女性の心を癒すちょっと過激な風習「うわなりうち」

こんな理にかなったストレス発散法が過去にあったなんて、昔の人の智恵に感服します。男女平等の現代ではありますが、是が非でも蘇らせてほしい【うわなりうち】。やっている間に、『どうして、この人を好きだったのか?ほしいなら、あなたにあげるよ』という気持ちになれるかも。

【謎の言葉「うわなり」とは?】

「うわなりうち」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? おそらく大多数の方が、「今まで一度も聞いたことがない」のではないかと思います。「うわなり」とは現在ではまったく使われなくなってしまった言葉であり、平安時代よりも昔に使われていたとされています。その当時は「宇波成」と表記されていたようです。漢字を見てもなんのことやらわからないと思いますが、比較的近代につけられた漢字もあり、そちらは「後妻」となります。すなわち、うわなりうちとは「後妻打」となります。

 

【古事記の昔からあった風習】

これは、「平安時代から江戸時代頃まで続いていた風習」だといわれています。一説によると、『古事記』の頃からあったのではないかといわれていますので、その歴史はかなり古いものといえるでしょう。そのため、「うわなり」という聞き慣れない言葉が使われているわけです。こちらは、一夫多妻であった時代に第2夫人以下を「うわなり」と呼んでいたことが由来となっているようです。一夫一婦制が成立にするにつれて、第2夫人という概念はなくなりましたが、その代わりに後妻を「うわなり」と呼ぶようになったようです。

では、後妻を「打つ」とはどういうことなのでしょう? これは「先妻が後妻に対して制裁を加える」ことを意味しています。現代では離婚は女性側から言い出すことも可能ですが、長い間、「離婚の決定権は男性が持っていました」。特に一夫一婦制が成立されてからは、男尊女卑の傾向が強まったこともあり、「三行半(みくだりはん)」という言葉も生まれました。これは、男性が離婚をするために、妻の親族に出した離別状のことであり、そこに書かれた内容が三行半だったことから来ています。

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【うわなりうちのルールとは?】

妻の意思とは関係なく離婚され、さらに後妻を迎えられた場合、妻の心中はかなり複雑なものになると想像できます。うわなりうちは、それを解消するための「智恵」ともいえるのです。そのために、単に後妻に制裁を加えるだけでなく、後年にはかなり詳しいルールが決められていました。

それは、「うわなりうちは、離婚後1ヶ月以内に後妻を迎えた場合のみ適用される」「うわなりうちの日時は、使者を立てて先方に前もって通告する」「うわなりうちでは刃物は利用できない」「うわなりうちでは人間を攻撃してはならず、壊すのは家具や物品などに限る」といったようなものです。ただし、女性でさえあればうわなりうちに参加する人数は制限がなかったために、数十人に及ぶ助っ人を双方用意して派手な攻防戦が行われたために、時として「死者やけが人が出たりした」こともあったそうです。