要注意! つぶす人は結局自分がつぶされます! 科学史の事件簿〜感情美人への道Vol.63

いくら頭がよくても、人間力がないと結局最後は勝てないのです。
要注意! つぶす人は結局自分がつぶされます! 科学史の事件簿〜感情美人への道Vol.63

皆さまこんにちは。前回前々回と中世天文学の記事を掲載させて頂きました。
1人はコペルニクスで、もう1人はヨハネス・ケプラーでしたね。

 

今回は時代をずっと前に進めて、20世紀初頭に起きたある事件を取り上げたいと思います。

舞台はイギリスの天文学会。ここに、天文学の発展を40年も遅らせたと言われる事件が発生しました。そこには、ある偉大な学者の「妬み」が絡んでいたのです。

今回の登場人物は2人います。1人は優秀な弟子を妬んでつぶしたばかりに、晩年その権威を失墜した天文学会の重鎮・アーサー・エディントン。そしてもう1人はつぶされた方。非常に優秀な弟子で後のノーベル賞受賞者、スブラマニアン・チャンドラセカールです。

この2人は、ブラックホールにつながる「恒星の終末期」について意見が対立しました。
ブラックホールは20世紀最大の発見と言われています。この謎を解明できれば、宇宙の謎さえ解けると言われているからです。この扉を、80年前に開いた人物がいます。それが若き天才物理学者・チャンドラセカールです。

でも、権威と常識に逆らう発見は、以前紹介したコペルニクスやガリレオと同じ様に闇に葬られる危険性と表裏一体です。そしてチャンドラセカールは、エディントンによって闇に葬られた1人でした。

まずは、それぞれの人生について見てみましょう。エディントンは、今は老害のイメージが強いですけれど、彼は彼ですごい人です。彼は2才のときに父親を亡くし、恵まれない子供時代を過ごします。そこから猛勉強してケンブリッジ大学大学院に入り31才で教授になり、翌年には天文台長にもなります。英国王立天文学会のメダルを獲得したり、はてはナイトの称号を叙されるというイギリス天文学会の重鎮でした。

功績も素晴らしく、核融合が生み出される12年も前に「太陽はガスのかたまりからできていて、そのエネルギーは核融合から生み出されている」と述べています。加えて、アインシュタインの【相対性理論】を世界で初めて観測したのがエディントンなのです。つまり、20世紀最大の物理学者アインシュタインが、足を向けて寝られないのが、エディントンな訳!

そんな彼が一生をかけて追求していたのが「星の一生」について。特に「星が死ぬ時どうなるのか」というのがテーマだったんです。当時50才のエディントンは「全ての恒星は白色矮星になり、小さな岩になる」と考えていました。

*「白色矮星」とは、恒星が滅びる最後にとりえる形態の1つで、非常に高密度の天体です。例えば、1立方cmの重さが10t以上になります。

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エディントンが書いた『星の内部構造』は世界中でベストセラーとなり、その一冊をむさぼるように読んだのが、インドにいたチャンドラセカールです。

チャンドラセカールは、インドの上位カースト【バラモン】に生まれます。数学が得意で、幼い頃から神童と呼ばれました。(ちなみに叔父は、インド人で初めてノーベル賞を受賞した人物です)。チャンドラセカールは、当時最先端だった量子物理学に夢中になり、19才で英国ケンブリッジに留学します。

そして英国に向かう船の上で、ふと「恒星全部が白色矮星にはならないんじゃないか?」と計算し始めました。そしてあっという間に、エディントンと違う理論を発見してしまったのです。それは「ある質量を越えた巨大な星は、自らの重力で永遠に潰れ続ける」というものでした。

イギリス到着後、チャンドラセカールは憧れのエディントンに師事します。チャンドラセカールはピュアで学問だけを追求していたのですが、エディントンはそうではありませんでした。年を追うごとに量子力学の計算精度が上がり、自分の理論と対立するチャンドラセカールの論文に大きな危機感を抱き始めたのです。

もう、嫉妬が発生する条件がそろいすぎているんですね。
嫉妬が生まれやすい条件は次の3つ。

① 同じ分野
② 同性
③ 自分より目下に追い抜かれそうになった時