伽座守珊瑚の開運『狼語り狐語り』第22話~見習い眷族仔猫の『ちゃ』の過去を手繰り、1000年の時空を超えて、現代に戻る~

見習い眷族仔猫『ちゃ』の過去。600年……1000年近く経ってようやく仔猫の 姿になる。そして、全てが揃ったのは平成の世になってからでした。

 

【 狐眷族『長老』が、将門を語る…… 】

長老は祠に集う皆に話しだした。
《将門記》という書物を知っているかね?これはその合戦の後に、将門様の生涯を書き残したものと言われているよ。しかし前の部分が紛失しておる。

《将門記》の前半は将門さまが私君としてお仕えした藤原忠平さまが部下の忍びに命じて全て廃棄した。まあ忍者みたいなものはすでに6世紀に『しのび』として存在していた模様でねぇ、10世紀にも暗躍していたのさ。

安倍晴明こと平正国殿(将国)は父の仕えた藤原忠平に守られて賀茂家で学び、藤原忠平の血脈に仕えた。忠平さまから受けた父と自分への恩を忘れなかったのだねぇ。晴明さまにとって一番の恩は《将門記》の前半に、将門さまが若かりし頃、巫女との間に将国という子をもうけたくだりが書かれていて、出生の秘密を隠すためには《将門記》の前半は邪魔だった。

将門さまの最期の戦いの時、正国殿は十八歳、藤原忠平さまに坂東へ行く事は禁じられて京の都にいた。坂東では将門さまに味方する者が滅ぶように呪術が仕掛けられている。

忠平さまだけではなく、安倍家、賀茂家共に、正国殿を守るために京の怪異・無理難題を解決するように押し付けて足止めしたのだよ。
質問とは順番が違うが、晴明さまがおられないのはそうした事情からさ。

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最期の戦場については、今の地名で言うと茨城の何処とか、山梨とか諸説あるがロクな記録媒体も無い1000年以上前の、ここで戦があったという口伝えの情報を元に伝えられてきたから正確な地名が伝えられて無いのと、もっと大切な理由で本当の将門さまの終焉の地を伝え無いようにしたと言うのが、歴史上の戦場が実際と違う理由だなぁ。

薬葉さんは将門さまが討たれるならば、将門さま自らがヤマトの呪詛の封印になる覚悟を知っていて、日本武尊様の最北の封印の地が戦場になると読んでいたんだよ。だからあらかじめ正国を呼んで三峯の分社を勧請しておいた。

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将門さまの血が大地に染み入る場所が三峯分社と星宮神社五社の結界の中に入るようにね。地震や火山の噴火で緩んだ封印を作り直す。志半ばで討たれるならば、自ら怨霊となってでも封印となろうとした将門さまの思いを援護したんだね。

だから仔猫が一時しのぎのお守りにしかならないことは承知の上で時間稼ぎをした。仔猫のおかげで午前中だけでも将門軍が快進撃できたことで、将門さまは結界の中にたどり着いたのだよ。この結界の地は歴史に伏せておくべきなのさ。

猫の魂が砕かれ、狼と狐が封じられた事は想定外の出来事だが、薬葉は魂に永遠の命の法則がある事を理解していたから、いつか将門さまの魂の下に皆が解放されたり復活したりして集う事も信じていた。今、そのとうりにここにお三方居るではないか。」

 

【 狐眷族『長老』。やはり曲者か…… 】

長老は回答を終えると、にゅーっと目をほそめた。

甚六たち三匹はその目を見て、長老はもっと自分達の事を知っているのだろうと確信したが、あえて聞く元気は無かった。その頭上をまた観衆の元気すぎる質問が飛び交う。

「わかんな〜い。なんでそこが最北の封印の地で、将門さまが封印なの」
「星宮神社は日本武尊様が施した封印でしたね。もっと知りたい。何をした跡なのか。」
「なんで日本武尊様は藤原秀郷を『みる』役に選んだの?何か縁があったの」
「首塚とかさ、神田明神や国王神社に祀られている将門さまはそこにおられるの」
「この世に生きていたのに神様になるのってどういうこと。家康さまとかもそうだけど」

ばちあたりな質問ばかりだが、長老は目を細めもせず、
「そうさなぁ」恐ろしく真面目に答え出した。

 

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