一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.132 「ちょっと今から仕事やめてくる」

福士蒼汰と工藤阿須加のふたりの演技に魅了される。両親の大きな愛に涙涙……!

傷ついた心に染み透る
働くリアルを慰撫する感動作‼︎

ブラック企業……と話はよく聞くけれど、こんな怖ろしい会社なんだとリアルに感じられて、言葉の暴力によって人は簡単に壊れてしまうとゾッとした。

そして、壊れた心を癒すのは、やはり人の言葉であり、自然であるのだと実感した。
泣いてしまうような作品だと思ってなかったので、中盤図らずも涙ダラダラになってしまい焦った。
萎縮した心のひだを丁寧に延ばしてくれる。
そこから優しいものが染みこんで、痛みを潤してくれるような秀作である。

お話を少し。
ブラック企業で働く青山隆が、ノルマの厳しさと上司のパワハラに耐えかねて、ある日ホームから電車の方へふらっと行きそうになる。
それを間一髪で助けたのが、同級生だと言うヤマモトという男。
隆はヤマモトを覚えてなかったが、彼は大阪弁で馴れ馴れしく隆を居酒屋に誘い、楽しく話をする。
それからヤマモトはやたら隆の前に現れ、彼の能天気な明るさに隆も段々と元気になり、仕事の契約も取れるようになってくる。
しかし、ある日ヤマモトが暗い顔で墓地へ行くのを見かけた隆は、ヤマモトが同級生でないことを知る……。

 

福士蒼汰と工藤阿須加のふたりの演技に魅了される
両親の大きな愛に涙涙……!

何度も出てくる隆が上司に罵倒されるシーン。
もう、私自身が罵倒されてるようで、お尻がむすむず。
静かに座っていられない。
「もう、やめてぇえええー!」と叫びそうになった。
私、半泣き状態。
青山隆を演じた工藤阿須加。
よくぞ耐えた!
演技力あると思っていたが、今回素晴らしい共感演技を披露してくれる。
一方、正体不明のヤマモトを演じる福士蒼太。
大阪弁違和感なし!
関東出身でこれは凄いことである。
心の底に悲しみを隠したヤマモトを好演。
工藤との相性も良く、ふたりの関わりに目が離せなくて魅了された。

で、私が涙ダラダラになったシーン。
再び隆が追い詰められて、もうだめだ! となる。
するとヤマモトが彼に家族の話を淡々とする。
その後隆は家族のいる実家へ久々に帰省する。
そのくだりは泣かされました。
両親の子どもへの「大きな愛」に涙涙……。
それがあるからこそ、こどもたちは厳しい社会に出て、生き抜いていけるのだ。
そこを忘れちゃいけないよ、と教えてくれる。

 

私たちの周りでいつもいる天使たち
悲しみから救ってくれる彼らの存在

さて、果たしてヤマモトは何者だったのか?
たぶん、天使だったんだろうな。
隆にとってはまさに「天使」だけど。
スピリチュアル的に見たら本当に「天使」だったんだと思う。
天使たちは、地球で毎日忙しい。
傷ついている人、悲しんでいる人を救っているから。

周りの天使たちの気配を感じて欲しい。
必ず救ってくれるから。

ラスト、すっきりカタルシスを感じて試写室を出た。
肩の力を抜いて、もう少し頑張りますか! と思いながら。

監督 成島出
脚本 多和田久美 成島出
原作 北川恵海『ちょっと今から仕事やめてくる』(メディアワークス文庫/KADOKAWA刊)
出演 福士蒼太 工藤阿須加 黒木華 小池栄子
吉田鋼太郎
114分

※5月27日(土)~全国東宝系にて公開
©2017映画「ちょっと今から仕事やめてくる」製作委員会

 

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