中村うさぎさんコラム「どうせ一度の人生・・・なのか?」 part.3 〜病気とは本人の生き方の表現!?

前回に続き、ボディサイコロジスト、おのころ心平さんと対談をする中村うさぎさん。最後には中村さんからまさかの「病気って面白いじゃん!」の一言が……!?
中村うさぎさんコラム「どうせ一度の人生・・・なのか?」 part.3 〜病気とは本人の生き方の表現!?

病気の本当の意味って……!?

おのころ心平さんとの対話は、話せば話すほど広がりと深みを増していった。

ずっと「病気とは何か」について考えてきたおのころさんは、「病気には意味がある」と考える。
病気とは本人の生き方の表現でもあり、病気になることで人は「人生をデザインし直す」のではないか、というのだ。
病気というものをそんなふうな視点で見たことのなかった私にとって、それはかなり斬新な切り口だった。

「人って病気によって世界をデザインし直すんだと思うんです」

おのころさんのこの言葉は面白いし、かなり腑に落ちる。
確かに私も今回病気したことで、己の人生や世界の見方に新たな視点が加わったような気がするからだ。
私は今まで、ゴールもわからないままにがむしゃらに走る暴走馬のように生きてきたが、そんな人生に私の身体が突然ストップをかけたのだ。

足がねじ曲がって歩けなくなったのは、とても象徴的だと思う。
病気をしてからの私は、走っていた時には目に入らなかった風景が見えるようになった。
そういう意味では、病気は私の人生に新たなドアを開いてくれたのである。

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私という存在も、ある種の錯覚に過ぎないのかも

おのころさんは、よく「チャンネル」という言葉を使う。
たとえば、こんなふうに、だ。

「僕たちは無意識に感覚のチャンネルを調整して生きてますよね。視覚に集中してる時は聴覚のボリュームが絞られるし、聴覚メインの時は視覚のボリュームが落ちる。こういう感覚のボリュームによって、世界の解釈が変わってくると思うんです」

なるほど、「病気」は我々の感覚のチャンネルを切り替えるのだ。
今まで感じたことのなかった身体感覚を味わい、自分の身体観が劇的に変わる。
身体観が変わると、世界の見え方も解釈も変わるだろう。
今まで自分が固定チャンネルで生きてきたことに気づき、それが世界のすべてだと思い込んで来た視野の狭さにも気づかされる。
そうやって考えると、「病気」もなかなか捨てたものじゃない。
せっかく病気したんだから今までとは違う感覚で生きてみようか、という気になってくるではないか!

 

「たとえば夢を見ている時、五感は閉じている状態ですね。だから夢の中では、普段とは別のチャンネルで生きているんだと思います」
「ですね。夢の中の感覚とかロジックは、現実世界と全然違う。そうか、あれは別のチャンネルで世界を体験してると考えられるわけですね」
「夢と現実は違う、と考えがちですが、そもそも僕たちが『現実』と呼んでいるこの世界も、僕たちの脳が見ている夢なのかもしれませんしね」
「うんうん、それは私も常日頃から感じてることです。私たちの現実はすべて幻想なのだ、と」

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特定のチャンネルで見ている世界を、我々は「現実」と呼ぶ。
だが、チャンネルを変えて世界を見れば、我々の「現実」はまったく違って見えるだろう。
まるでフィリップ・K・ディックのSF小説のように、そこで初めて我々は「現実」だと信じていた世界が脳内の妄想の産物であったことに気づくのだ。
私という存在も、世界の存在も、我々の感覚も、ある種の錯覚に過ぎない。
「病気」によってチューニングがずれると、違う現実が目の前に広がる。

おのころさんは、私の「病気」観をすっかり変えてしまった。

めちゃくちゃネガティヴに捉えていた現象が、なんだかワクワクするような体験に思えてきたのだ。
いいなぁ、こういうの。
病気って面白いじゃん!
おのころさんのお仕事は、おそらくこうやって人々のチャンネルを変えることなのだろう。
病気で苦しんだり絶望したりする人たちに、新しい視点を与えてくれるのだ。

そんなわけで、大いに盛り上がった対談の最後に、私はおのころさんから思いもよらぬ言葉を聞くのだった。

次回に続く!

小説家・エッセイスト 中村うさぎ

 

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