『サルでもわかるハリィー先生のアヴァンギャルドな東洋医学講座』第七話.~ラブ&ピースで痛いの痛いの飛んでけぇ~

このβエンドルフィンというホルモンは1975年にまずは動物のブタの脳から発見されたそうだよ。それから少し経ってヒトを含むほとんどの動物がもつホルモンであることがわかったんだ。

 

『ハリィー先生とトリ子さんのサルでもわかるイントロ談義』

トリ子さん(以下 ト)
「ねぇ、先生、ここんとこワタシね、事務仕事に忙殺されて、パソコンに向かう時間が長かったから、眼の奥が重くて、なんだか頭痛がなかなか取れないのよ」

ハリィー先生(以下 ハ)
「うん、ここの眼に通じる首スジのツボなんかも、今日はスゴク凝ってるしね。でも、そんなのは簡単に治るよ。たぶん、今日ここで治療を終えて、帰る頃には、その悩みの頭痛も、眼の疲れもスッキリ治って、気分爽快になってるから、楽しみにしててよ」

「あ~、嬉しい。でも、まだ頭が少し痛いけど、さっきより、もうだいぶ良くなってきたっ! ほんと、指圧って即効性があるわよね」

「うん、指圧のスゴイところは『シンダンソクチリョウ』なんだね。漢字で書くと『診断即治療』ね。つまりこの指で、一押し、一押し、と押していくその1回1回の指の沈み、ワンクッションのなかで、診断と治療の二つのことが常に同時におこなわれているんだよ。だからこうやってファーストタッチから進んで、ほんの少しの治療のあいだ触っただけでも、すでにある程度の診断がなされて、ある程度の治療ができているってわけ」

「へぇ~、診断がそのまま治療になるのね! なんとも合理的というか、今風に言えば、クールよね!」

「ハハハ、『指圧こそがキング・オブ・クールジャパン』なんてね。あのね、トリ子さん、自分が以前に北里大学の東洋医学研究所の東洋医学史の先生に聞いたハナシでは、紀元前の鍼灸指圧のスタイルはね、まず按摩マッサージ指圧の要領で全身をくまなくシンダンソクチリョウをして、それで特に凝りが強い部位に鍼をして、冷えがキツイ場所には灸をしたんだって」

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「ふむふむ、診断と治療を兼ねてまず全身を触る。それからおもむろに鍼や灸をする。これってまるで今のハリィー先生の治療スタイルそのものよね?」

「そう。それで、その北里大学の先生の講義があまりに面白かったんで、講義終了後にその先生が帰るところをつかまえて、お礼の挨拶をして、少し話しこんだんだけど。その時に『自分は紀元前の治療をやってます』って言ったら、その先生も大いに共感してくれて、あの先生は今も元気にしてるかな? アタシがこうやって今はトリ子さん相手に東洋医学の啓蒙講義を開設しているなんて知ったら、ちょっとビックリするだろうね」

「ビックリというか喜んでくれるんじゃない? でも、ある意味、2000年前の治療スタイルが東洋医学の世界では、そのまま今でも定番で通用するってのも、なんだか不思議よね」

「ほんと、そうだね。でも、2000年前の人間と現代の人間が身体的にそれほど大差がないのはそんなに驚くことではないけど、例えばサルと人間の内臓はよく見比べないと、どっちがどっちかわからない程に似てるって言うよ」

「えっ、ほんとう?」

「うん、それもそのはず例えばチンパンジーとヒトのDNAの誤差なんか、たったの0.5%だもん」

「ふぅ~ん、でも動物園の檻の向こうとコッチでは、随分と差がある気がするんだけど」

「フフフ、たしかにまだかなり差があるね。この2種の隔たりは、そのたった0.5%のDNAの誤差が檻の垣根を生んでるんだけど、あのチンパンジーの檻のなかの一匹がいつか宇宙から飛来した未知のウイルスに罹患して、急速に進化する突然変異の遺伝子ツールを水平遺伝にそのゲノムに組み込まれて、0.5%の誤差を穴埋めして人間以上の認知機能を獲得して、ついに映画『猿の惑星』の新シリーズのシーザーみたいに、他のサルたちを引き連れて檻を越えてコッチの人間界に一斉に逆襲してきたらどうする?」

「どうするって、イヤに決まってるじゃない。もう、やだぁ~、先生、ちょっとリアル過ぎて怖いわよ」

「ダハハ、ごめん、ごめん、でもサルとヒトの差は、遠くて近い。サルは東洋医学の故郷だもん」

「ええっ? サルは東洋医学のふるさと? また、なんだか意味不明で摩訶不思議なマクラ談義になってきたけど、こんなんで今回の講義は大丈夫なの、先生?」

「もっち、ダイジョー、ブイ(笑)では、題して『ラブ&ピースで痛いの痛いの飛んでけぇ~』の講義の、はじまり、はじまり~!」