ミトコンドリアを正しく理解してミトコンドリア数を増やそう~ 『サルでもわかるハリィー先生とトリ子さんのアヴァンギャルドな東洋医学講座』 第12話~

キモはとにかくミトコンドリアを増やそう。そのためには一酸化窒素やグレリンの分泌を高めよう。

「ダハハ、大丈夫だよ、即効で結論に到達するのが、本シリーズの見せ場だから。でね、こういった体内に自然に発生する害毒分子は、進化のなかでちゃんと消去できるシステムが出来上がっているの。そうじゃなければとっくに地球の生命体はこれらの活性酸素をはじめとする有害分子で死に絶えている」

「だよね~。わたしもなんかおかしいな、といつも思っていたわ。とにかく活性酸素は悪の親玉みたいに言うじゃない。活性酸素がもとで細胞の酸化が引き起こされる、これにより老化が進行するから、活性酸素による酸化を防ぐために抗酸化物質を含むナニナニを飲みなさい、食べなさい、の大合唱だもん。もうアンチエイジングに抗酸化、の合い言葉には、ほとほとウンザリしていたところよ」

「うん、まったく。なんでも活性酸素の原因となる余計な電子がミトコンドリア内から漏れ出す現象、これをミトコンドリアの電子リーク(漏電)なんて言うらしい。このミトコンドリアからの電子の漏出がキッカケになって、活性酸素が細胞内に増大して、そのことでDNAが傷つき、細胞膜が損傷するというのが通説。でもミトコンドリアにはこうした活性酸素が増えたミトコンドリアだけを消去してしまうミトファジーという自治的な浄化機構があるし、ミトコンドリア・ネットワーク全体が酸化状態になれば、ミトコンドリアが主導するアポトーシス誘導によって細胞をまるごとを消去するシステムも備わっている」

「ということは、基本的にミトコンドリアが原因となる酸化現象は発生しない、という認識でいいのね?」

「ミトコンドリアの基礎研究をされている第一線の学者たちに言わせれば、加齢疾患においてミトコンドリアの目だった変異は認められないそうだよ」

「それじゃあ、なんで常にミトコンドリアの機能不全が病気の原因になる、という通説がマンネリに支持されるのかしら?」

346153751

 

「それはね、たぶん、非常にわかりやすい綺麗な論理が描けるからなんだよ。ミトコンドリアはヒトが必要とするATPの95%を産生する。そのミトコンドリアにもしも不具合が生じると、このミトコンドリアが産生するATPの総量が減る。ATPの総量が減れば人体の活動に必要なエネルギーが供給できない。そうなると身体は元気がなくなって病気になる。こんな誰でもわかるわかりやすいシナリオを描くのにミトコンドリアはピッタリとはまるんだね」

「でも、実際の病理現象としてはミトコンドリアが原因という証拠はどこにもない。それじゃあ、真の原因はどこにあるの?」

「ガン細胞をみればわかるけど、最終的には細胞核DNAの変異がガン化の原因なんだね。だからやはりパーツとしてのミトコンドリアが主因ではなく、ホスト(宿主)本体の異変が病気の真の原因ということになる」

「うん、それはなんとなくわかるんだけど、でもミトコンドリアを元気にしておく、ミトコンドリアの数を確保しておく、というのはやっぱり病気の予防にはなるんでしょ?」

「さっきも言ったけど、ミトコンドリアの電子リークの原因はミトコンドリアの機能不全であることは確か。ミトコンドリア内の呼吸酵素複合体という酵素が正常に機能しないと、電子の流れが滞って、溜まった電子が漏れ出してしまう。ということは、電子の漏れ出すことの原因は酵素反応の停滞なんだよ」

「あっ、そういうことなのね! 悪さをしているのは電子だけど、その電子の漏れを引き起こしているのはミトコンドリア内の酵素の失調だったのね!」

「生理現象はすべて酵素反応により起こる、というのは生理学の常識。だから酵素反応をうまく誘導できれば、身体のなかにへんな事態は起こらない。ミトコンドリア内には活性酸素を消去する抗酸化酵素もしっかりと装備されているから、通常はこの抗酸化酵素がミトコンドリア内の活性酸素の害を防いでいる。あえてアンチエイジングに励まなくても、もともとアンチエイジングな機能がミトコンドリアや細胞には備わっているんだよ」

「なるほどね。なんだかアンチエイジングなマーケティングにわたしたちは踊らされているみたい。そんな気がしてきたわ」