ミトコンドリアの愛に包まれて~『サルでもわかるハリィー先生とトリ子さんのアヴァンギャルドな東洋医学講座』 第11話

わたしたちユーカリアはミトコンドリアの生み出す愛の分子ATPに支えられ包まれたミトコンドリア・グレイテス・ファミリーなんだよ

「良く知ってるじゃない。そう、ミトコンドリアの祖先はバクテリアだったんだよ。正確にはαプロテオバクテリアという名前のバクテリアだったと言われている。で、このαプロテオバクテリアが何らかの理由で他の原始生命体の体内に取りこまれた事がキッカケで、今の自分達につながるひとすじの生命界ができていったんだ」

「うんっ? なによ、その『今の自分達につながるひとすじの生命界』って?」

「あっ、あえて自分の言葉で言ってみたけど、かえってちょっとわかりにくい表現だったかな。うん、生物学を語る時に専門用語を多用すると、やたらと難しく感じるから、なるべくわかりやすい自分なりの表現に努めたほうがいいんだけど、どうしても専門用語を使わざるをえない場合もある。この『今の自分達につながるひとすじの生命界』は専門用語ではユーカリア(真核生物)と呼びます」

「へぇ~、ユーカリア、真核生物か。やっぱり、こっちはもっとわかりにくい(笑)。それじゃあ、つまり、私達はその真核生物の末裔ってことかしら?」

「うん、ミトコンドリアが細胞内に共生して、二つのタイプの生命体が合体したハイブリッドタイプの原始真核生物の末裔、最終バッターがわたしたち人類ということになる」

「う~ん、かなり、ヤバイ、やっぱり、なんだか今回は難しそうね(笑)」

「ダハハ、トリ子さん、こんなところで、音を上げていたんじゃあ、先へ進めないよ(笑)。それじゃあ、ザックリといきましょう! ようはね、今から20億年前に今の自分達の細胞と同じスタイルの生き物が誕生したんだね。この最初のユーカリア・モデルの派生型が、現在の地球の多様な生命系を支えている。そこに生えている草も、大空を舞うコンドルも、大海のクジラも、地球生命種3000万種はみんなユーカリアでその細胞にミトコンドリアが共生しているってわけ」

「あっ、そうか! わたしたちユーカリア界は別名をミトコンドリア界と言い換えてもいいのね?」

「まったく、トリ子さんは勘が良い。まさにその通り。わたしたちユーカリア界は別名をミトコンドリア界と言い換えることが可能なんだ。ミトコンドリアが20億年前に原始真核生物に共生しなかったら、いまのわたしたちはここに存在しない。なぜなら酸素濃度の上がった地球で生きるには、酸素を電子受容体としてATPを産生できるミトコンドリアがいなければ即死してしまうからね。実は酸素という分子は非常に反応性が高い分子で、嫌気性バクテリアという酸素を嫌うバクテリアにとっては毒以外のナニモノでもないんだね。その毒でしかなかった酸素を吸着してATPを生み出すミトコンドリアの祖先の出現はある意味、奇跡だったんだ」

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「20億年前に、奇跡が起こっていたのね。その酸素を嫌う原始生命体とミトコンドリアの祖先のαプロテオバクテリアが共生融合を開始しなかったら、今のわたしたちはこの地球上には存在しなかった。ミトコンドリアの愛がわたしたちをここまで連れてきてくれたのね」

「おっと、一気に本稿のキモ、結論にいったね(笑)。地球に目に良くつくそれらしい多細胞生物が出現しだしたのは、だいたい7億年前頃からと言われている。よく知られているカンブリア爆発といういきなり現生生物種につながる38門の生命種が火を吹いたのが5億4000万年前のこと。やがて最初の脊椎動物となる小さなミロクンミンギアやハイコウイクチスという魚の祖先が生まれて、デボン紀後期になってイクチオステガの初期両生類がついに上陸し、そののちに白亜紀に恐竜たちの全盛を迎え、その足もとではモルガヌコドンというネズミのような原始哺乳類をスタートに、哺乳類の後発種である人類は5万年前にようやく東アフリカを旅だって、五大陸へとパンデミックに拡散し、現生人類の今に至った。そのすべての生命史のなかで、常にその活動を支えてきたのがミトコンドリアによるATP産生だったんだ」

「わかった! ATPは愛の分子ね! だって、わたし、いつもマッサージを受けると、イライラしていた気持ちが消えて、なんだかとっても優しい気持ちになるの。そう、何だかわからないけど、愛に包まれるみたいに。それは、マッサージによって数が増えたミトコンドリアが産生してくれるATPのせいだったのね。だからミトコンドリアは愛の分子ATPを生み出す愛の使者なのね!」

「まったくその通り。ミトコンドリアはここ20億年のあいだ、ずっとわたしたちをその愛の分子ATPで支え導いた愛の伝道師だったんだね。わたしたちユーカリアはミトコンドリアの生み出す愛の分子ATPに支えられ包まれたミトコンドリア・グレイテス・ファミリーなんだよ」

「ワオッ、マイケルの『ウイ アー ザ ワールド』の世界じゃない。ウイ アー ザ ミトコンドリア ワールド♪ ウイ アー ザ ミトコンドリア チルドレン♪」

「壮大なるミトコンドリアのサーガ(叙事詩)が、今、始まる!」

「いよっ、待ってました! の、ミトコン屋(笑)」

 

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