☆簡単本格糠床講座シリーズ4〜野菜によって糠漬け難易度が変わる

「糠漬けといえば、胡瓜に茄子」と言われる方は多いかと思いますが、実はこの2つの野菜、糠漬け難易度高レベルの食材なのです。 どちらも水分が多く、茄子に至っては綺麗に仕上げるのが難しい食材です。

・野菜によって糠漬け難易度が変わる

この連載ではある意味、耳にタコができるほど煩く書いてきております「水分、塩分濃度」。
このバランスによって、糠床の菌の生成が変わり、その結果味も香りも全てにおいて変化していく、という事を書かせて頂いております。

そしてこのバランスというのは、まさに諸行無常、一切同じ瞬間はなく、そのバランスを作っている主体というものも無く、主体がないのだから誰の意思が最も優先されるというのも無い世界が展開されています。

この常に変わっていく中で人間が行う役割、というのは自分が食べるに適するバランスを見て粛々と対処する、という事に尽きるかと思います。
ですから、そのバランスを崩すの、整えるのも人間の役割である、という事になります。

 

☆野菜は栄養素、食物繊維、そして水分

糠床のバランスを一定にしておきたい場合、それは極端に言えば「野菜を何も入れない」というのがベストです。
水分がいくらか蒸発する分はあるとしても、混ぜ方、回数を温度や湿度によって工夫すれば、かなり一定の糠床がそこに展開され続ける事になります。
しかし、当然糠漬けとして野菜を食べたいわけですので、そういうわけにはいきません。
野菜をいれるわけですが、野菜には栄養素、食物繊維、水分が当然含まれています。
野菜を入れるほど美味しくなる、と言われるのは、野菜の糖質や繊維を菌が分解したり、その過程で菌が増えたりするので、分解される能力が高い程旨味成分が出やすい、という事になっています。

しかしここで問題になるのは「水分」です。
小学生ぐらいなら誰でも知っているように、野菜に塩を入れると野菜の水分がどんどん出てきて、萎れてきます。
刻んだ白菜なんかを塩揉みすると、ビックリするぐらい水分が出て見る見る減ってきます。
これがそのまま糠床の中で起こっているんですね。

 

☆実は難易度が高い定番野菜

「糠漬けといえば、胡瓜に茄子」と言われる方は多いかと思いますが、実はこの2つの野菜、糠漬け難易度高レベルの食材なのです。
どちらも水分が多く、茄子に至っては綺麗に仕上げるのが難しい食材です。
茄子は糠床に鉄をいれるとか、ミョウバンを入れるとか、塩で表面を削るとか、そういった事をしないと食べる気の起きない色合いになってしまいます。

色移りも激しいので、茄子は糠床を別に作って漬ける方が無難です。
胡瓜は水分含有量が非常に高く、ほとんど水分なので、胡瓜なんかボンボン漬けていると、途端に糠床は水浸しの、塩分不足に陥ってしまいます。

 

☆難易度が低い野菜は……

ですから、この逆パターン。
栄養分と食物繊維が豊富で水分の少ない野菜、というのが難易度の低い野菜、という事になります。
ゴボウや春の野菜、山菜などアクの強いのは下茹でが必要なので、難易度は上がります。
オススメは「人参・カボチャ」です。

ちょっと薄めに切って頂いて、そのまま投入で問題ないです。
人参、カボチャは糖質も多く、糠床の菌に良い栄養になります。
水分もそれほど出ないので、気楽に次々漬けていけます。

もちろん、漬ける前に軽く塩揉みして軽く水分とアクを取っておけば、さらに管理が楽になって美味しく仕上げる事が出来ます。
捨て材としても使えて、そのまま食べられるのでオススメです。

井上漬物店HP
https://www.inoue-tsukemono.com/

 

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