一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.92「犬に名前をつける日」

犬や猫という動物は人間を癒すために人間のために生きているというところがある。また、飼い主のカルマを肩代わりしてくれたりもする有難い生き物である。 しかし、動物愛護センターへは膨大な数の犬や猫たちが殺処分されている現状だ。
一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.92「犬に名前をつける日」

日本の犬猫たちの現状に号泣!
驚愕と発見のドキュメンタリードラマ

私の家の前が大きな公園なので、夕方になると犬を連れてたくさんの人が公園にやってくる。
ある夜、犬を罵倒してどつきながら帰っていくおじさんがいた。小型犬はキャインキャイン鳴きながら引っ張られていった。鳴きながらも飼い主にじゃれついていた姿が哀れだった。
犬や猫という動物は人間を癒すために人間のために生きているというところがある。また、飼い主のカルマを肩代わりしてくれたりもする有難い生き物である。

そのことを多くの人は知らないのだろう。
私は、本作を観るまで捨てられた犬や猫たちがどういう状況にいるのか知らなかった。
そして、驚愕した。涙した。号泣だ。彼らの哀れに、また私たち人間の哀れと愚かさに泣いた。
多くの人に観て欲しい。そう切に願う映画である。

テレビの演出家であり、映画監督でもある山田あかねが、飼い犬を亡くしたことから「犬の命」をテーマにした映画を撮ろうとしたことが本作の始まりだ。
山田監督は動物愛護センターや、1000頭以上の犬猫を保護する「犬猫みなしご救援隊」の活動を取材し、4年に渡り200時間の映像を撮影する。
その映像+山田監督の役を小林聡美が演じるというドキュメンタリードラマという形態で本作は作られている。
これはこれで違和感なく観られて、また成功している構成だと思う。

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動物愛護センターに保護された犬猫
1年間に12万頭以上殺処分される現実!

まず、小林演じるテレビディレクター久野かなみは、師と仰ぐ老齢の女性映画監督に相談に行くのだが、今は老人ホームで暮らす日本映画界の草分け的存在の監督は「あなた、演出家なんだから、犬の映画を撮ればいいのよ。犬のことを勉強するために留学なんて時間がもったいない。アッと言う間に歳はとるし、そしたら私みたいにこんな牢獄みたいなところに入れられちゃうんだから」と叱咤激励する。
これ、ものすごいリアルなお言葉でハッとさせられた。そう、アッという間なのだ。
そして、牢獄=老人ホームなのだ……。

かなみは最初に動物愛護センターへ取材に行く。
ここは飼い主のいない犬や猫が一定期間保護される場所で、飼い主や引き取り手が現れないと一週間で殺処分される。
ちなみに日本では1年間に12万8241頭(2013年度)の犬と猫が殺処分されているという。
1日になんと350頭! だ。その犬たちの里親探しをする「ちばわん」という保護団体の活動や、広島に本拠地を置く「犬猫みなしご救援隊」の活動、また彼らの福島での1400頭に及ぶ犬猫の救出などが描かれる。

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ブリーダーの功罪は、私たちの罪
ペットショップの無い国なんてあるんだ!

何度も涙してしまった。
こんなに小さいもの、弱いものを酷い目に遭わせる私たち人間。
罪は深い。

特に号泣してしまったのはブリーダーに無理な交配と出産を何度もさせられて子宮がボロボロになった小型犬の怯えた顔。
血統の近い妊娠によって、眼が見えないとか、歯ぐきに穴があいたまま生まれてきた小犬たち。彼らは人間を怖がる。
ブリーダーたちは平気でその奇形の小犬たちを捨てる。彼らを保護する「犬猫みなしご救援隊」の代表、中谷百里さんは、言う。

「ブリーダーはなくならない。それは、私たちがブリーダーから高級犬を買うから。需要があるから儲かるから止めない。言うたら私たちの責任なんよ」。
「犬も人間も一緒。酷いことされて心が傷ついたら怯えて心を開かない」。

高級な犬や猫はペットショップで買うものと思っていたが、アメリカの一部の州やドイツなどの幾つかのヨーロッパの国ではペットショップはないそうである。犬を飼いたければ基本、動物保護団体に保護された犬を引き取るのだ。
知らなかった……。

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とにかくやること。そしたら道は開ける!
助けられる命は全部助ける!!

この中谷さんが凄い! 元はスナックのママで、捨て猫を拾っていたらどんどん増えて行って、店のお客さんだった田原好巳さんの協力を得て、今では捨てられた犬猫を1000頭以上保護。
「助けられる命は全部助ける!」と震災後の福島にトラックで出向き、1400頭の犬猫を保護して広島に連れて帰った。

「うまく行くとか助けられるだろうかとか、考えずにとにかくやること。行動すること。そしたら道は開ける。支援者は出てくる」。
福島での中谷さんの活動にボランティアは最終的に3000人になり、全国から餌や物資や施設の支援が引きもきらなかったそうだ。

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今も広島に支援は全国から届け続ける。
この中谷さんの言葉は全てのことに敷衍する言葉だ。