人生の4つの目的とアーユルヴェーダ

アーユルヴェーダはワーク・ライフ・バランスに関して解を与えてくれます。アーユルヴェーダは体のなかの自然のバランスをとる方法や環境との調和をとる方法を教えてくれます。

ヴェーダ哲学によると、人間の人生の目的は、ダルマ(社会的な義務を果たすとともに精神的・宗教的な教えを学び実践すること)、アルタ(義務として仕事をし、富を得ること)、カーマ(節度ある態度で感覚器官を満足させること)、モクシャ(解脱)の4つにあると考えられています。4つの人生の目的を達成しようにも、健康でなければ元も子もありません。そのためにアーユルヴェーダがあります。

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ヴェーダが説く人生の4つの目的

この「人生の4つの目的」はインドの考え方ですが、より良い人生を生きるという上では、どの国の人であっても考慮に値する考え方でしょう。日本はヴェーダの考え方から派生した仏教の国。「人生の4つの目的」が無縁であるはずがありません。しかし、現代日本人の生き方はヴェーダが説く人生の目的から逸脱しているように見えます。より良い自分の人生を考えていない人が多いようにみえるのです。ダルマを達成できる人はいったいどのくらいいるでしょうか。男女を問わず自分をすりへらして汲汲と働いている人がなんと多いことか。働く人が自分の体と心をすりへらしていては、社会的義務を果たしたり、精神的・宗教的な教えを学び実践するどころではありません。

現代人はアルタには一生懸命です。それも自分のためだけのアルタです。元来、経済的豊かさが大切なのは、そのほうが精神的・宗教的勉学を励むだけの余裕が生まれるからです。そこの点が抜け落ちているようにみえます。カーマは勘違いされているようです。快楽を無限に求めるのではなく、「節度ある態度で感覚器官を満足させること」なんですね。現代は節度ない快楽の追求が横行しているようです。こうした生き方の結果、モクシャは望みようがありません。モクシャとは輪廻から解放されることです。

 

自然から逸脱した現代人

現代の生活は自然の暮らしの法則をしばしば逸脱しています。日本の労働者の長時間労働は世界のなかで群を抜いています。一日の大半を人工の光とエアコンの風のもとで過ごしています。仕事が次々と押し寄せ、睡眠時間を削って働き続けています。欧米でアーユルヴェーダ・コンサルテーションを行っているドクター・パルタップによると、日本ほど就寝時間が遅い国はないそうです。

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長時間労働を続けた結果、心をすりへらし、心の病になる人は社会問題になるほどたくさんいます。日本のうつ病患者数は100万人を超えていると推定されています。とくに20代と30代の罹患率が多く、仕事による疲弊と関係していると考えられます。こうした現実を受けて、国は企業に対して従業員のストレスチェックを義務づけました。

さらに、広告や騒音や化学物質で汚染された食べ物などが洪水のように押し寄せてきます。今やきれいな水や空気や食べ物は珍しいものとなり、環境はますます毒素で汚れてきています。私たちの暮らし方は環境にとってよくないだけでなく、健康を害する方向に向かっています。朝食を食べずに職場に急ぎ、昼食はファーストフードで済ませ、夕食も出来あいもので済ませる人は珍しくありません。眠気を抑えるためにコーヒーを何杯も飲み、お酒で「リラックス」し、その結果、不調になったらクスリに頼る生活を繰り返している人がなんと多いことでしょう。

(tired person)

物質的に満たされている現代において、疲弊しきっているのはどうしてでしょうか。私たちはいつの間にか、人間が自然の一部であることを忘れ、基本的な生きる目的を失っていることに大きな原因があるのではないでしょうか。

私たちは自然の暮らしのリズムを忘れてしまいました。その結果、自分でも理由がわからぬまま、心は空虚に襲われ、体が不調に見舞われる人が増えているのです。体と心は自然のリズムとともに動いています。ホルモンの働きも自然のリズムを伴っているし、脳の働きも太陽や月の光の影響を受けます。自然との調和を失い、自然のリズムに反する習慣を身に着けた結果、心と体の均衡を失ってしまいました。よく眠ることができず、リラックスもできず、集中力も保てないようない人が増えているのです。暮らし方の均衡の崩れは依存症や病気という形に現れています。