一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.160「ワンダー 君は太陽」

顔面異常の少年の家族、友人の成長譚
号泣必至! の素晴らしい一作!

10歳のオギーは生まれてから27回の手術を受け、ずっと自宅学習を続けていた。
でも、母親の強い希望から5年生の初日から学校に行くことになる。

オギーは理科が得意な聡明な男の子。
でも、遺伝子疾患で頭蓋顔面異常の症状があり、特徴的な顔は皆が振り向くほどだった。
家では宇宙飛行士のヘルメットをかぶっているオギーは、不安と期待に胸が張り裂けそうになりながら、ヘルメットを脱いで学校の門をくぐった。のだが、案の定生徒たちは遠巻きにジロジロと眺め、クラスでは誰も声をかけず、さっそくイジメに遭う。家で泣くオギーに母親は優しく気丈に寄り添うのだが……。

本作は、オギーが次第に周囲と良好な関係を築いていく、オギーと彼の周りの人々の成長譚である。物語は、オギーの側からだけではなく、オギーの姉のヴィア、ヴィアの友人のミランダ、オギーの母親のイザベル、オギーの友人のジャックと多方面からのその時の気持ちを描いている。
だから、偏らずより登場人物皆に共感できて、皆が愛しくなる。
かなり早い段階から私は号泣してしまった。

 

オギーの悲しみ喜び、姉ヴィアの寂しさ
皆の感情が自分のことのよう

オギーの顔は変えることができない。
今まで家でいたけれど、友達が欲しい。
でも、皆顔を気味悪がって酷い言葉や冷たい視線や意地悪をする。
オギーは大好きな「スター・ウォーズ」のチューバッカが友人で学校に来てくれて、自分が皆の人気者になる場面を想像する。
でも、それは空想でしかない。
しかし、オギーにはジャックという友達ができる。
この時点で私はオギーが大好きになっていて、我がことのように嬉しくなる。

そして、姉のヴィア。
幼い頃から両親はオギーにかかりっきり。
ヴィアは母親と二人だけの時間を持ちたいと思っているけど、いつもオギーが問題を起こし母親はオギー一色だ。
寂しい気持ちのまま、高校になった初日に親友のミランダに無視される。
ヴィアも悩みがあるけど、母親には聞いてもらえない。
ヴィアの気持ちもすごく解る。
もうここでも涙ポロポロだ。

 

身体の不自由な人は高い霊性を持つ
困難な使命を持つことが多い

ヴィアの気持ちを唯一わかってくれたおばあちゃん(「蜘蛛女のキス」のソニア・ブラガ!)の言葉が良い。
「私はヴィアが大好きよ。オギーは天使だから皆が愛してくれる。だからヴィアはおばあちゃんが愛してあげる」。
身体を不自由にして生まれてきた人は、(本当の)天使であることが少なくない。
また、家族の中で天使のような存在になることがある。オギーは天使なのだ。
周りを変えて、成長させる使命を負っている。
そしてもちろん、自分自身の霊性も同時に磨く。
ヴィアにはおばあちゃんという理解者がいて救われていたのだ。

 

世界はいつでも美しい
それを美しいままにするのは自分次第

後半、演劇部に入ったヴィアの舞台もボロ泣きだった。
演目はベケットの「わが町」。
ヴィアの熱演を観ながら母親のイザベルはヴィアの幼少の頃を思い出し感極まる。
ヴィアも母親に語りかけるように「世界は美しいまま」。
そして「世界よさようなら」というセリフを目に涙を一杯に溜めながら言うのだ。
このセリフは本作のテーマだろう。
何があっても世界は美しいままなのだ。
世界に色をつけたり歪めているのは自分の心。
そして、自分の狭い世界から一歩踏み出して行くことが大切なのだ。
そうしたら、あなたの世界は必ず開けると。

素晴らしい一作。

傷ついた登場人物たちは皆、私自身なのだ。
私は本作で、心の旅をさせてもらった。

最後に一言。
顔(障害)は慣れる。

 

監督・脚本 スティーヴン・チョボスキー
脚本 スティーヴン・コンラッド ジャック・ソーン
原作 R・J・パラシオ
出演 ジュリア・ロバーツ オーウェン・ウィルソン ジェイコブ・トレンブレイ
イザベラ・ヴィドヴィッチ マンディ・パティンキン ダヴィード・ディグス ソニア・ブラガ
※113分

※6月15日(金)から全国ロードショー

 

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