伽座守珊瑚の開運『狼語り狐語り』第19話~狼眷族『グラウ』。遠い記憶から蘇る平正国との出会い、そして平将門を護る覚悟!~

グラウは遠い過去の時間にさかのぼり、まだ少年だった頃の『平正国』と出会ったのです。そして三峯の分社を建てた理由と、将門への護りが必要な理由を聞かされるのでした。そこには壮絶なドラマが……。

 

天慶3年(西暦940年)グラウが眷族を連れてきた三峯の分社にほど近い耕地。

幸い春まだ浅く作物は植えられていない。
幸いというのは、その日その辺り一帯は朝廷側軍と坂東で新皇を名乗る将門軍の戦場だったのだ。朝廷の不動明王の加持祈祷の力なのか、辺りには突風が起き、騎馬の将門勢は馬が落ち着かず追い込まれている。

人間には見えぬ光景だが、朝廷の火天呪により回転する炎の渦を火には火で動きを止めている霊狐と、雷となって飛んでくる弓の軌道を狂わせて将門軍に矢が当たらないように仕向けている天狼、他にもたくさんの式神が、現実の合戦に加勢している。

情勢は昼前には急変する。突如強力な霊力を乗せた風が、それら将門軍の霊獣を一気に薙ぎ払った。式神は術が解かれモノに還り、霊力を帯びた武具は捻れ、瞬時にして将門軍の側近は全て落命する。

平将門は生き残った兵と有志で集まった農兵に即刻撤退を命じた。これ以上領民の犠牲は出したく無い。

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孤軍奮闘を覚悟した。それは死への覚悟であった。

……どうやらこの時グラウは、側にいた甚六もろとも、将門さまの側近の一人である依り代の太刀の鞘に封じられてしまったようだ。鞘はねじ曲がり、人ではないモノの力が働いた様子が見て取れる。
いつしかグラウの探る時間の記憶は、鞘を持ち去った人物にアクセスしていた。グラウや甚六も知らない事、太刀の鞘はどうして武蔵の小さな神社に収められたのか……。

すると、封じられた直後の戦場が、敵の武将側の目線で映り込む。
その目線の主は鎧兜に隠れてはいるが、姿は初老、いやその時代ならば立派に老人の域か。
その武将の名は藤原秀郷。
かつて無敵のムカデと呼ばれた鋼鉄の甲冑を装備した豪族軍を討ち、その名を轟かせた武将だ。

将門さま討伐の祈願で下谷神社に社殿を奉納したと伝えられる藤原秀郷。
下谷神社も三峯神社も日本武尊さまが神祭りをされ建てられたた神社だ。討つ者、打たれる者、神社を巡る点と線が繋がるのだろうか。

 

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