一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.163 「フジコ・ヘミングの時間」

天使フジコ・ヘミングの波乱の物語
人生の示唆に富んだドキュメンタリー

フジコ・ヘミングにはまっていたのはもう10年以上前だと思う。
彼女の人生とピアノがクローズアップされて、著作もたくさん出版されていた。

私は5冊くらい読んだと思う。
私にとって彼女の言葉はありきたりではなく、天からの言葉のような重みと美しさを持っていた。
当時仲良くしていたクラシック専門のCDショップの店員さんが「フジコ・ヘミングは上手じゃないんやけど、なんかあるんやな音に。それがなんか解らんのやけど、なんか残るねん」と言っていた。
確かに、私も有名になった曲「ラ・カンパネラ」を聴いた時に「ん? だいぶ他の人のと違う。溜めがあるというか、もったりしてる?」と思った。
なんか、独特の弾き方をするのだ。
彼女の波乱万丈の人生が音に出ている。
としか言いようのない音色なのだ。
というわけで、フジコさんは私の要チェック人物の一人だったのだが、久しぶりに私の前にドキュメンタリー映画主演という形で現れた。

映画の冒頭に「私は私を知るために旅をする」みたいな言葉が出てくる。
みんなそうなのだと思う。「私は私を知るために生きている」だ。
映画は淡々とフジコさんの家での日常や、コンサート会場を追い続ける。
驚いたのが、彼女はパリ、東京、サンフランシスコ、ベルリン、京都と5つ家を持っているということだ。どこもフジコさんのセンスや美意識が生かされた素敵なお家で、もうため息もの。
80代になった今も年間約60本のコンサートをこなし5つの家を世界を飛び回る。

 

「神様に試されてるからさ」
物乞いに必ず小銭をあげる彼女の良い行い

久々に観たフジコさんは「千と千尋の神隠し」の湯ばぁばみたいになっていたが、偏屈ぶりは変わらず。浮世離れした雰囲気と、少ない鋭い言葉が印象的だった。パリでは物乞いに必ずいくらかお金をあげ「神様に試されてるからさ。かならず小銭をあげるの」と言う。
カトリックの彼女は「この世で認められなくても、いつかむこうにいって神様の前でピアノを弾けたらいいと思ってた」など、言葉の中に神様が何度も出てきて、いつも神を身近に感じていることが分かる。

彼女の人生も神の支えがあると思わなかったら絶望してしまうようなことばかりだった。ハーフとして生まれ、学校でのイジメ、父親との別れ。母親との確執。難民扱いでやっと留学してカラヤンに認められるも、風邪で聴力をなくしてキャリアもなくし、細々とピアノ教師をヨーロッパでしながらコンサート活動を続ける。貧困にあえぎ、母の死で東京に帰ってきてから大学での
リサイタルとテレビのドキュメント番組で火がつき、やっと表舞台に出ることができた。その時すでに60代後半。

 

神様はいつも側にいてくれる
だから、心のままに誠実に生きていけ

「いろいろ波乱なことがあったほうが人生おもしろいわよね」と言う。
苦難を乗り越えてきたからこそのあの「なんかある」音色。深い音色が出せるのだろう。彼女の「ラ・カンパネラ」を聴いて涙する人は少なくない。
フジコさんはこれから死ぬまで大丈夫だと思う。
60代後半で認められるまでこつこつ誠実に生きてきた。
今、彼女はほとんど「天使」状態だと思う。もともと、霊格は高かったのだろう。
波乱の設定が半端じゃない。また、飼っている27匹の猫と2匹の犬。
彼らも彼女を支えている。

映画を観て、「物語」のような人生だな、と思った。
フジコさんが生まれる前に考えて設定した物語。それは、同時代に生きる
私たちに示唆を与えてくれる。
波乱万丈、絶望や苦しさこそ、魂をこの上ないほど磨いてくれる。
神様はいつも側にいて見守っていてくれる。良い事をしたこともちゃんと見てくれている。いつも、手をさしのべてくれている。
だから、心のままに誠実に生きていけ、と。

 

監督 小松 荘一良
ナレーション 三浦透子
出演 フジコ・ヘミング 大月ウルフ

※115分

※6月16日(土)シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
7月21日(土)シネ・リーブル梅田ほか全国順次ロードショー
©2018「フジコ・ヘミングの時間」フィルムパートナーズ

 

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