ミトコンドリアと乳酸のちょっと味な関係について~『サルでもわかるハリィー先生とトリ子さんのアヴァンギャルドな東洋医学講座』~第14話

自分流に言い直すと『ハリィーにとってはどんな定説も仮説も所詮はヒトの産物だ。ミトコンドリアこそが師であり友である』になりそうだね。

「は~い、トリ子さんのお見立て通り、乳酸害悪説は、もはや過去の遺物もいいとこ、定説に間違いあり、の良き標本と化しているのです!」

「って、ことは、乳酸に対する見方がすでに、180度、パラダイムシフトしてるってこと?」

「イェッサー、まさに乳酸の汚名は返上されて、最新の生理学では乳酸は重要な分子としてクローズアップされて、マウスやウマやヒトを使って新たな知見が続々と出てきているんだよ」

「ここまで、前振り、長過ぎじゃね?」

「うん、ちょっとテンポが遅すぎかも。だって、ゆっくり噛み砕いてって言ったから」

「せんせー、そろそろ、ペースを上げてもいいわよ(笑)」

「はいはい、ではサクッといきましょう! 夏に食べて美味しい冷たく冷やしたヨーグルトのなかの乳酸菌が産生する乳酸という分子は、ヒトの舌にさわやかな酸味をもたらしますが、腸内に届き腸管内壁から体内に吸収されて、血行性に9万6000キロメートルの血流に運ばれて60兆個の細胞内のミトコンドリアに配送されると、ミトコンドリアの栄養源になってミトコンドリアを元気にします。それだけでなく常時、細胞内の解糖系というエネルギー産生機構で発生する乳酸分子もまた細胞内のミトコンドリアに取りこまれることでミトコンドリアを元気にしています。つまり乳酸という分子はミトコンドリアの活動になくてはならない重要な分子、宝のような分子です」

86435191

 

「うわっ、せんせーが、一気にキモを言い切った! 早っ(笑)でも、先生はサラッと言い切ってるけど、コレってかなり衝撃的よね。だって乳酸という分子くらいワルモノ感満載な分子はこれまで無かったもの。その乳酸が宝のような貴重な分子だって言うんだから、ビックリよね!でも、まだまだ乳酸はワルモノだって、一般の99%の人々は信じちゃってるわね?」

「まあ、これだけ乳酸=ワルモノ、のイメージが固定化していると、おいそれと乳酸の汚名は返上されないだろうね。古い文献には必ず、乳酸は細胞内に生じた凝りの原因分子、という記述があるしね。でもそもそも凝りが何なのか? はそんなに単純な話ではないし、乳酸が凝りの原因分子という仮説はあくまで仮説で、これもそのうち崩れていくだろうね」

「ハリィー先生の持論は「凝りは変性タンパク質」ってのは、わたしだって知ってるわよ。それで、今回の講義で一番重要な事は、ミトコンドリアにとっては乳酸は敵でもワルモノでもなくて、乳酸を利用してミトコンドリアは元気いっぱいに活動してくれてるってことよね?」

「短距離走やウェイトトレーニングなんかの強度負荷のかかる運動で使う筋肉の速筋という筋肉で発生した乳酸は、遅筋や心筋のミトコンドリアに運ばれることで、そのミトコンドリアの栄養源になっていることがわかっている。細胞内に通常生理で発生する分子は無駄なく使い切る。生命にはこうした『もったいない精神』がしっかり宿っているという好例だね」

「うふふ、わたしのマイブームはこの豆乳ヨーグルト。牛乳ヨーグルトも好きだけど、311後にプチブームになっているこの豆乳ヨーグルトが大好き。トッピングの定番はレーズンとバナナ。それにメープルシロップを垂らすと、わたしのスペシャルスイーツの完成よ」

「えっ、なんでトリ子さん、俺のお気に入りの食べ方知ってるの? そこにさらにブルーベリージャムを加えてもイイ感じだよ」

「あ~、冷たくて酸っぱくて甘くて美味しいわ! これでミトコンドリアも元気いっぱいになるんだ。まるでミトコンドリアと私は一心同体よね」

「いや、まったくもって、その通り。わたしたちは常にミトコンドリアと一心同体の融合共生体なんだね。トリ子さん、江戸期の思想家の三浦梅園という人がこんな事を言ってるよ。『聖人と称し仏陀と号するも、もとより人なれば、畢竟我講求討論の友にして、師とするものは天地なり』と」

「意訳すると『どんな偉い人も所詮は人だ。天地に勝る友や師はいない』かしら?」

「うん、自分流に言い直すと『ハリィーにとってはどんな定説も仮説も所詮はヒトの産物だ。ミトコンドリアこそが師であり友である』になりそうだね」

「さっすが、ハリィー先生、ミトコンドリアフリーク、ここにあり!」

 

《今村 光臣 さんの記事一覧はコチラ》
https://www.el-aura.com/writer/imamuramitsuomi/?c=88528