『サルでもわかるハリィー先生のアヴァンギャルドな東洋医学講座』第八話.~レッツ・グルーミング!~

ザックリと言うと、按摩は中国系、マッサージはヨーロッパ系、指圧は日本系、みたいにカテゴライズできるね。ようは発祥地ということだけど。でも、一般的には自分たち治療師がこういった手技をおこなう場合は、この3つの手技のすべてが融合したようなその治療師独自のやり方になるね

「うん、やっぱり、日本人だし、メイドインジャパンでクールジャパンな手技を日本人であるワタシがやらなくて、誰がやる、の気概だよね。実際に日本人くらい繊細な手技の指圧術ができる民族はいないしね。もちろん、一番、ダイレクトに生命の息吹を感得できる術だから指圧を続けているんだけど」

「その先生の指圧はもう最高に気持ちイイのは、リピーターである私は十分に承知しているんだけど、なんだか世間的にはまだまだ指圧なんかは未開の医療と思われていて、ちょっと歯がゆいわね」

「まあね、自分も治療師になって、それはずっと感じてきたことだね。でも、なんといってもトリ子さんも言ってくれているように、理屈よりも先に体感がモノを言う世界だから、キモチイイを体感した患者さんにこれまで支えられてきたんだよ」

「その指圧の気持ち良さの原点をさかのぼると、どうもサルのグルーミングに行き着くんじゃないか?というのが本稿のキモかしら?」

「おっ、トリ子さん、キモ振り、サンキュー! そうなんだよね。動物園のサル山で、これでもかっていうくらいにだらしない格好でノミ取り、つまりグルーミングをしてもらってるサルを見てると、こっちまで何だかチカラが抜けてくるじゃん(笑)。あの瞬間、グルーミングをするサルと、されているサルの両方のサルの体内にオキシトシンが分泌されて、連鎖的に鎮痛&快感ホルモンのβエンドルフィンが分泌されているんだよ」

「へぇ~、グルーミング中のサルの両方にね。それじゃあ、仕事中の先生の体内はいつもオキシトシン祭りよね。ちょっと、ズルイじゃない(笑)。でも、あのグルーミングをし合うサルの姿を見てると、平和ってあんな姿のことだと思えてくるから不思議よね」

「まったく、その通りだね。自分たち人類は国家なんてものを作り、文明なんて大それたことをしでかしたんだけど、むかしむかしのそのむかしは、あの動物園のサル山のサルたちとたいして違いはないサルの一種だったんだからね。それがどういうわけか脳が肥大して、人間だけがこうした科学技術文明を築くことができた。それもこれも700万年間、営々とグルーミングをし続けたお蔭でホモサピエンスの体内がオキシトシンで満たされて、結果として認知機能が大幅に向上したから達成できた所業と言えるね」

「えっ、なんか、先生、今、かなり強引にもっていったよね(笑)。でもオキシトシンが分泌されなければ、陣痛促進もなければ、射乳反射もないから、子供を産み育てることすらできない。よってヒトという種が存続できない。オキシトシンが分泌されなければ母子の絆も形成できない。オキシトシンが分泌されなければ傷の修復もできないし、認知機能もうまくいかないし、なんでもSEXすらする気も起きないというじゃない。だからオキシトシンがあるからこそ人類はここまでやってこれた、というのはあながちウソじゃないわよね」

「ほんと、ほんと、その通りだよ! そして、そのオキシトシンをうまく分泌誘導できる医療が鍼灸指圧なんだよね。

『指圧の心 母心 押せばオキシトシンの泉湧く』と言い換えてもいいくらいだね。

さあ、今日もトリ子さんの身体をみっちりと指圧して、オキシトシン祭りを開催しようか」

「あ~、嬉しい。先生が有資格者でほんと良かったわ。でもサルのグルーミングの習性が今の今まで続いていて、それが指圧という術にソフィスティケートされているって、とっても凄いことよね」

「サルでもわかっていたグルーミングの大切さを今に伝える鍼灸指圧。おっ、うまくまとまったところで本稿は終了です」

「先生、次回の予定は?」

「そうだねぇ、鍼灸指圧の治効機序に関与するリガンド(信号分子)に焦点を当ててみようかと」

「先生の得意分野ね。次回も楽しみだわ!」

 

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