伽座守珊瑚の開運『狼語り狐語り』第2話
〜天狼『グラウ』、霊狐『甚六』。神の使いである『眷族』の生活〜

所は現代の東京。下町の片隅に地域の霊的治安を護る役割の『狼眷族』と、稲荷の神様の使いとして働く『狐眷族』が住む。狼の『グロウ』と狐の『甚六』の、面白おかしな物語……。
伽座守珊瑚の開運『狼語り狐語り』第2話<br>〜天狼『グラウ』、霊狐『甚六』。神の使いである『眷族』の生活〜

現代の東京、下町の片隅に、町稲荷の神使、瑞穂甚豊銀毛六尾之霊狐(みずほじんほうぎんもうろくびのれいこ)は居る、通名は甚六(じんろく)。

そこからやや南に三峰神社の眷族、天狼霞隠雷之蔵雨(てんろうかすみかくしいかづちのぐらう)通名グラウが住む。

甚六は町稲荷の祠に商売繁盛や恋愛成就の祈願をする人の為に、稲荷の神のお使いとして働く。まだ東京が江戸と呼ばれていた頃からその辺りにいる。火事地震、戦火、色々な出来事で祠は何度も存続の危機に陥ったが、甚六はソツ無く手回しをして人を動かし、祠を再建させ居所を維持して来た。

グラウは付く人=依り代(よりしろ)の側に居る。たいていの狼眷族は付いている人を守るのではなく付近の霊的治安を護るのが役割。

この狐と狼、当然人の目に見える存在では無い。生きた動物とは違う。
これは、その狐と狼の物語。狐語り、狼語り。

 

狼語り……神の使いである『眷族』の古き時代の生活について

「何か聞かせて」か。勝手に付いて来てしょうがないな。適当に話すから聞いていればいい。

この路地をまた横に入ったより狭い路の突き当たりに鎮座する小さな稲荷の社。
奴はそこにいるはずだ。奴は「狐」。動物の狐とは違う、力をもった光。
人は神の使い=眷族と呼ぶ。稲荷の神様の眷族の狐だ。
奴という呼び方は乱暴に聞こえるようだが、眷族同志にとっては敬称だ。と、言うのもわたしも眷族で、人が言う「狼」だ。自分が体を持った現実の狼だった記憶は無いが、秩父は三峰神社の眷族に籍を置く神使だ。普通は眷族が神社を離れるのは、祈願に来た人の願いを叶える為に、神様のお使いとして働くのが普通で、役目が済めば神社に還る。

昔は三峰の眷族は、山に住む〔肉体を持った狼〕を依り代として熊や盗賊を追い払ったり、道に迷う人を導いた。肉体を持った狼は、群れで助け合って行動し、私たちの性質や魂と質が近く、依り代(よりしろ)になるのにふさわしかった。依り代というのは、現実世界で行動する為の生きた体だ。残念ながら生きた狼が殆どいなくなってからは、眷族狼は人間たちの言う《霊》な存在として山に居る。

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わたしが街にいるのは、役目が人を依り代にする立場なので、依り代が居る所が住処なんだ。眷族は自分の依り代については、掟なので言えないけど、わたしが今の世で使う言葉は依り代の知識や性格から得ているものだ。もしも依り代が江戸時代の人間だったなら平素は「身共」、丁寧には謙って「某」だろうか。

狼に限らず眷族には生きた人間を依り代として働く場合がある。
わたしは、神様から使命を賜って依り代にした人間に寄り添い、輪廻転生をまたいで行動を共にしている。役目を解かれるまではその人間が生まれ変わっても憑きつづける。気に入れば役目が終わっても一緒にいる。今も使命なのか定かではない。この依り代とは長い。

人間は勝手な憶測から、我々眷族の狼は稲荷眷族の狐と仲が悪いと理解するようだが、御眷族同志というのは蛇も狸も含めて敵対したりはしない。稲荷狐はもっと個々の自由意思の高い行動範囲を持っていて、神仏から役目を賜る以外にも、狐と性質の同じ者だけでなく、様々な人間に憑いたりかかわったり出来る。

 

狼語り……通り名『蔵雨(グラウ)』と同志眷族狐『甚六』について

依り代の行動範囲や霊の性質に応じた動きに縛られる狼が負け惜しみで言う訳ではないが、鳥は飛び魚は泳ぐのと同じで、この世の仕組みに応じた役割の違いで、眷族世界の秩序としての働きの違いだ。

とは言え、狐の働きには深い尊敬を感じている。例えば真面目で勤勉、質素な店屋の商売繁盛の心を込めた願いに、狐は見栄っ張りな金使いの荒い人間の心に次々に取り憑いて、祈願した人間の店でパカスカ買い物をさせる。

買い物をした人間の心は満たされ、速やかに店は儲かる。客がカードを使えばカード会社も儲かるし、沢山売れて店が商品を補充しようと仕入れれば問屋も生産者も儲かる。店が高額納税して街や国にも貢献とは目出度い。もっともそのあとで買い物しまくった連中がカード破産しようが狐はお構いなしだ。

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これを狼がやろうとすると、願った人間に等しいかそれに近い質素な人間を客として探すことしか出来ないし、必要な物を無理の無い金額買わせるので、繁盛までには時間がかかる。狼としては、そういった意味でも狐は人間界の物事をショートカットに解決出来る尊敬に値する存在だ。あ、これ嫌味で言ってんじゃ無いから。

で、話しを元に戻すと、俺は「甚六」という通名の稲荷の眷族狐の用に呼ばれて依り代の人間がここに迷い込むように仕向けた。「甚六」は風呂屋の側の稲荷の祠にいるからだ。眷族狼は依代が生きた人間でいるときは、その人間から遠くに離れて行動は出来ないから、目的地へは人間に行動させる。

日常的には依り代でない人間でも「なんだかどこかに行ってみたい」と思い旅をする時、なんらかの種類の眷族が憑いて便乗していることもありえる。

「甚六」は本当はもっと威厳のある長い名前を持っているのだけど、眷族の間では「甚六」で通っている。わたしの通り名は「蔵雨(グラウ)」、灰色をあらわすドイツ語の響きで気に入っている。本当の名前は滅多に名乗らない。

話し込んでいるうちに湯屋の路地に来た。奴の住処に近い。
今日のわたしの話しはこれまでだ。
甚六とややこしい問題に取り組まなくてはいけないからね。
「見物していていいか」って?  甚六に頼んで良いと言われたなら好きにしていいよ。
好奇心の旺盛な《見習い眷族》の仔猫ちゃん。

おっとその時は「甚六狐様」と呼びかけて、「見物」ではなくて「見学」と言うのだよ。奴は、こんな所にいるわりには富士山の咲耶姫様の側でも働くことが許されているんだ。多分「六さんでいいよ」と言うんだろうけどね。眷族狐の世界は礼儀だとかしきたりに厳しいから気をつけて。

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伽座守珊瑚の開運『狼語り狐語り』第1話〜菅原道真、平将門。物語の根底に潜む歴史〜

 

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