私のために私の成功をぶち壊してくれていた 騙され人生を転落した前世の私

自分らしさを取り戻す 光の破片を集めるストーリー 『光を紡いで』第2話 〈前編 「夢と憧れ そして現実」〉 音楽芸術セラピスト玲奈が、実際に体験した過去世のトラウマの記憶の癒しを、短編のストーリーで書き綴ります。 人生の上昇、才能や能力の開花に繋がる癒しと、魂の不思議なストーリーをお楽しみ下さい。

バーに行かない日は1人練習に励み、数年後にはたどたどしいけれど、何とか音楽が奏でられるようになっていた。
そして、たまに少しだけセッションに混ぜて貰う事が楽しくて、ますますのめり込んでいった。

確実に腕を上げ、ステージに立つ事もだいぶ堂々としてきたある日、今まで会った事のない男2人に声をかけられる。

私の演奏に興味を持ってくれているようで、まだサックスを始めて5年程だという事に感嘆し、未来が楽しみだと誉めてくれる。

その後もたまに、その男達は私の演奏を聞きに来て、私をべた褒めしていった。
私は嬉しくて嬉しくて、すっかりその気になっていた。

気が付くと私は、その男達を完全に信用し切って、他の者の言う事は全く届かなくなってしまっていた。

あまりに調子良く誉めるので、ミュージシャン達は「気をつけろ」と私に何度も忠告してくれていた。
でもその世界に入って短く、それもプロの世界を知らない私には、皆が何の事を言っているのか、全く分からなかった。

あまりに有頂天になっている私は、まだプロでもないのに、プロが私をひがむほど私は素晴らしい演奏をしているのかもしれないと、ほくそ笑んでいた。

そんなある日、いつものようにその男達はやって来た。
演奏が終わった後、ひとしきり私をほめてから、話があると言われる。

その話とは、自分達がプロデュースするので、スターにならないかという内容だった。

レコードデビュー、発売記念のライブツアー……。
夢に見る、憧れのステージに上っている自分。

私の目の前の未来がどんどん黄金に輝き、私は完全に舞い上がっていた。
そして、そのためにはまず始めの資金が要るので、資金を用意できたら必ずスターにすると約束される。

私はもう嬉しくて嬉しくて、躍る心を抑えられず、コツコツ働いて未来のために貯めてきたお金を、言われただけ用意した。
多分250万位だろうか……。

約束の日、それを男達に渡す。
これで一緒に夢を叶えようと約束し、すぐに計画に移るので後で連絡すると言われる。

それから数週間。

数ヶ月が経ち……。

いっこうに連絡は来ない。

本当は、すぐにでも特別レッスンが始まり、私のための曲作りが始まってその後レコーディングに入る。
プロモーションのための計画も同時にスタートする予定だった。

私の頭の中にある未来の煌びやかな世界は、大きなヒビが入り今にも崩れ落ちそうだった。

私はどんどん不安になり、騙されたのではないかと疑っては
「そんな事はない。もう少し待ってみよう。」
と、その度に不安な自分を打ち消していた。

だが、もう待てない。
いつしか私は不安でいっぱいで家にこもり、バーに出かける事さえ忘れていた。

何とか男達の居場所を調べ、事務所を訪ねてみる。
音楽事務所だと思っていたその事務所は、ただのギャング達の事務所だった。

私が信頼していた男達はそこに居たが、まるで別人のようで、私が何を言っても取り合ってはくれない。
すぐにそこから追い出された。

すごすごと引き上げたものの、世間知らずの私にはどうしてもこの現実を飲み込めなかった。

仕事に行く気にもなれず、数日家から出ずに悩んだが、やはりどうしても納得がいかない。
私は怖さも知らずに、もう一度その事務所を訪ねる事にする。

スターになる夢は諦めるので、せめてお金を返してほしかった。
まだ何の動きも始まっていないのだから、お金は返して貰えて当然だと思っていた。

私の想いを述べると、男達に暴行を受ける。

自分のレベルも知らずに褒められて調子に乗り、すっかり騙された自分が悪いとは、まだ気付けるだけの余裕もなかった。
自分は何も悪くないのに、なぜこんな目にあっているのかが分からず、ただ悔しくて仕方がない。

訳が分からないまま体中を殴られ蹴られ、みぞおちを思い切り蹴られた一撃で動けなくなる。

男達が去り、しばらくして私は1人うめきながら身体を起こす。
体中が痛いだけでなく、前の歯が折れていた。

もうサックスは吹けない。
スターになる夢だけでなく、音楽の夢も演奏する楽しみも失った。
ここからの人生はもう絶望しかなく、不幸な自分の人生を呪った。

身体以上に心がズタズタだった。
頂点まで引き上げられ、一気にどん底に落とされたショックは大きかった。

そこから私は仕事も辞め、誰にも心開かなくなり、浮浪者のような生活を送った。
自分は世界で一番惨めで可哀想な犠牲者だと思い込み、自分の世界から出ようとしなかった。
世間には不満しかなく、一生報われない人生を恨み、神を憎んだ。

 

後編に続く

 

『REINAのピアノヒーリング』
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