一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.68 「みんなの学校」

学級崩壊が叫ばれる中、今や稀有となった人と密接に関わる学校を描いたドキュメント
一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.68  「みんなの学校」

誰もが居ていい、居場所がある学校
大阪の公立小学校の感動ミラクル

私が子どもの頃の小学校は、体の不自由な子も発達障害(当時はそうは言ってなかった)の子も同じ教室で学んでいた。養護学級というのはあったような気がするが、小児麻痺のゆみちゃんや、叫んで走りまくるアホのまなぶも、同じ教室だった。たぶん、その子たちの母親が普通学級で学ばせることを選んだのだと思う。

私はゆみちゃんのことを良く覚えている。字を書くのも話すことも歩くことも困難そうだった。ゆみちゃんは高学年になってたぶん養護学級に行ったんだと思う。そんな噂を聞いた記憶がうっすらあるから。私は何度かゆみちゃんの面倒を見た。ゆみちゃんの顔は今もはっきり覚えている。子どものくせに、おばさんみたいな老成した顔をしていた。私はゆみちゃんをあまり好きではなかった。

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本作は大阪市住吉区にある大空小学校という公立の小学校の1年を追ったものである。今の小学校は大変だと言うのを聞いたことがあるが、この小学校は発達障害などはもちろん、心理的に問題のある子たちも一緒の教室で学ぶ。だから授業中に床に寝転んで叫ぶ子がいたり、勝手に立って教室から出て行く子がいたりと、教師は度々授業を中断させられて新任の教師は大いに戸惑う。しかし、開校6年目というこの学校は、校長の木村泰子さんの方針と人間的魅力でそんな問題児も許容する稀有な小学校となっている。教師と子どもたちの攻防戦、そして子どもたちを見守る教師の努力と忍耐。もちろん、愛。

ここには他の小学校へ通えなくなった子どもたちが次々転校してくる。

その子たちを受け入れるのは教師や地域の人はもちろんだけど、生徒たちも受け入れるのだ。みんなが、新しく入って来た子に居場所を提供してくれる。ここで一緒に学ぼうよ、と。素晴らしい学校だと思うけど、教師たちはやっぱりかなり大変そう。毎日なんかある。でもでも、ここにはとっても深い人間同士の結びつきがあって、すごく楽しそうなんである。大変なのが、面白そうなのだ。退屈しないというか。

教えることは同時に学ぶこと
不器用でむき出しの子どもたちにもらい泣き

私も今、専門学校で講師をしているが、少し前は小学校で教えたいと思っていた。小学校は特別な感動があるような気がしていたのだが、感動もあるだろうけど、その前に倒れそうだ、と今の教育状況を見て判断した。まあ、専門学校でも同じなんだけど、人を教えるのは自分が教えられることで、講師生活15年以上になるが、学ぶことばかりである。

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さて、全編興味深いドキュメンタリーだが、私が一番感動させられたのはマサキという友達に暴力を振るった男の子のエピソードだ。彼は校長先生と「もう絶対暴力は振るわない」と約束して、殴った相手に謝りに行くのだが、相手は許してくれずいきなり殴りかかってくる。それに反撃せず耐えるマサキ。そして彼は保護者やみんなの前で「自分は暴力を振るわないことが目標です」と宣言するのだが、言ってるうちに泣けてきて泣きながら宣言する。これには私ももらい泣き。小さい子の必死の姿って不器用でむき出しなだけに泣かされてしまう。マサキ、成長したな、なのだ。たぶんまた暴力は振るうんだろうけど、何度でも宣言しろよ。

きっとそれぞれの観客が心に引っかかるエピソードがあると思う。

もうひとつ。カズキという自分を素直に出せない男の子の行動に対して校長先生が「ほんま分かりにくいなあの子」というセリフがあるのだが、はっとさせられた。子どもは分かりやすいと思いがちだが、そうでない子もたくさんいる。出している表面と心の中は全然違ったりする。特に最近はそういう子が増えている。子どもだと言っても中はものすごく複雑で屈折していたりするのだ。それを思い出させてくれたエピソードであり、セリフだった。

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自身の小学校時代を思い出す
それは自己を確立する重要な六年間だった

このレビューを書きながら、私はゆみちゃんのことをものすごく久しぶりに思い出したわけだが、思えば、小学生時代と言うのは私の基礎が作られ自己が確立した重要な時代で、今思うに、私の全てがあの時代にあったという気がしている。

あの頃の私は……いや、回顧はあとにしよう。

こんなふうに、すっかり忘れていた小学校時代の自分と自分の周りのことを思い出させてくれる一作でもある。それは、今の自分を知るためにも必要なことなのだと思う。

本作は、教育が崩壊したと言われる日本で、人と関わることって、情って、という教え諭すことを教えてくれる秀作ドキュメンタリーである。

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■監督 真鍋俊永

■出演 大空小学校の子どもたち 校長木村泰子

■106分

■東京 ユーロスペースにて上映中

■大阪 3月7日(土)~第七藝術劇場にてロードショー