Carl Ransom Rogers アメリカの臨床心理学者。「来談者中心療法」の創始者でもある。心理相談の対象者を患者ではなく、クライアントと称した人物でもある。アメリカ心理学会による「20世紀にもっとも影響の大きかった心理療法家」の第一位に選ばれている。
カール・ロジャース 生涯
イリノイ州オークパークにてプロテスタントの宗教的に厳格な家庭に生まれる。1919年にウィスコンシン大学に進学し、父の農園を継ぐために農学を専攻するが、YMCA活動を通じて、キリスト教に興味が移り、牧師を目指すために、史学に専攻を変える。
ウィスコンシン大学を卒業した2ヵ月後に、妻ヘレンと結婚する。ユニオン神学校に入学するが、牧師を目指す道に疑問を感じ、コロンビア大学教育学部で臨床心理学を学び、在学中ニューヨーク児童相談所の研修員になる。
卒業後、ロチェスター児童虐待防止協会で12年間臨床に携わる。 その中で、従来のカウンセリング理論に疑問を感じ、自らの理論的枠組みを形成し始める。 オハイオ州立大学、シカゴ大学、ウィスコンシン大学で教授職を得て、教育と研究に従事し、非指示的カウンセリングを提唱する。 これがのちに来談者中心療法と称されるようになり、さらにパーソンセンタードアプローチへと発展する。
ロジャーズは精神分析には否定的であったとされるが、フロイトの高弟のひとりオットー・ランクからの影響を明言している。
西部行動科学研究所に移籍後、人間研究センターを設立し、精力的にエンカウンターグループの実践、研究に携わる。 さらに、各国の紛争地域でエンカウンターグループを実施し、世界平和に力を注ぐ。1968年には、その記録映画のひとつ『出会いへの道(Journey into Self)』がアカデミー賞長編記録映画部門で最優秀作品賞を受賞した。
(出典 Wiki)
カール・ロジャース カウンセリングの技法
ロジャーズは次の技法を重視しました。
(初期の1940年代の頃の非指示的カウンセリングにおいて)
・単純な受容
「あいづち」「うなずき」など。評価や批判をしないで、ひたすら相手の気持ちを
受容する態度で聴いていることを表わす。
・内容の再陳述
クライエントの話の内容を、正確かつ簡潔に伝えかえす。
・感情の反射
クライエントが今、感じ、表わしている感情をそのまま受け取り、
鏡のように反射して返す。
・明確化
クライエントが体験しているが、はっきりとは意識化されていない感情を
カウンセラーが感じとり言語化する。
カール・ロジャース 著書「ロジャーズが語る自己実現の道」
訳者あとがきより● 現代カウンセリングの祖であり,日本のカウンセリング界に最も大きな影響を与え続けてきたカール・ランサム・ロジャーズ。彼が世に出した幾多の書物の中で,最も多くの人に読まれ,最も強く人々の心を打ったロジャーズの主著と言えば,それは間違いなく,本書『ロジャーズが語る自己実現の道』でしょう。
1961年,ロジャーズ59歳にして出したこの6冊目の著書が,ロジャーズの名前を世に一挙に広めていきました。それまでロジャーズの本の読者は,どちらかと言えば専門家,心理療法家やカウンセラーたちから,せいぜい教師や福祉関係者にとどまっていたのですが,この本ではじめて,ロジャーズは一般の読者向けに書いたのです。心理療法家(カウンセラー)としての発見にとどまらず,1人の人間としての自分を開き,読者に語りかけるように書かれたこの著作には,発売後ただちに,読者から多くの反響が寄せられ,ロジャーズはたちまちにして,かつてなかったほどの脚光を浴びることになります。当時ペーパーバック版が普及し始めていたことも手伝って,数年のうちに60万部を突破したと言います。
カール・ロジャース 来談者中心療法
「来談者中心療法」は、ロジャーズ,C.Rにより提唱された心理療法で「クライエント中心療法」とも呼ばれます。
人間は誰しも、潜在能力や自己成長能力としての実現化傾向を持っていると考えがベースにあります。
それらを阻害する外的圧力を取り除きさえすれば、人は自然とよい状態に成長できるというのです。
つまり、不適応や精神疾患は、クライエント自身の評価やイメージのまとまりである自己概念の中に経験的自己をうまく取り込めず、否認や抑圧、または歪曲するといった自己不一致の状態に置かれることで生じると考えます。
したがって、来談者中心療法の目的は、症状の消去ではなく、自己概念と経験的自己の「自己一致」となります。
具体的には、「無条件の肯定的関心」をクライエントに寄せ、クライエントの感情的表現に対して「共感的に理解」し、表現された感情的内容をそのまま、もしくは要約して返すことによって伝えていきます。
これを「感情の反射」といいますが、これにより、明確には理解していなかった真の感情状態への気付きが可能となるのです。
カール・ロジャース 来談者中心療法 効果
来談者中心療法をベースとした一般的なカウンセリングには、以下の3つの効果があると考えられています。
カタルシス効果(catharsis effect)・・・徹底的な傾聴によって、不安・緊張・悲しみ・恐怖・抑うつ・怒り・憎しみ・焦燥感といったマイナスの感情を受け止めてもらえることで生じる内的世界の浄化の効果です。心の奥深くに抑圧して押し殺していた様々な激しい感情を、言語や態度として素直に外部に吐き出す事で、気分の安定や爽快感、リラックス感を得ることが出来ます。
バディ効果(body effect)・・・共感的理解によって、自分自身の内面的な苦しみや痛みを深く理解して貰う事ができ、カウンセラーとその悩みや苦しみを共有しているという仲間意識を持つことが出来る事によって生じる励ましや勇気付け、精神の安定の効果です。バディ効果は、個人カウンセリングでも得られますが、同じ悩みを抱えた人たちのグループカウンセリングでより一層強く得ることが出来ます。苦悩や不安、葛藤といったネガティブな感情は、孤独な環境で悩み続けるとぐるぐると循環してかえって悩みが深まる事がありますが、誰かに真剣に聞いてもらえる状況で言葉に出して感情を表現することで安心感と安楽間が生まれ苦悩や不安の重圧が緩和されます。
アウェアネス効果(awareness effect)・・・精神分析などで重視される『気付き・洞察』に当たるもので、今まで日常生活では気付く事のできなかった自分自身の苦悩の原因となっていた内面世界(無意識)の特徴や傾向や記憶についてカウンセリングのやり取りを通して新たな気付きを得ることです。精神分析理論の『抑圧』や『否定』の防衛機制によって示されるように、私達は自分自身の自尊心や良心を傷つけるような不快で受け容れ難い出来事を無意識の領域に抑圧する傾向がありますが、その不快な出来事にまつわる感情を抑圧し続けると精神症状や身体症状に転換されてしまう神経症のようなケースがあります。そういった場合には、無意識的な不快な感情や記憶に気付く為の段階的なカウンセリングが必要となってきますが、その記憶や感情に上手く気付く事が出来ればその問題を根本的に解決する契機となることがあります。無意識や深層心理に抑圧されて気付かない振りをしていた強烈な感情や情動に気付く事によって心理的な問題を克服し、本当の自己に接近できるというのが、アウェアネス効果です。
カール・ロジャース 名言
私は、あなたを愛してます。なぜならば、あなたがあなただから。
自分を素直に出せるなら、今のままの自分で十分です。
(出典 Fesh)
人は他の人から理解され、わかってもらえたと思った時、心にある変化が生じます。それが真に自分に向き合う力となり、自らを成長させていきます。
私が自分自身を受け入れて自分自身にやさしく耳を傾けることができる時、私はよりよく生きることができるようです。・・言いかえると、私が自分にあるがままの自分でいさせてあげることができる時、私はよりよく生きることができるのです。
(出典 長谷川満の親学講座)
Carl Ransom Rogers