富裕層が数年で倍増しているインド。その秘密は数学、それともカースト制度?

インドの人口は日本とは比較にならないほど多いわけですから、才能を持っている人材も多く、そこに前述したような独自の数学的教育が加わるわけですから、「優秀な人材が豊富なのも当然」です。

 

【インドの闇 カースト制度】

ITが発展した理由として、もうひとつ考えられる要因があります。それは「カースト制度」。この制度は、簡単にいってしまうと「身分制度」です。現在では「憲法によってカースト制度は廃止されています」が、実際にはまだまだ根強く残っているのが現実です。このために、「インドで発生する事件の多くがカーストを由来とした差別による事件」となっています。

この中で、近年、最も有名なものが「カースト越しのラブレター事件」。こちらは、自分よりも「下位のカーストに属する少女にラブレターを書いたことが原因で、15歳の少年が相手カーストのメンバーに拉致された上に、線路に投げ込まれて死亡する」という痛ましいものです。

なぜ、このようなことが起きたのか? これはカーストについての詳しい説明なども必要となってきます。身分制度というと、日本では武士や商人といった職業的なものというイメージがありますが、インドでは産まれた時点で決められたカーストの中で、さらに細分化された「ジャーティ」という区分があります。これは数千にもおよぶといわれており、職業も厳密に決まっています。さらに「同じジャーディ同士でなければ結婚できない」とされています。

当然ながらそのような風習は法律で禁止されていますが、ヒンドゥー教の教えでは「ジャーティが上位なほど清浄であり、下位は穢れている」とされているために、来世での向上は願うものの、「現世でそこから抜け出す」という発想がなかなか出てこないのです。さらに、女性蔑視の考えもあり、上位のジャーティに下位のジャーディの女性が嫁ぐ場合には、「莫大な持参金が必要」となります。その金額は「一族が破産する可能性もあるほど」のものであり、この「持参金を目的に結婚して、その後に女性を殺害する」という事件も「年間数千件」という割合で起こっています。

このような理由があることから、前述の少年も財産目当てだと考えられて一族にダメージがこないようにと、周囲によって惨殺されてしまった可能性が高いのです。仏教やヨガ、数学といった偉大な思想を生み出してきたインドですが、それらのバックボーンとなった「ヒンドゥー教の教えが、一方ではこうした悲惨な事件」を引き起こしています。

 

【IT業界の発展が長く続いたカースト制度を終わらせる希望となるか?】

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カースト制度は、紛れもなく「インドの闇の側面」です。前述したようにジャーティでは職業が綿密に規定されています。そのために、「どれだけ優れた才能を持っていても、ジャーティが下位であればろくな仕事につくことはできません」。しかしながら、新しい職業であるITに関しては、そもそもヒンドゥー教の教えで規定されていませんので、「どんなジャーティの人でも関わることが可能」なのです。

そのために、都会部ではジャーティよりも才能を重視してIT業界の社員として登用されることが増えてきています。インドの人口は日本とは比較にならないほど多いわけですから、才能を持っている人材も多く、そこに前述したような独自の数学的教育が加わるわけですから、「優秀な人材が豊富なのも当然」です。

カースト制度というのは、今後インドが解決しなければいけない問題であり、取り払う必要のある闇ではありますが、そのような「闇とインドが誇る文化が、期せずして相乗効果を産み出したこと」で、インドで超富裕層が増えているのでしょう。ちなみに、超富裕層にはITなどの新興勢力だけでなく、カーストの最上位である王族なども入っています。現状ではカーストが上位のほうが資産が多い状況ですが、よりITの技術が発達していくことで、そういった状況も変わっていき、最終的に資産が逆転した時点から、「カースト制度の崩壊がはじまっていく」のかもしれません。

 

Cause that India has evolved.
India of darkness and light.

 

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