一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.135「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」

動物はいろんなことを人間に教えてくれる。 人間に何かをしたいと思って生きているのだろう。

一匹のノラ猫のぬくもりで立ち直った青年
幸せな気持ちにさせられる珠玉作!

実家で飼っていたシャムの子猫が車に轢かれて死んだ。
捨て猫を姪が拾ってきたそうだが、眼と鼻に病気があるらしく、
始終目ヤニを出し鼻水を垂らしていた。無責任な姪はなかなか病院に
連れて行かず、兄嫁は気持ち悪いと言い、他の二匹の飼っている猫
には無視されていた。

痩せていて、小さく弱々しく幸薄そうだった。しかし、子猫は出会った初日
に私の膝に乗ってきて甘えた。もともとシャム猫は人懐っこいらしいが、
私は嬉しくて彼(オス)を母親のように抱きしめ話しかけ励まし、部屋に
こっそり入れて(実家で猫は外で飼っていて、家へ入るの厳禁)可愛がった。
子猫は私の膝の上に必ず乗ってきて寝た。子猫の高い体温が心地良くも汗が
吹き出たし、動けなくて困った。

過ごした日は実家での七日間と短かったが蜜月であった。
好奇心旺盛で、家の車の出入りにタイヤに寄ってきて危ないな、
と感じていた。すると、兄嫁の車が彼を轢いた。
頭を轢かれたのだろう、顔が変形していた。
大泣きした私は今もまだ立ち直っていなくて「猫が……」と言っただけ
で涙が出てきて毎日めそめそしている状態だ。

実家では今年の春にも飼っていた三毛猫が死んでいて、二匹目の不幸になる。

私は何か意味があるのかと考えた。
猫は飼い主の身代わりになってくれるという。
実家では春に、拒食症で大学を休学していたもう一人の姪が復学した。
今回のシャム猫の死もここでは書かないが、意味があると思っている。

 

実話原作での実際の猫、ボブも出演
不思議なオーラで私たちを癒してくれる

そんな時に、救われたい想いで観た本作。
泣きました。
ボブというノラ猫が薬物依存症の主人公ジェームズの支えになり、
彼を立ち直らせていく物語。なんと、実話だそうで、実際のボブも
出演しているという。驚きである。ボブ演技もできるのだ。

ジェームズはホームレスのストリート・ミュージシャン。
薬物依存で更正プログラムを受けながら、なかなか薬を断つことが
できないでいた。父親との関係もうまく行かず、心の支えや希望の
ないジェームズのために更正担当者はアパートを用意する。
そこへある夜迷い込んできた茶トラの猫。
この猫を連れて街角で歌うとたちまち人が集まり大盛況に。
この猫、ボブはジェームズの大親友になり、彼に数々の幸運を
もたらす。

ジェームズが初めてボブを肩に乗せ、路上で歌うシーンで涙が出た。
ここから、彼は立ち直っていく……! そう予感できたから。
彼が歌う歌詞も相まって希望に満ちたシーンとなっている。

賢そうなボブの顔と瞳が印象深い。
いちいちのボブの猫的しぐさに涙ぐんでしまった。
小さき可愛いものは人間を癒してくれる。

 

動物は常に人間を助けたいのでは?
人間に学びを与えてくれる彼らの崇高

ボブとの顛末を書いた本は大ベストセラーとなり、ジェームズは
一躍時の人になったのだが、今も親友のボブとはいつも一緒だ。
なんて、幸福な物語だろう。
本作で勇気や希望、癒しを得られる人は少なくないだろう。
私もとても幸せな気持ちになった。

亡くなったシャム猫が私の元にまた帰ってきてくれることを
信じている。私との出会いは意味がある。その意味はまだ
わからないけど。
いや、少しわかりかけてはいる。

動物はいろんなことを人間に教えてくれる。
人間に何かをしたいと思って生きているのだろう。
特に猫や犬は人に身近なだけに、学びは深いのである。

猫を亡くした後だけに、身につまされた作品だった。

 

 

監督 ロジャー・スポティスウッド
原作 ジェームズ・ボーエン
脚本 ティム・ジョン マリア・ネイション
出演 ルーク・トレッダウェイ ボブ ジョアンヌ・フロガット ルタ・ゲドミンタス
アンソニー・ヘッド

※103分

※8月26日(土)より大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹ほか
© 2016 STREET CAT FILM DISTRIBUTION LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.
配給/コムストック・グループ

 

(本人(ジェームズ・ボーエン&ボブ)s)

 

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