一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.162 「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」

男と女の、意識と時代を変えた世紀の戦い!
女性性を刺激される感動作!

「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」って原題そのままじゃ意味解んないよね?

性差を越えた戦い、という意味。しかも、この戦いは実話という。
1973年に女子テニスの世界チャンピオンのビリー・ジーン・キングと元男子世界チャンピオンのボビー・リッグスが試合をした。
その試合は男女平等、女性への敬意、男性の優位論をかけた前代未聞の戦いで、ビリー・ジーンの勝利によって女性の地位向上への人々の意識改革が大きく進み、社会に多大な影響を与えた。

全然、知りませんでした。
しかし、今の私たち女性のために茨の道を血だらけになりくぐって整えてくれた先達は山ほどいるのである。
彼女たちが頑張ってくれたから、今、私たちは穏やかに(まだまだいろいろあるけど)暮らしていけてるのだ。
私は女性が酷い目にあって頑張って勝つ! という映画に異常に共感してしまうのだが(私が女だというのと、前世の影響もあると思うが)本作も、ラストは号泣!
ビリー・ジーンの喜びが我がことのように思えて涙がほとばしった! やった! である。

 

女性への差別発言多々!
女性への敬意がある男性ってどれだけいる?

物語の発端を少し。
全米女子テニスチャンピオンのビリー・ジーンは次期大会の女子の優勝賞金が男子の8分の1ということを知って責任者に抗議する。
しかし「観客を呼べるのは男子の試合」と一笑に付され激怒。
全米テニス協会を脱退し、新たに女子テニス協会を立ち上げる。
周りの協力もあり、すぐにスポンサーがついて優勝賞金も高くなり、トーナメントも始まる。
そんな頃、ビリー・ジーンは知り合った美容師のマリリンと恋に落ちてしまう。
献身的な夫を裏切りつつビリーはマリリンと離れられず、ツアーにも同行させる。
一方、元男子世界チャンピオンのボビー55歳は引退してからもギャンブルが止められず最愛の妻に離婚を宣言されていた。
彼はビリー・ジーンと男性優位主義の代表として試合をして勝ち、世間の脚光を浴び、妻の愛を取り戻そうと考える。
ビリー・ジーンは女性の地位と名誉とマリリンへの愛をかけて試合に挑む!

70年代の音楽が心地良い。
リンダ・ロンシュタットやプリテンダーズの音楽の空気が懐かしい。
この頃、男性優位は何事につけても当たり前だった。
テニス協会の責任者の女をバカにした発言や、ボビーの「女は台所とキッチンでいろ」という発言にはバカ丸出しだなあ、と思う。しかし、それが普通だったのだ。
ビリー・ジーンが協会の責任者に「あなたには女性への敬意がない」と言い捨てるシーンはぐっと来た。
男は誰から生まれたと思ってんのか?

 

凄いことをやり遂げたビリーの震えに涙!
ここから社会が大きく変わっていくのだ

そして、私が一番感動したのは、ラストである。
試合に勝って喜びの前に一人控え室に籠るビリー・ジーン。
彼女の心の葛藤、恐れ、喜びが渦巻く表情と涙、震える肩に、その偉業を果たした一女性の心中を想像したらもう涙が抑えられなかった。
試合に勝っただけじゃなくて、全女性の鬱憤を晴らしたのだ。
閉塞した時代に一石を投じたのだ。
これから人々の意識が変わっていくきっかけを作ったのだ。
皆の元へ戻ろうとした彼女にゲイの(演じたアラン・カミングもゲイだとカミング・アウトしている)テッドがかける言葉にまた涙。
この言葉は本作の深い部分でのテーマであると思う。

ビリー・ジーンが勝つと知っているのに、試合シーンはハラハラさせられた。
また、ボビーのその後にもホッとさせられた。
もちろん、ビリー・ジーンのその後の活躍にも快哉! 素晴らしい先駆者である。

女性は自らの女性性を大いに刺激される一作である。

 

監督 ヴァレリー・ファリス&ジョナサン・デイトン
脚本 サイモン・ボーフォイ
出演 エマ・ストーン スティーブ・カレル アンドレア・ライズブロー
サラ・シルヴァーマン ビル・プルマン アラン・カミング エリザベス・シュー
※122分
©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation

※7月6日(金)~全国ロードショー

 

《一宮千桃さんの記事一覧はコチラ》
https://www.el-aura.com/writer/ichimiyasentou/?c=26311