一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.66 「マエストロ!」

「この世の中で一番美しいのは音楽よね」という台詞が胸に迫る
一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.66 「マエストロ!」

名門オーケストラの復活劇は
音楽の神秘を堪能できる佳作の仕上がり!

「音霊」(おとだま)と言う言葉がある。美しい音楽には霊が宿っていて、その音を聴くことによって生き物は浄化されたり、活性化されたり、美しさを増したりする。だから、美しい音楽を聴き続けるとその人自身も美しい人になる、と言われたりする。それは言霊(ことだま)も同じである。
音楽とダンスは太古からあって人々を夢中にさせてきた。
また、ある種の音というのは、強い力を持っていて、巨石を動かすこともできるらしい。ピラミッド建設の際、どうやってあの石を運んだのか?  坂本政道さんとバシャールの対談を読んで腰を抜かしたことがある。それは音に関わることで、改めて音の不思議を感じた。

本作で何度も登場するセリフ。
「この世の中で一番美しいのは音楽よね」。ああ、そうだったな。
私は改めて確認しつつ、前述したことを考えながら本作の深い部分を味わって観た。泣きながら。このセリフはこの映画を体現するセリフである。

不況で解散した名門オーケストラに再結成の話がくる。再就職先も決まらず皆喜んで集まってくるが、廃工場の練習場に、指揮者はガテン系大工風の小汚い謎の男。おまけに素人フルート奏者もなぜか参加していて、楽団員たちはとまどいまくる。しかし男の指導は的確。メンバーたちはしかたなく従うが、気持ちはまとまることがなくひどい音しか出ない・・・。

マエストロ!サブ■ 小

変わっていく楽団員たち
あまねのエピソードに涙する

西田敏行演じる破天荒な指揮者。漫画が原作だが、実際こんな服装、風貌の指揮者だったらたぶん誰もついていかないと思う。でも、確かな「耳」を持っていることで楽団員たちは彼を見直しついていく。ここらあたりの楽団員たちのそれぞれの意識と音の変化のエピソードが見所である。
中でも私が好きなのは、演奏に自信を持てない初老の楽団員が、駅のホームで指揮者に導かれるままにヴァイオリンを無心で弾くシーン。集まってきた人々は彼の捨て身の演奏に心打たれる。この楽団員を演じるのが大石吾朗。懐かしいな。随分年とってしまったけど、このシーンで素晴らしい演技を見せてくれる。

そして、一番感動させられたのが素人フルート奏者、あまねのエピソードだ。
彼女の父親は、阪神大震災で幼い彼女の目の前で助けられることなく命を落とす。その回想シーンが秀逸だ。目の前でまだ父親は生きているのに助けることができない。娘の悲しみや心残りはいかほどか。この説明なしの映像を綴るだけのシーンでボロボロ涙がこぼれた。演じるmiwaの天真爛漫、無垢なキャラもハマっていて、より、胸に来た。

マエストロ!■サブ⑤ 小

金粉が舞った大感動のラスト
「この世で一番美しい」のはやはり「音楽」だ!

さて、こういう音楽ものはやはり、ラストのコンサートシーンが大団円として重要なのだが、ご安心を。しっかり涙の大感動へと誘ってくれる。
バラバラだった楽団員の気持ちがひとつになり、素晴らしい演奏を魅せる。
でも、ちょっとラストは一筋縄ではいかない。それは内緒だけど、観終わって「ああ、音楽を演奏を堪能した。生き返った。やっぱり、この世で一番美しいのは音楽だった!」と私は思ったのであった。

演じる役者全て楽器を大特訓。吹き替えなしで自らが演奏するコンサートシーンではちゃんと動きが合っていて驚いた。迫真の演技と演奏は画面から音霊がキラキラ弾けて広がり、金粉が舞った。私はそれを全身で浴びた。

マエストロ!■サブ③  小

■監督 小林聖太郎
■原作 さそうあきら「マエストロ」(双葉社刊)漫画アクション連載
■脚本 奥寺佐渡子
■出演 松坂桃李 miwa 西田敏行 古館寛治 大石吾朗 濱田マリ 河井青葉 池田鉄洋 モロ師岡 松重豊
■129分
■配給 松竹=アスミック・エース
■1月31日(土)~全国ロードショー

大阪ステーションシティシネマほか全国ロードショー
(C)2015『マエストロ!』製作委員会 (C)さそうあきら/双葉社