感情美人への道Vol.30 〜「ほめる」より子供に自信をつけさせる方法〜 Ultraistic Behavior Helps to Improve Kids’ Self-Esteem

親が言葉尻を考えて子供をほめるよりも、定期的に人に感謝してもらえるような経験を積ませ、それについてお互い語り合った方が建設的だと言えるでしょう。

阪神淡路大震災では、こんなエピソードもありました。

当時大阪で飲食店経営をしていた50代の女性は、生まれ故郷である神戸市東灘区(激しく被災した地域です)に何とか支援物資を届けようとしました。

しかし当時、交通網は至る所で断ち切られていたのです。そこで女性は、店の前でタムロしていた暴走族の若い子達にこう言いました。

「あんたら! わけもなく走ってんのやったら、バイクにこの荷物を積んで、神戸の被災地に運んであげて。ガレキだらけでも、あんたら若い子のバイクやったら行けるはずや。行けるところまでバイクで行って、アカンかったら、足で歩いて届けて!」

すると驚いた事に、その暴走族の子たちが「うん、分かった」と言って、それから毎日毎日、仲間も連れて来て支援物資をバイクに積んで運んでくれたそうです。

荷物を運んだ彼らの言葉を紹介しましょう。
「俺、生まれて初めて人に感謝されてん。被災者の人らな、自分らが大変やのにな、『兄ちゃんら、事故せんように気ぃ付けて帰ってや。ありがとうやで』って、こんな俺らにな、何回も頭下げてくれんねん」

その後、彼らはすぐ暴走族を辞め、仕事を始めました。その中のリーダー格の男の子は、三軒も店を構える美容師になったとか。

 

なぜこんな事が可能なのかというと、その理由の一つが寄付やボランティアといった「利他的行為」をすると「オキシトシン」という神経伝達物質の分泌が促されるからです。

オキシトシンが豊富な血液を持つ子供は好奇心が旺盛で、経験したことのない状況に遭遇してもさほど怖がらず、情動面での立ち直りも早くなります。
また前頭前皮質(脳の司令塔です)の発達が促されるので、行動する前に考え、ひいては成績の向上につながり、職業を選択する時の能力に自信を持てるようにもなります。

ちなみに、京都大学大学院の鈴木智子氏によると、寄付した直後に幸福度が上がるというよりは、むしろ「過去の自分の善行を思い出す」事で幸福感を得られるのではという事です(ボランティア行為も然りでしょう)。

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つまり、親が言葉尻を考えて子供をほめるよりも、定期的に人に感謝してもらえるような経験を積ませ、それについてお互い語り合った方が建設的だと言えるでしょう。

 

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参照
『なみだのラブレター』ヨシモトブックス 橋本昌人
『愛は科学物質だった!?』ヒカルランド スーザン・クチンスカス
第4回日本ポジティブサイコロジー医学会学術集会 教育講演『寄付と幸福感』 鈴木智子(京都大学大学院経営管理研究部)資料