中村うさぎさんコラム「どうせ一度の人生・・・なのか?」 part.39 〜人間に『神』は必要なのか?神の名のもとに起こる世の中の『倫理』を憂う〜

子どもの頃は普通に神様を信じていて、寝る前にお祈りなどしていたと仰る中村うさぎさん。成長するにつれて感じている、世の中の神への信仰心、神の名のもとに巻き起こる様々な問題。人々は自己の正当化や独善的な正義の押し売りとして「神」を濫用してはならないと熱く語ります。
中村うさぎさんコラム「どうせ一度の人生・・・なのか?」 part.39 〜人間に『神』は必要なのか?神の名のもとに起こる世の中の『倫理』を憂う〜

ご存知の方もいらっしゃるかもしれないが、
私はキリスト教的環境で育てられた。

小学校以外はキリスト教系の学校であったし、子どもの頃は普通に神様を信じていて、寝る前にお祈りなどしていたものである。
今にして思えば無邪気なものだ。

成長するにつれて次第に懐疑的になり、最終的には「神様? いや、いないでしょ」と思うようになったが、刷り込みとは恐ろしいもので、いまだに「神」の概念は私の中に厳然として存在している。
ただし、それは信仰の対象ではなく、あくまで「概念としての神」、すなわち私を監視し裁き続ける「倫理」の体現者としての「神」だ。

たとえば「嘘」や「欺瞞」に対する激しい罪悪感や嫌悪感は、幼い頃に埋め込まれた「神」に由来するものだろう。
できるだけ正直に生きたいと思っても、人間は無意識に自己欺瞞をやらかす生き物であるから、私の中の「神」は常にそれを見つけ出し暴こうとする。
まるで小姑のようにうるさい神だ。
マジで疲れる。

そもそも人間に「神」は必要なのだろうか?

そりゃまあ、太古の昔の人類には自然をコントロールする術がなかったから、作物の豊作や無病息災を神に祈願したくなる気持ちはよくわかるが、現代において神の果たす役割とは何だろう?
おそらく心の平安とか、生きる意味付けとか、そういうことなのだろうとは思うが、たとえば神の名のもとに聖戦と称して他国に攻撃を仕掛けたり、他者を批判したり抑圧したりする行為を正当化したりする人々を見ていると、つくづく神の功罪というものを考えずにいられない。
神への信仰心というものを全否定する気はないが、その使い方にはくれぐれも気をつけるべきだと思う。
自己の正当化や独善的な正義の押し売りに「神」を濫用してはならないのだ。
人類の陰惨な歴史がそれを証明しているというのに、いまだに理性的に「神」を内面化できない人々が少なからずいるという事実には驚かされる。

私の神は「倫理」を司るが、それはあくまで私個人の「倫理」であり、
他人に押し付ける気は毛頭ない。

この世に絶対的な正義などは存在しないのだ。
神も霊的存在も信じない私がこのコラムでスピリチュアル系の人と対話するのは、彼ら彼女らを批判したり論破するためではなく、むしろ私とは全然違う世界観で生きている人々の視点を理解したいと思うからだ。
だから、どうしても荒唐無稽と感じてしまうものは正直にそう言うし、信じられないけど興味深いと感じるものに関しては真っ向から否定しないように心がけている。
他人が大切にしているものを踏みにじるつもりはない。
そんな権利も資格も、私にはない。

ビートルズのジョージ・ハリスンの人生を綴ったスコセッシ監督の
ドキュメンタリー映画を観ていて、宗教についてあれこれ考えた。

ジョージ・ハリスンは「ハレ・クリシュナ」というカルト宗教の信者であった。
「ハレ・クリシュナ」はカルト教団として一部で悪名高い団体だが、ジョージを知る人々は口を揃えてその温厚で愛に満ちた人柄を褒めそやす。
現に彼が自身の信仰を歌った「マイ・スイート・ロード」は私ですら名曲だと思うし、飢餓と貧困に苦しむバングラデシュを救うために開いたチャリティコンサートも素晴らしい社会貢献だったと思う。

このように、たとえ評判の良くない宗教団体の信者であっても、結果的にその信仰が誰かを救ったり世界平和のために役立つのであれば、それは「神を正しく使っている人」だと私は感じるのである。
いかなる神を信じているかが問題なのではない、いかなる形で神を表現するかが問題なのだ。
その「表現」が暴力や差別であってはならない。
神と鋏は使いよう、なのだ。

 

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