一宮千桃のスピリチュアル★シネマレビューVol161「ゆずりは」

葬儀社を舞台にした大感動作!!
俳優コロッケ堂々のシリアス演技!

ゆずりはの樹がどんな樹なのか本作を観て知った。
この樹見たことがある。

今までよく目にしていた樹がどんないわれを持つ樹なのか知ることによって私はこれからゆずりはを特別感慨を持って見つめることだろう。
それは、私の世界が少しだけ広くなったことだ。

コロッケ(滝川広志)初主演作。
彼がモノマネでのきらびやかな衣装や厚化粧、大げさな身ぶり等全てを封印して挑んだシリアス演技。
ただの中年太りのオッサンで演じたのは葬儀社の部長、水嶋役。
それもかつて妻に自殺されその傷が今も癒えないという難しい役どころだ。

悲しみの殻を破れない日々に鬱屈する彼はある日、社長から新入社員の面接をまかされる。
そこにやって来たのは、茶髪に「~っす」言葉の今時の若者、高梨。
しかし高梨は志願動機のエピソードを真摯に語り、その話に心動かされた水島は採用を決める……。

 

新入社員が起こすミラクルに
涙が止まらない!!

物語は4つの葬儀エピソードからなる。
その4つのエピソードがどれもリアルで胸に迫る。
これらの葬儀を通し高梨の成長と水島の再起を描く。
ラストには思わぬネタ明かしもあり、物語の巧さに感心させられる。
私はずっと涙が止められなかった。

人の死自体にはいろんな「物語」がある。
中でも弟を交通事故で失った幼い姉の慟哭には子役の巧さもあって大泣きしてしまった。
その姉に何げない風に話しかける高梨。
高梨の話に弟が死んでからひと言も口を聞かなかった姉がふきだした何筋もの涙と共に心情を吐露する激情シーン。
もう涙涙……。
この高梨との出会いによって水島だけじゃなく、会社の皆も変わっていく。

 

芸人コロッケの繊細で美しい
指使いを垣間観た!! 瞬間!

コロッケに演技力があるのは周知のことだが、今回の芸人コロッケがでたシーンがあった。
亡くなったご遺体にドライアイスをのせる時の指使いが華麗でショーのようだった。
神経のいきとどいた美しさだった。
しかし、終始感情を抑えた静かな苦悶演技も素晴らしかった。
唯一感情をあふれさせるシーンも。

コロッケ以上に素晴らしかったのが高梨役の柾木玲弥。
良い役なのだが、彼の少年のような面立ちと素直なたたずまいがよりこの役にはまり、彼の登場するシーン全てに生きるヒントがつまっていたような気がした。
彼の見せ場のシーンに何度も泣かされた。

 

ゆずりはの樹のように
人は席をゆずり、生まれ、死んで、生まれ……。

ゆずりはの樹は若葉が出た後に古い葉が落葉することから世代交代の樹と言われるそうだ。
またその様子から親が子を育て、家が代々続いていくことに見立てた縁起物とされるらしい。

死は終わりではない。
人は生き死に、そして生まれ生きる。
ずっと続いていく営みなのだ。

私たちはこのサイクルの中で生かされている。
地味な作品ながら、いつまでも心に残る佳篇である。

 

監督 加門幾生
脚本 吉田順  久保田唱
出演 滝川広志 柾木玲弥 原田佳奈 高林由起子 大和田紗希 島かおり 勝部演之
三谷悦代 小林博 武田ココナ 前田けゑ

※111分
※6月16日(土)から全国ロードショー

 

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