一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.65 「パーソナル・ソング」

認知症の治療に効果的な“音楽療法”があるのを皆様ご存知でしたか?

認知症の人が甦る音楽療法
感動的な瞬間を見られる秀作ドキュメント

先日新聞に「2025年には日本の認知症の人数が700万人に」と大きく一面に出ていた。現在約400万人と言われる認知症。高齢者の4人に1人だ。

私は特別養護老人ホームで傾聴のボランティアをしているのだが、話が出来る人自体がほとんどおらず、大半は認知症が進んだお年寄りばかりだ。知り合いのお嬢さんは介護施設で働いているが、入所者はほとんど鬱だそうである。

この映画は感動的な瞬間を観ることができる、驚きのドキュメンタリーである。

ソーシャル・ワーカーのダンは、認知症、アルツハイマー、鬱の人々に若い頃好きだった音楽をiPodで聴かせる。すると、娘の名前も忘れてしまい、生きる気力など微塵も感じられなかった男性がカッと眼を見開き「この曲はルイ・アームストロングの曲だ。若い頃に良く聞いたよ」と若い頃の記憶を滔々としゃべり出す。体は動き出し、足でリズムを取り、ついには大きな声で歌いだすのだ! 別人のように豹変した男性の姿は奇跡のようだった。何人もが音楽を聴いて生き返る姿を映画は映し出す。

音楽療法。ずっと前にテレビで、脳死で植物人間になった息子に毎日毎日息子が好きだった曲を聴かせた母親のドキュメンタリーを観たことがあった。その息子は一生寝たきりと言われていたが、曲を聴くようになって指先が動き眼が動き、脳が反応するようになった。その番組のことを本作を観ながら思い出した。

音楽は壊れたり、萎縮した脳以外の部分に作用するらしい。それも、思い入れのある曲は。

本作の原題は「Alive Inside」(中は生きている)という。まさに、中、というか、心、魂は生きているのだ。

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人間は刺激が毎日必要な生き物
生ける屍にならないためにも日々感動を!

映画はこれほど効果のある音楽療法がなかなかスポンサーがつかず、施設に導入されない現状も描き出す。

私が心動かされたのは、現在の高齢者施設というのは20世紀の始めにアメリカで出来たらしいのだが、当時は精神病の施設が前身だったという。それまでは老人は家族と一緒に住み、家族が家で面倒を見て看取ったのだ。そして、今では施設は入所者が多くなり、管理するにはどうしても薬漬けにする必要がある。規則正しく薬を飲ませ、なんの刺激もない日々を繰り返させる。刺激のない日々を繰り返すだけだと人間は薬の副作用もあって、ほぼ鬱か認知症、生きる屍のようになるという。

怖ろしい話である。暗澹としてしまう。

以前読んだ整体の本で、「人間は痛点がたくさん体にあるので、なにもしない引きこもりや感動のない日々を送っていると必ず鬱になったり、調子が悪くなる。だから人に会ったり音楽を聴いたり買い物に行ったりと、刺激を絶えず自分に与え続けないといけない」と書いてあって、おおっと痛く納得したことがあった。これはそのまま管理された高齢者施設の現状に当てはまる。

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知り合いに教えて欲しい音楽療法
良いことは自分のところで止めない!

高齢者施設、認知症、鬱、なんだか、すべて政府に仕組まれた人類の破滅への道のような気がしてものすごい裏読みしてしまったのだが、あながち相違はないのかもしれない。

最初は全米で30の施設でしかこの音楽療法のセットを導入できなかったが、今では650の施設で実施されているそうである。それでも650・・・。

しかし、この映画を観たり、私のレビューを読んだ人たちが、認知症や鬱を抱える知り合いにこの音楽療法のことを教えてあげて欲しいと思う。良いことは自分のところで止めてはいけないのだ。この素晴らしい療法が広まることを切に願う。

さて、余談だが断食の神様、甲田光雄先生の著作に繰り返し書かれているが、認知症には宿便が大きく関わっているそうである。日ごろから宿便をためないことも認知症にならないために大切である。それには小食・断食なのである。

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■東京・公開中

■大阪・1月31日土曜から第七藝術劇場にて公開

■監督・脚本・製作 マイケル・ロサト=ベネット

■出演 ダン・コーエン オリバー・サックス ボビー・マクファーリン

■78分