伽座守珊瑚の開運『狼語り狐語り』第17話~狼眷族『グラウ』の探る将門親子の物語に眷族たちが大集合!~

霊威強靭な狼眷族『グラウ』が過去の時間へのアクセスを試みる。噂を聞きつけた観衆たちで大賑わい! さてさて、『グラウ』が探る将門親子のお話しは、どのような時の 流れを映し出すのでしょう!?

 

観衆には先の事件で捕物に応戦した狼眷族や、噂を聞いてやってきた近隣の龍や狐たちも加わり大所帯だ。

眷族狐の甚六と仔猫のちゃは、山ほど積まれた供物の菓子を観衆に配りながら、神様が『土産をもたす』の約束どうり、スキヤキ弁当からケーキまで美味しいものだらけにしてくれた事を喜んでいた。

眷族はお下がりの供物の『気』を頂く。このとき、心の込もった物だと千倍おいしい。

おいしいというのは、魂=霊体が喜び元気になることを表す。

レモンパイという店のレモンパイはそのなかでもこの上なく皆を癒してくれた。
長老は今半の弁当なら何でも好物だそうで嬉しそうだ。

 

猫も狐も狼も龍も蛇も、霊だから人間みたいにネギもレモンも味わえる。

どれも人間が土産でもらったり自分で買ったモノを自宅の祠や神棚に供えて、そのあとに食べてしまった品々だ。
でもこうして眷族が相伴できるのは、神様が真心と品の気を受け取られ、その『気』を眷族にもこうして土産として分けて下さるからだ。

神様へ供えた酒や食べ物は神様の光を浴びて、より美味しく元気になれるモノになる。

これは人間がお供えしたモノを後で頂く場合にも通用する。だから人は、自宅で心を込めて神様へ食べられる物をお供えしたら、供えっぱなしにせずにすみやかに、温かいものは温かいうちに下げて食べるのが良い。

お供え物

 

ちなみに墓や仏壇に供えたものは故人や御先祖が『気』を頂くので、そうはいかない。

 

そうこうしている間に、グラウの探るビジョンは将門親子のそれからにたどりついた。

将門の子=将国の母として穏やかな日常をすごしていた薬葉だが、ある日やむなく不思議な力を人を救う為に使ってしまう。人の口には蓋ができない。奇跡を求めて信太の屋敷には人が押し寄せるようになり、それが元で将門と意見が衝突してしまう。

薬葉は信太を離れ、妙見巫女として市井の人々を救う道に戻る。
幼い将国は坂東の将門の弟たちの元で暮し、弓と剣を教わる。
旅巫女に戻っても薬葉は時々館を訪ね、将国との時間を過ごしている。
これは将国が両親から引き継いだ不思議な力を正しく導くためでもあった。

 

時は流れる。

将門はまだ京で護衛の任についていたが、領地を狙う伯(叔)父達への牽制の意味もあって非番の時に帰郷する事は多かった。検非違使クラスの出世を遂げて伯(叔)父達が領地や弟たちを脅かすことがないように目を光らせねばならなかった。
領民が苦しい生活を強いられていないかも、自らの目で確かめ、必要なら改善の策を弟たちと話し合い行動に起こした。
プライベートでは薬葉を旅巫女に戻して後、幼馴染を妻として迎えていた。

妻とお付きの女たちは、薬葉とはすでに少女の頃から親しく、薬葉が用意した疫病避けの桔梗柄の着物を揃いで身に着けていた。だからその着物姿の女性たちは皆、家臣や領民からは『桔梗の方』と呼ばれていた。

彼女たちの周りには常に何匹かの猫がいる。
親族間の争いから妻たちを守るために薬葉が住みつかせた猫たちだった。
その中には仔猫のちゃに似た模様のトラ猫もいる。猫は人の怒気や殺気を感知すると、桔梗の方たちを安全な所に導いた。

薬葉の猫

 

時はさらに流れる。

将門は11年間の京都での任を解かれ、下総国相馬御厨の下司として、故郷に戻る。
10年粘っても望む出世は叶わなかったが、体面を保てる身分は拝せた。

しかし正式な帰郷は伯父の本気の嫌がらせの始まりでもあった。
将門の妻が(当時 身分のある者の婚姻は通い婚で、女は親元や後見人の屋敷に住まうことが多かった)違う縁に結ばされるべく連れ出された。
それを知った将門が騎馬で駆けつけ連れ戻した。
のちに『女論(女をめぐるいざこざ)によりて伯父と争う』と【将門記】に記された出来事である。

この事件をきっかけに10歳になった将国は、正国に名を改め、京の賀茂氏に預けられる。
賀茂忠行は陰陽道の師だ。
しかし正国の名は殆ど使われる事は無かった。
正国は入門してほどなく、道中に迫り来る百鬼夜行の存在を師匠の賀茂忠行に知らせ、そのたぐいまれな才能を認めた賀茂忠行は彼に安倍晴明の名を与えた。
母、薬葉の祖父の安倍氏と、訪れた日の春の晴明の暦に由縁する名だ。

 

グラウはその少年に、安倍吉平の面影を感じていた。

こちらの晴明の方が親なのだが、グラウにとってはこの年頃の姿にアクセスしたのは子の吉平の方が先だ。

1100年の過去、歳の頃17歳の、記憶の中にある若者に、その姿の時に出逢っているのだ。生身の姿なのか、生魂=生霊なのか定かでは無いが、それがその10歳の少年が成長した姿なのだ。
はぐれ眷族の捕物の後、疲れた魂に浮かび上がってきた記憶の、
「親子なのだ」という認識は、17歳の晴明を初めて見た時の驚きの思い出だ。

「何故、何処で。」グラウはその時間へのアクセスを急ごうとする。

過去へのアクセス

 

「これこれ、また休んでからにするがいい。」

長老狐がグラウを止めた。過去のビジョンはテレビモニターのスイッチを切ったように消え、現実の夜空とコンクリートの建物に挟まれた祠が此処に有る。

観衆はいつになく静かだ。いつもなら甚六が「タイム」を入れてくれる所だがと思ってグラウが甚六を捜すと、仔猫のちゃと狐の甚六は祠の陰で抱き合うように泣いていた。

ちゃと甚六だけでは無い。他にも泣いている者がいる。

気づけばグラウ自身も涙が目から溢れ出る。

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