「食」の原点を思い出しましょう — 日本語に含まれたメッセージ —

「いただきます」には、 その言葉の後ろに奥深さがあります。

日本人は、食べる前に何気なく「いただきます」と言いますが、
今回は、少し「食」の原点を思い出してみたいと思います。

 

【「いただきます」は何をいただくのか?】

私達が、食べ物を食べる前に必ず
「いただきます」と言いますね。

無意識に何気なく「いただきます」と言っているかもしれませんが
この言葉は、
「命を頂きます」という感謝の言葉です。

今回は、改めて
この命を頂きますを意識する機会になればと思います。

私は、日本人なので
子どもの頃から「いただきます」は日常に使っていましたが
最もこの言葉を理解したのは、海外にいた時でした。

自然と共に生きている人達と
1年半の間、一緒に生活をする機会があったのですが
食べ物が無くなる時期が年に数度おとずれます。

ある時、
集落の長が「我々は、タンパク質(肉)が不足している」と
飼っていた豚を今から食べると言い出しました。

さて、豚肉を食べるのに、
どこから始まると思いますか?

そうです、
豚をナタで殺すところから始まるのです。

残酷だと思いますか?

その時、かなり食べ物が不足していたので
私は、残酷よりも有難かった記憶しかありません。

そして、
捨てる箇所が無いくらい
見事に豚の命を頂きます。

日本では、豚肉は既にスライスされ
パック詰めされている物しか見たことなかったので
当時の私は「命を頂く」の意識が低かったです。

しかし、目の前で一つの命が無くなり、
その命により私達の命が繋げれているのだなと実感したときに
単に感謝の念しかありませんでした。

これは、
豚だけでなく、
全ての動物・植物も同じです。

 

【昔の日本人が「いただきます」に込めたメッセージ】

海外に行った時に
誰もが一度は疑問に思うことがあります。

それは、
「いただきます」って英語でなんて言うのだろう?

実は、
該当する英語がないのです。

外国人で宗教に入られている方は
食事前に信仰している神様に感謝される方もおられますが
基本的には
「Let’s eat」です。

直訳すると「さぁ、食べましょう」なのですが
日本語の「いただきます」とは、
随分と意味が異なります。

「いただきます」には、
その言葉の後ろに奥深さがあります。

食べ物を単なる物ではなく
「命」として捉えていないとこの言葉は生まれません。

「食」という漢字は
人を良くすると書きます。

本来の食とは、人を良くするものです。
そして、その根本には
動物・植物の「命」への感謝があります。

私達は、食事ごとに
「いただきます」と言う機会が設けられています。

そこには、昔の日本人の
「食べる度に【命】を意識してね」というメッセージが含まれているのではないでしょうか。

 

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