伽座守珊瑚の開運『狼語り狐語り』第11話~若狐眷族と老狐眷族が語る真実と歴史の謎解き……

人間の歴史は権力者に都合良く書き換えられる……。真実と歴史の謎解きは眷族たちにとって面白いゲームのようなもの。

 

狐語り……老狐眷族が伝える“ヤマト”の歴史とは

と、そのとき、急に投影されるビジョンにノイズが生じ映像が断ち切られた。
グラウと甚六、猫のちゃの三匹だけが大きな団扇でバシッと叩かれたような衝撃を感じて地面にへばりついていた。甚六とグラウは子猫と観衆の無事を確かめると、顔を見合わせた。この感触に覚えがある。自分たちの思い出せ無い過去を探そうとしたとき同じ目に遭った。観衆たちは何ともなかったらしく、隣り合う狐どうしで星の形や星座が祠にあった事の話題で盛り上がっている。

「どうやらお三方、今の若武者にかかわった過去を持つ。」
代わって語りに出たのは界隈で長老というニックネームをもつ老狐だった。

甚六たち三匹のダメージが見た目より大きい事に気付いて、回復の時間をかせぐようにしてくれたことを、甚六もグラウも理解し意識を向ける。長老は皆の魂に語る。

昔を語る

 

狐語り……ヤマトを護る神使として老狐眷族が知ること

「わたしは昔のむかし、ヤマトを護る神使として仲間と共にこの国に来た。ヤマトの人が豊かな実りに恵まれれば争わないで済むからこそ、人の衣食住を豊かにして生活を守る。戦う稲荷はいないのだよ。ヤマトの民は自由に移り住む。ヤマトに言葉とか毛や体の色とかの分け隔てはない。今、居る所が故郷で集う仲間は皆ヤマトだ。悠久の時間をかけて、ヤマトは西から、太陽の昇る方へと来た。獣や人がヤマトを攻撃することがあると、ヤマトの王は呪詛を行うことがあった。

その呪詛は心に恨みや怒り・敵愾心を抱く者にだけ発動する呪詛で、《身内同士が裏切りで相打ちになる呪詛》と《天気気象の龍=『流』を狂わせて雨風旱魃でその土地をリセットしてしまう呪詛》だ。この呪詛は、好戦的な者だけが勝手に滅び、風雨が築いた物を消し飛ばす。呪詛は事後に解除されるものだったが、ヤマト王と皇子にだけ伝えられる秘儀で、何代か続く王朝の後の代になるころには、王の早逝などで呪詛だけが伝えられ、解除方法も封印程度の不完全なものになっていた……。

 

狐語り……争いや滅びの無い世にするために現れた人物とは

まだ当時駆け出し眷族のわたしの知る事はそれだけだ。各地にある星座と六芒星の祠は皆が理解したとうり、5世紀位までの時代にヤマトの王や皇子たちが呪詛を封印するために星から恐ろしい神を呼んだ跡で、その神を祀ったものではない。ただ、祠は強い力を宿す『場』なので、後の世の人々が神社として祭った。人間の都合でどの神様を祭神として祀ろうが、人によって祀られた御神霊は働かれる。今の第六天榊神社のご祭神のように。

さきほど見た若武者は、各地の封印が緩んでいること、封印されずに呪詛が発動したままの地も多いことに気付き、争いや滅びの無い世にするため呪詛を封印せしめようとした。 双子の兄弟の、志半ばにして東国で病に倒れ武甲山に眠る皇子の転生した魂を持つ、その若武者の名が……平小次郎将門……平将門さまなのだよ。」

 

観衆たちがどよめいた、それ以上に甚六とグラウが動揺に魂を震わせた。

 

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