷族』甚六が、頼れる相棒を召集!

猫は眷族次元ではお咎めなしだ。猫たちは霊媒能力が優れ過ぎているのが災いして、善良な猫本人(本猫)とは霊的共通点が皆無な粗悪霊に入り込まれる事がある。

金持ちの飼い猫には、江戸時代後期と思しき過去の時間に生きた男の霊が入り込んでいた。甚六たち稲荷眷族の狐はその男の霊を引っ張り出し行くべき人間の霊の行く世界に引き渡した。

容易いものだ。甚六はその時、裁縫をするような男の生前の姿を感じて、人形作家だったからぬいぐるみに執着したのかなと思った。何と無邪気な事件だろうかと。

しかし眷族次元では、これからが厄介な後始末になった。

直後から祠には、件・鵺・河童・人魚・鬼・烏天狗、なんだかありえねー化け物(勿論眷族たちと同じ、人の目に見えないモノ)がやたら訪れるようになった。

襲ってきたのなら叩き潰すが、助けて欲しい様子なので攻撃はできない。

甚六も眷族仲間の付き合い上、鬼・烏天狗、河童に知り合いがいるが、続々と現れる化け物連中は形が変で、幼児に近い体の比率だ。しかも傷んだり腐ったりした姿に視える。

「どうしよう。気持ち悪いぞ。人間もゾンビが大挙して訪れたならこういう気持か」

甚六が自嘲気味に化け物を眺めていると、遥か上で祠の異変に気づいた神様から『狼を呼ぶように』と諭された。神仏はささやかな気配で促す。

稲荷の仕事に他所の眷族を呼ぶ事もありだ。

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甚六には親しくしている他所の眷族たちがいる。狼のグラウもそうだ。狼は狐憑きを落とすので有名だが稲荷の敵ではない。

甚六は「来てくれ」という魂の声を近くにいた雀に乗せて飛ばしてグラウを呼んだ。

不便なことにグラウは依り代に憑いて地上に降りているので、依り代にこの辺に来てもらう必要がある。依り代というのは、前世からの縁や神様との縁で眷族を載せている人の事で、依り代は載せている眷族からの恩恵は受けない。召喚して使う人とはちがう。

グラウは秩父の三峰神社の眷族狼で、輪廻転生や時間を遡り過去を読める。違う神様の眷族でも持っていない能力は補い合う。

その頃、グラウの依り代の耳に甚六の飛ばした雀の囀る声が聞こえ、呼ばれた事を知ったグラウは稲荷の祠の近くに依り代が向かうようにさせた。

ここまでの流れはこうして人間の言葉で記すと面倒そうだが、時間にすれば一瞬だ。 後はグラウの依り代が徒歩でここまで来るのを待つ。

物語の本文の最初、子猫に狼が話していたのはこの時間軸の中。
グラウは、甚六の祠に向かう途中、偶然出会った迷子の子猫霊になつかれて、一緒にここに来る。

狼と狐そして猫は、千と百年近い時間の過去に悲しい因縁で繋がっていたのだが、まだ彼らはそれを知らない。

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ここまでは長いプロローグ。
次回ぬいぐるみ事件の後始末から《狼語り狐語り》本当の物語が始まりです。

 

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