一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.96 「不屈の男 アンブロークン」

女みたいに綺麗で能面みたいな顔、小柄で華奢な体。渡辺を演じた日本人MIYAVI。上手い! 賞にノミネートされても良いくらいだ。
一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.96 「不屈の男 アンブロークン」

 

不屈の精神を持った男の激烈な半生
アンジーが描く「許し」の感動実話

公開前から捕虜への虐待シーンなどについて話題になっていたが、アンジェリーナ・ジョリー監督第二作は、「正直どうなの?」というちょっと意地悪な気持ちで観に行った。しかし、観ている間も見終わっても「凄い!!!」の一言!
「ほんまにこれ、アンジーが撮ったん??」というのが率直な感想である。
それくらい、素晴らしい!
「男の監督でもここまで撮れんやろ!」「一体どうやって撮ったん??」というシーン満載で、その骨太な演出力と表現力、構成力にはただただたまげた、脱帽、もうひれ伏す思いだった。

「すごいよ、すごいよ、アンジー」てなもんである。
そして、思ったのは、話題になっている虐待シーンは(凄かったけど)置いといて、本作はアンジーが力説してるように、「人が人を許す」ことを崇高に描いた作品だと素直にうなずける。しかし、同時にそれはとても難しいことだとも改めて思ったのだけど……。

 

ど迫力の爆撃シーン、47日間の漂流……
ザンペリーニの魂の彷徨にハラハラ

さて、オープニングからど迫力の映像で度肝を抜かれる。
爆撃機B-24スーパーマン号と日本海軍の零戦との凄まじい爆撃戦だ。
爆撃機の内部から敵を攻撃する映像って初めて観た。実在の主人公のルイ・ザンペリーニはこの機の爆撃手なのだ。激しい日本軍の攻撃に何人も犠牲になり、ルイは命からがら攻撃をやり遂げる。いやーっこのシーンで一気にアンジー尊敬! その演出力に驚愕しながらも、「これは面白いぞ!」とワクワク物語に入り込めた。

ザンペリーニはその後太平洋上に機が突っ込み、47日間の漂流を耐え抜き日本海軍に捕われ捕虜になる。この漂流シーンも見所である。よくぞ耐えた! だが、ザンペリーニにはこれからもっと耐えなければならない試練が待ち構えていた。

不良で落ちこぼれの幼少期から、兄の言葉「耐え抜け、諦めるな。お前ならやれる」という励ましによってついにオリンピック出場までを、巧みに回想シーンで見せる。ザンペリーニの不屈の精神が培われた経緯がドラマチックに描かれる。
脚本が秀逸だ。脚本はなんとジョエル&イーサン・コーエン兄弟。納得である。

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捕虜収容所での凄まじい暴力の嵐
戦後彼らが辿った道に思う

そして、大森捕虜収容所での署長渡辺との出会い。サディスティックな行為により性的興奮を感じるという、サディストの渡辺はザンペリーニに目をつけ執拗に残虐な暴力を彼に繰り返す。
これに耐えに、耐えるザンペリーニ。耐えることで渡辺に屈しない。
本作一番の見所だろう。

女みたいに綺麗で能面みたいな顔、小柄で華奢な体。渡辺を演じた日本人MIYAVI。上手い! 賞にノミネートされても良いくらいだ。

映画は戦後のふたりの姿も追う。
渡辺は戦犯として告発されるが、なんと7年間逃亡して罪を逃れ、戦後は保険の仕事で大成功して裕福な生活を送ったそうである。
対してザンペリーニは牧師となり、その生涯を神に捧げた。日本で走る夢も果たし、渡辺に面会を求めたが、渡辺は拒否。ザンペリーニは渡辺の全ての行為を許した……。

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前世の因縁を超えて生きるということ
カルマの昇華を体現できる傑作!!

「許す」。それはとても難しいことだろう。許さないことで生きていけることもあれば、許すことで生きていけることもある。しかし、人間には「忘れる」という素晴らしい能力が備わっている。また、人の心や気持ちは絶えず動いて変わっているものである。同じ気持ちの日はない。

ザンペリーニと渡辺。もちろんふたりには前世の因縁があったのだと思う。渡辺のカルマは来世に持ち越されたことだろう。
ふたりの壮絶な出会いと許しを素晴らしいエンターテインメントとして映像化したアンジー。才能ある監督である。そして、本作を映画化させられたアンジーも、なんらかのカルマを昇華したのだろう。
凄まじい描写もあるが、観終わってとても清々しい気持ちにさせられたのは、彼らのカルマの昇華を私が感じたからだと思う。そういう映画もあるのである。

傑作である。

■監督 アンジェリーナ・ジョリー
■脚本 ジョエル&イーサン・コーエン
■原作 ローラ・ヒレンブランド
■出演 ジャック・オコンネル ドーナル・グリーソン MIYAVI ギャレット・ヘドランド フィン・ウィットロック
■137分

●東京 上映中
●大阪 3月5日(土)~ロードショー

『不屈の男 アンブロークン』
2/6(土)より、シアター・イメージフォーラム
3/5(土)より、シネマート心斎橋/布施ラインシネマにて上映!
(順次)京都シネマ
(c)2014 UNIVERSAL STUDIOS

 

 

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