『カオスからコスモスを引き出す実践的養生法論~其の弐・いま話題のオートファジーについて』

もしもオートファジーという機能がなければ、真核生物は飢餓時にはすぐに死んでしまい、子孫を生むこともできずに、サナギが成虫になることもできずに、病気を予防できずに、免疫を維持することもできません。

 

「オートファジーはリソソームで分解する」

オートファジーがクリーニングをおこなう場所は、細胞内の核と核膜と細胞内小器官を除いた細胞質と呼ばれる場所です。
この細胞質に浮かんだ80億個のタンパク分子が環境ストレスで変性タンパク質になりやすいのです。

また細胞内小器官という細胞質にただよう袋状構造のうちのミトコンドリアなどが変異した場合も、オートファジーはこの変異ミトコンドリアを見つけて分解します。

この変異ミトコンドリアのみを選択的に分解するタイプのオートファジーは、マイトファジーなどと呼ばれます。
さらにヒートショックプロテインという分子を利用してせっかく作った正常なタンパク分子を間違えてうっかり分解してしまわないように、
変性タンパク質だけをよくよく吟味して仕分けて、本当に使えないゴミかどうかを識別して、

本当に使えないゴミと判断したものだけを処理するタイプのオートファジーはシャペロン介在性オートファジーと呼ばれます。

そして、ここがオートファジーのカナメなのですが、このように飢餓応答型マクロオートファジーや、マイトファジー、シャペロン介在性オートファジーによって運ばれた細胞内のゴミと呼べる変性タンパク質や細胞内小器官は、最終的にリソソームという小胞と融合し、リソソーム内の分解酵素によって分解されます。

このリソソームという小胞が自分の膜を内側にくびれさせて、少しだけ細胞質内の分子を取りこみながら、自分のリソソーム膜をリニューアルする仕組みは、ミクロオートファジーと呼ばれます。

リソソームはリソソームで自分の膜の鮮度を保っているのです。

ということで、オートファジーには、①飢餓応答型マクロオートファジー、②マイトファジー、③シャペロン介在性オートファジー、④ミクロオートファジーの4つのタイプものオートファジーがあることが、これでお分かり頂けたでしょうか。

 

「オートファジーと感染症やパーキンソン病や癌について」

大隅教授は最初に酵母のオートファジー現象を確定するために、5000個体もの酵母からようやく実験モデルとなるオートファジー不能個体を発見しました。

大隅教授や、大隅教授を師と仰ぐ大隅スクールのお弟子さんたち研究者の気が遠くなるような顕微鏡を5000回ものぞき込むような地道な研究がスタートとなり、今や日本は世界のオートファジー研究をリードするメッカとなっています。

オートファジーは細胞内に侵入した細菌を取りこんで分解してしまいます。ですから、このオートファジーの細胞内免疫ともいえる機能を活性化することで感染症に有効な対抗が見込めると予測されています。

またパーキンソン病の一種は脳の神経細胞に変異ミトコンドリアが蓄積した結果、生じます。
このタイプのパーキンソン病は脳神経細胞内で変異ミトンドリアを分解するマイトファジーがうまくいかないことが原因とされます。

つまりあるタイプのパーキンソン病はマイトファジー不全が原因なのです。であるのなら、脳神経細胞内のオートファジー、特にマイトファジーを活性化することができれば、ある種のタイプのパーキンソン病の予防や治療に有効と予測が立ちます。

ガン細胞内のオートファジーは亢進しているので、これを抑制し、通常細胞におけるオートファジーの正常化はよく細胞内をクリーンに保ち、ガン化を阻止するのでは?

肝細胞に関してはオートファジーの抗腫瘍効果はほぼ確定しているとのことです。

以上、ざっとオートファジーの概略をなぞりましたが、このようにオートファジーは真核生物の発生、分化、変態、病変、寿命、免疫、アポトーシスと、生命の生老病死と健康維持に密接につながった生理機構なのです。

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「オートファジーはコスモスな命の恩人」

もしもオートファジーという機能がなければ、真核生物は飢餓時にはすぐに死んでしまい、子孫を生むこともできずに、サナギが成虫になることもできずに、病気を予防できずに、免疫を維持することもできません。

生体宇宙はカオスだが、そのなかには命を維持する整然としたコスモスな流れがある。

まさにオートファジーとは真核生物の命を維持するコスモスな流れ、オートファジーは命の恩人だったのです。

 

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